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石田純一さんが「コロナ離婚」危機!?~知っておきたい「不受理申出制度」

竹内豊行政書士
「コロナ離婚」の危機にある方が知っておきたい制度を紹介します。(写真:アフロ)

コロナ禍による外出自粛やテレワークの普及などがきっかけで、性格や価値観の不一致が表面化して、離婚にいたるという、いわゆる「コロナ離婚」。そのコロナ離婚の危機に石田純一さんがひんしているという報道がありました。

「理子さんは都内の私立小学校に通う長男のことで相当気をもんでいる。父親である石田の無責任な行動でイジメに遭うのではと心配でたまらないようです。それでなくても石田がコロナに感染したということで、眉をひそめる保護者がたくさんいたそうです。そして今度は福岡に行き、どんちゃん騒ぎの揚げ句に不倫疑惑。もう我慢の限界らしい」(ワイドショー関係者)

 もっとも、こうした報道を石田本人は鼻で笑いながら一蹴。今日現在にいたるまで危機感はゼロだという。

「メディアに対しても離婚危機説については否定している。でも今回ばかりはヤバそうです。石田が気が付いた時には離婚届に判が押されている状態だと思いますよ」(前出の関係者)

出典:石田純一ついに芸能界コロナ離婚第1号か 妻の東尾理子が怒り心頭

この記事のワイドショー関係者のコメントによると、コロナ禍における石田純一さんの行動に、妻の東尾理子さんが我慢の限界で、石田さんが気付いた時には離婚届に判が押されている状態になりかねないというのです。

石田さんは、コロナ禍における一連の報道について否定されているので、この記事のような事態に発展することはないと思いますが、「コロナ離婚」と聞くと他人事ではないという方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、今回は、パートナーが一方的に離婚届を役所に届け出てしまって離婚が成立してしまうことを回避する方法をお伝えしたいと思います。

2つの離婚の方法~協議離婚と裁判離婚

その制度を紹介する前に、離婚の方法について確認してみましょう。

民法は、夫婦の間に離婚の合意がまとまり、その証としての「離婚届」を戸籍法の定めるところに従い届け出ることによって成立する協議離婚(民法763条)と民法の定める一定の離婚原因がある場合に離婚の訴えが認められ、判決によって成立する裁判離婚(民法770条)の二つの離婚の方法を定めています。

民法763条(協議上の離婚)

夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。

民法770条(裁判上の離婚)

1夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

2裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

9割を占める「協議離婚」

協議離婚は、離婚問題を当事者の自主的解決にゆだねます。離婚に対する国の介入を許さない点で、家族のプライバシーを守ることができる制度であるといえます。 このように、協議離婚は当事者同士の話合いで解決を模索するため、当事者の対等性や離婚後のことに関して話し合えるだけの理性が双方にあることが前提条件となります。

協議離婚の問題点

このように、民法は協議離婚と裁判離婚の2つを規定していますが、離婚をした方の約9割が協議離婚を選択しています。

協議離婚は、市区町村役場の戸籍係に離婚届を届け出ることによって成立します(民法764条)

しかし、戸籍係には実質的審査権はありません。つまり、届出に不備がなければ原則として受理します。そのため、当事者双方の離婚意思を確認する手段がないため、他方配偶者が離婚することに合意していないにもかかわらず、一方の配偶者が離婚の届出をして役所に受理されて離婚が成立してしまうことがあります。

不受理申出制度~一方的に離婚届が出されることを阻止する

このように、相手方配偶者が離婚を望んでいなくても、他方配偶者が一方的に離婚届を作成して役所に届け出てしまうことにより形式的に離婚が成立してしまうことも否定できないのです。

そこで、一方的に不当な離婚を防止する制度として、離婚届などの「不受理申出制度」があります(戸籍法27条の2第3項~5項)。不受理申出後、申出をした本人が窓口に来たことが確認できなかったときは離婚届等の届出は受理されません。

戸籍法27条の2(届出)

1.市町村長は、届出によつて効力を生ずべき認知、縁組、離縁、婚姻又は離婚の届出(以下この条において「縁組等の届出」という。)が市役所又は町村役場に出頭した者によつてされる場合には、当該出頭した者に対し、法務省令で定めるところにより、当該出頭した者が届出事件の本人(認知にあつては認知する者、民法第797条第1項に規定する縁組にあつては養親となる者及び養子となる者の法定代理人、同法第811条第2項に規定する離縁にあつては養親及び養子の法定代理人となるべき者とする。次項及び第三項において同じ。)であるかどうかの確認をするため、当該出頭した者を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を示す運転免許証その他の資料の提供又はこれらの事項についての説明を求めるものとする。

2.市町村長は、縁組等の届出があつた場合において、届出事件の本人のうちに、前項の規定による措置によつては市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを確認することができない者があるときは、当該縁組等の届出を受理した後遅滞なく、その者に対し、法務省令で定める方法により、当該縁組等の届出を受理したことを通知しなければならない。

3.何人も、その本籍地の市町村長に対し、あらかじめ、法務省令で定める方法により、自らを届出事件の本人とする縁組等の届出がされた場合であつても、自らが市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを第一項の規定による措置により確認することができないときは当該縁組等の届出を受理しないよう申し出ることができる。

4.市町村長は、前項の規定による申出に係る縁組等の届出があつた場合において、当該申出をした者が市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを第1項の規定による措置により確認することができなかつたときは、当該縁組等の届出を受理することができない。

5.市町村長は、前項の規定により縁組等の届出を受理することができなかつた場合は、遅滞なく、第3項の規定による申出をした者に対し、法務省令で定める方法により、当該縁組等の届出があつたことを通知しなければならない。

この不受理の申出は、文書により申し出るものとされ(戸籍法施行規則53条の4第2項)、取り下げない限り有効となります。この期間中に離婚届が受理されても、届出時に離婚の意思がないと認められるときは、届出は無効として処理されます。

戸籍法施行規則53条の4

1.戸籍法第27条の2第3項の規定による申出は、当該申出をする者が自ら市役所又は町村役場に出頭してしなければならない。

2.前項の申出は、次の各号に掲げる事項を記載した書面でするものとする。

一 同項の申出をする旨

二 申出の年月日

三 申出をする者の氏名、出生の年月日、住所及び戸籍の表示

四 民法第797条第1項に規定する縁組における養子となる者の法定代理人又は同法第811条第2項に規定する離縁における養子の法定代理人となるべき者が申出をするときは、その養子となる者又は養子の氏名、出生の年月日、住所及び戸籍の表示

協議離婚の「協議」とは、お互い理性的に話し合ったうえで、双方納得・合意することを意味します。もし、コロナ禍がきっかけで夫婦関係がしっくりいかなくなってしまい、相手側配偶者に十分な協議を経ないで一方的に離婚届を出してされてしまう可能性があるなら、不受理申出制度を利用するのもよいでしょう。そのうえで、お互いに理性的に話合い、結婚生活の継続、別居、そして離婚など、双方にとって最善の選択をしてみてはいかがでしょうか。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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