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ハリウッドスターの、意外にもフツーな出会いの形

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
クリス・プラットとキャサリン・シュワルツェネッガー(写真:REX/アフロ)

 クリス・プラットとキャサリン・シュワルツェネッガーが結婚した。アーノルドの長女とはいえ、自らは映画業界で仕事をしていない新婦と、ロケ地で多くの時間を過ごす多忙なアクションスターの新郎がどこで出会ったのだろうと思うと、新婦の母の引き合わせだったとのこと。年頃の娘に良い人がいないと気を揉む母が、「バツイチではあるけど、背は高いし、人柄も収入も良いし、この人なら」と知り合いの男性に声をかけた、昔から良くあるパターンだ。

 あの日あの時あの場所で君に会えなかったら、みたいな運命的状況をスクリーンで展開するハリウッドスターたちは、私生活ではかなり平凡な形で恋のお相手を見つけている。最も多いのは、職場恋愛。とりわけ、共演者同士、とくに夫婦や恋人を演じた俳優たちの組み合わせは多い。ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー、ジョニー・デップとアンバー・ハード、エマ・ストーンとアンドリュー・ガーフィールド、トム・クルーズとニコール・キッドマン、ダニエル・クレイグとレイチェル・ワイズ、ロバート・パティンソンとクリステン・スチュワート、ベン・アフレックとジェニファー・ロペス、マイケル・ファスベンダーとアリシア・ヴィキャンデルなどは、みんなそうだ。

 もともと恋人同士を演じさせてしっくりきそうな人たちがキャスティングされる上、仕事中、相手のことを本当に好きだと思うよう努力するのだから、これはごく自然な流れと言えるだろう。だが、ジェニファー・ローレンスとダーレン・アロノフスキー、ティム・バートンとヘレナ・ボナム・カーターなど、女優と監督の組み合わせもある。ナタリー・ポートマンと夫ベンジャミン・ミルピエは、「ブラック・スワン」の主演女優とバレエ指導者兼コレオグラファーという関係。ジュリア・ロバーツの現在の夫ダニー・モダーは、彼女が主演した「ザ・メキシカン」でアシスタントカメラマンだった人だ。マーゴット・ロビーと夫も、イギリス映画の撮影現場で、出演者と助監督として出会った。

 また、リース・ウィザスプーンの再婚相手は彼女が所属する大手タレント事務所のエージェントで、これも職場での出会いに入る。ヒラリー・スワンクも、やはり一時エージェントとつきあっていた。ハリウッドのエージェントは、デザイナースーツを着こなした高給取り。仕事柄、スターやスタジオの大物とも交流が深く、釣り合いは取れている。

 次に、知り合いの紹介。先に挙げたプラットとシュワルツェネッガーのほかに、ブラッド・ピットとジェニファー・アニストンもその代表例だ。このふたりは、それぞれのエージェントが「お似合いだろう」とデートを設定し、見事、カップルとなった。マドンナとガイ・リッチーは、共通の友人であるスティング夫妻の引き合わせ。若干違うのはエミリー・ブラントとジョン・クラシンスキーで、このふたりの場合は、クラシンスキーが友人ジャスティン・セローとレストランにいたところ、同じ店で知人がブラントと食事をしているのを見つけ、クラシンスキーがそのテーブルに歩いて行ったという経緯である。

同期仲間、ナンパ、出張先のバーの女

 よくある出会いのパターンは、ほかにもある。クリス・ヘムズワースとエルサ・パタキーは、一緒に仕事をしたことはなかったが、いわゆる同期仲間として出会った。ハリウッド進出を狙い、それぞれオーストラリアとスペインからL.A.に引っ越してきてまもなく、同じハリウッドの事務所に入ったことがきっかけで知り合ったのである。マット・デイモンの場合は、出張先で見つけた恋。お相手の女性は、「ふたりにクギづけ」の撮影でマイアミにいる時、仲間たちと飲みに行ったナイトクラブで働いていたバーテンダーだ。

 デイモンはナンパに近いとも言えるが、もっと正統派のナンパ組もいる。たとえばジョニー・デップ。彼がヴァネッサ・パラディと出会ったのは、「ナインスゲート」の撮影で滞在していたパリ。ある夜、ホテルでのディナーパーティで遠くから彼女の後ろ姿を見た彼は、まずその背中と首の美しさに惹かれ、彼女が振り返ると、ほぼ一目惚れ状態になったと語っている。アレック・ボールドウィンの場合は、もっと大胆だ。彼と現在の妻が出会ったのは、ニューヨークのレストラン。店のドア付近に立っていた彼女に、ボールドウィンが、「前にお会いしたこと、ありましたっけ?」と声をかけたのが始まりだという。あまりに古い誘い文句だが、彼は現在61歳ということで、まあそこはご愛嬌。とにかく、それがきっかけでふたりは会話を交わし、2日後に初デート、1年半後に結婚の運びとなった。その後、夫妻には4人の子供が生まれている。

 それにしても、当時52歳という年齢で見ず知らずの20代なかばの女性をナンパするとは、かなりの勇気だ。しかも、女性に電話番号を聞かないのが彼のポリシーらしく、ボールドウィンは彼女に名刺を渡し、彼女が電話をさせているのである。そんなことを堂々とやってみせられるのも、一般人にはないオーラと自信があるからだろう。一見普通でも、やはりセレブは、時にどこかちょっと違っていたりするもののようだ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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