メジャーリーグによる賭博規則の周知に関連して。キャンプ中にはどのようなミーティングがあるのか。
ドジャースの大谷翔平選手の通訳だった水原一平氏が違法賭博に関与した疑いがもたれている。米国の内国歳入庁が水原氏について捜査しているとAP通信が伝えた。さらにメジャーリーグ機構も調査を行うことを明らかにしている。
水原氏は米スポーツ専門局ESPNの取材に対して野球には賭けていないと話している。野球に賭けていない理由として「そのルールは知っていた。スプリングトレーニングでそれについてミーティングも行われる」と言ったそうだ。
MLB規則は、MLB機構、MLB球団に雇用されている全ての人(パートタイマーを含む)は、いかなる野球の試合に賭けることも禁止している。これらに賭けた場合は1年間の出場停止、自らが仕事として関与する野球の試合に賭けたときには永久追放処分になることが明記されている。また、違法な賭博も禁止しており、違法な賭け屋と賭けを行った選手、審判員、MLB球団またはMLB機構の役員または従業員は、その行為の事実と状況に照らしてコミッショナーが適切と考える罰則を受けるものとする、としている。
水原氏はスプリングトレーニング中に賭博に関するミーティングがあるとしていた。その言葉のとおり、この期間にはMLB機構や、MLBに関連する様々な組織が選手たちに情報を提供し、啓蒙し、規則について確認する機会を設けている。例年、MLB機構とこれらの組織は各キャンプ地を巡回していき、練習開始前の朝の時間帯に30分から1時間ほどかけてミーティングを行っている。
今年のスプリングトレーニングでは、MLB機構や次のようなMLB関連組織が、各球団のキャンプ地を巡回していた。
MLBセキュリティーミーティング
MLB機構によるミーティング。筆者は内容を把握できていないが、ドメスティック・バイオレンス、ソーシャルメディア、ギャンブルや安全に関することが含まれているものと思われる。賭博に関する規則であるルール21の説明もなされているのでないか。
MLBPA メジャーリーグ選手会
メジャーリーグ選手による労働組合。選手会からの説明や情報の提供がなされており、選手会として賭博に関する説明、賭博から選手を保護することに関する情報が提供されている可能性もある。
このほかに、メジャーリーグに関連する組織もミーティングを行い、メジャーリーガーをどのように支援するかという情報とともに、メジャーリーガーからの協力を募るための説明もしている。
B.A.T(Baseball Assistance Team)
1986年に元メジャーリーガーらによって設立されたもので、食事や住居の支援、さまざまな依存症からの回復支援、医療費の支援、お金に関する教育を提供している。対象は1日でもメジャーリーグでプレーした人のほか、以下の仕事に少なくとも2年以上携わっていた人も含む。メジャーリーグの監督、コーチまたはアスレチックトレーナー、マイナーリーグ選手、監督、コーチまたはアスレチックトレーナー、ニグロリーグ選手、スカウト、MLBまたはマイナーリーグの審判員、プロの女子リーグ、MLBまたはマイナーリーグのフロントオフィス職員、MLBクラブのクラブハウス非常勤職員、選手会職員、有資格者の未亡人と子ども。
Players Alliance
黒人の現役メジャーリーガーと元メジャーリーガーによって2020年に設立された組織。黒人選手のフィールド内外での機会への道筋を作ることによって、公平性とインクルージョンに対する野球界の制度的障壁に対処する。
MLB Players Alumni
1982年に設立されたメジャーリーガーのOB会。野球の普及のほかに、さまざまなチャリティ活動を行っている。
このほかに、球団の総年俸に関するミーティングの機会を持っている球団があった。
スプリングトレーニングが終われば、レギュラーシーズンに入る。各球団の本拠地球場のクラブハウスの出入り口付近には、MLBの規則、例えばドーピングやギャンブル、人種差別、ハラスメントに関するものが貼り出されており、家族関係やキャリア、メンタルヘルスについて支援するためのホットラインの電話番号等も掲示されている。