石田純一さんが「コロナ離婚」危機!?~知っておきたい「不受理申出制度」
コロナ禍による外出自粛やテレワークの普及などがきっかけで、性格や価値観の不一致が表面化して、離婚にいたるという、いわゆる「コロナ離婚」。そのコロナ離婚の危機に石田純一さんがひんしているという報道がありました。
この記事のワイドショー関係者のコメントによると、コロナ禍における石田純一さんの行動に、妻の東尾理子さんが我慢の限界で、石田さんが気付いた時には離婚届に判が押されている状態になりかねないというのです。
石田さんは、コロナ禍における一連の報道について否定されているので、この記事のような事態に発展することはないと思いますが、「コロナ離婚」と聞くと他人事ではないという方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、今回は、パートナーが一方的に離婚届を役所に届け出てしまって離婚が成立してしまうことを回避する方法をお伝えしたいと思います。
2つの離婚の方法~協議離婚と裁判離婚
その制度を紹介する前に、離婚の方法について確認してみましょう。
民法は、夫婦の間に離婚の合意がまとまり、その証としての「離婚届」を戸籍法の定めるところに従い届け出ることによって成立する協議離婚(民法763条)と民法の定める一定の離婚原因がある場合に離婚の訴えが認められ、判決によって成立する裁判離婚(民法770条)の二つの離婚の方法を定めています。
民法763条(協議上の離婚)
夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
民法770条(裁判上の離婚)
1夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
9割を占める「協議離婚」
協議離婚は、離婚問題を当事者の自主的解決にゆだねます。離婚に対する国の介入を許さない点で、家族のプライバシーを守ることができる制度であるといえます。 このように、協議離婚は当事者同士の話合いで解決を模索するため、当事者の対等性や離婚後のことに関して話し合えるだけの理性が双方にあることが前提条件となります。
協議離婚の問題点
このように、民法は協議離婚と裁判離婚の2つを規定していますが、離婚をした方の約9割が協議離婚を選択しています。
協議離婚は、市区町村役場の戸籍係に離婚届を届け出ることによって成立します(民法764条)。
しかし、戸籍係には実質的審査権はありません。つまり、届出に不備がなければ原則として受理します。そのため、当事者双方の離婚意思を確認する手段がないため、他方配偶者が離婚することに合意していないにもかかわらず、一方の配偶者が離婚の届出をして役所に受理されて離婚が成立してしまうことがあります。
不受理申出制度~一方的に離婚届が出されることを阻止する
このように、相手方配偶者が離婚を望んでいなくても、他方配偶者が一方的に離婚届を作成して役所に届け出てしまうことにより形式的に離婚が成立してしまうことも否定できないのです。
そこで、一方的に不当な離婚を防止する制度として、離婚届などの「不受理申出制度」があります(戸籍法27条の2第3項~5項)。不受理申出後、申出をした本人が窓口に来たことが確認できなかったときは離婚届等の届出は受理されません。
戸籍法27条の2(届出)
1.市町村長は、届出によつて効力を生ずべき認知、縁組、離縁、婚姻又は離婚の届出(以下この条において「縁組等の届出」という。)が市役所又は町村役場に出頭した者によつてされる場合には、当該出頭した者に対し、法務省令で定めるところにより、当該出頭した者が届出事件の本人(認知にあつては認知する者、民法第797条第1項に規定する縁組にあつては養親となる者及び養子となる者の法定代理人、同法第811条第2項に規定する離縁にあつては養親及び養子の法定代理人となるべき者とする。次項及び第三項において同じ。)であるかどうかの確認をするため、当該出頭した者を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を示す運転免許証その他の資料の提供又はこれらの事項についての説明を求めるものとする。
2.市町村長は、縁組等の届出があつた場合において、届出事件の本人のうちに、前項の規定による措置によつては市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを確認することができない者があるときは、当該縁組等の届出を受理した後遅滞なく、その者に対し、法務省令で定める方法により、当該縁組等の届出を受理したことを通知しなければならない。
3.何人も、その本籍地の市町村長に対し、あらかじめ、法務省令で定める方法により、自らを届出事件の本人とする縁組等の届出がされた場合であつても、自らが市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを第一項の規定による措置により確認することができないときは当該縁組等の届出を受理しないよう申し出ることができる。
4.市町村長は、前項の規定による申出に係る縁組等の届出があつた場合において、当該申出をした者が市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを第1項の規定による措置により確認することができなかつたときは、当該縁組等の届出を受理することができない。
5.市町村長は、前項の規定により縁組等の届出を受理することができなかつた場合は、遅滞なく、第3項の規定による申出をした者に対し、法務省令で定める方法により、当該縁組等の届出があつたことを通知しなければならない。
この不受理の申出は、文書により申し出るものとされ(戸籍法施行規則53条の4第2項)、取り下げない限り有効となります。この期間中に離婚届が受理されても、届出時に離婚の意思がないと認められるときは、届出は無効として処理されます。
戸籍法施行規則53条の4
1.戸籍法第27条の2第3項の規定による申出は、当該申出をする者が自ら市役所又は町村役場に出頭してしなければならない。
2.前項の申出は、次の各号に掲げる事項を記載した書面でするものとする。
一 同項の申出をする旨
二 申出の年月日
三 申出をする者の氏名、出生の年月日、住所及び戸籍の表示
四 民法第797条第1項に規定する縁組における養子となる者の法定代理人又は同法第811条第2項に規定する離縁における養子の法定代理人となるべき者が申出をするときは、その養子となる者又は養子の氏名、出生の年月日、住所及び戸籍の表示
協議離婚の「協議」とは、お互い理性的に話し合ったうえで、双方納得・合意することを意味します。もし、コロナ禍がきっかけで夫婦関係がしっくりいかなくなってしまい、相手側配偶者に十分な協議を経ないで一方的に離婚届を出してされてしまう可能性があるなら、不受理申出制度を利用するのもよいでしょう。そのうえで、お互いに理性的に話合い、結婚生活の継続、別居、そして離婚など、双方にとって最善の選択をしてみてはいかがでしょうか。