活況呈すモバイルアプリ市場、昨年は115%増、ただし利益を出せる開発者はごく一部との市場予測も
スマートフォンやタブレットなどモバイル端末向けアプリケーションの利用実態を解析している米フラーリーによると、昨年1年間におけるこれらアプリの利用頻度は前年に比べ115%増と、2倍以上に増えたという。
メッセージとソーシャルのアプリは3倍超
同社は、利用者が電子メールを開いたり、コンテンツを閲覧したり、コメントを送信したりする際に発生する交信(セッション)数を計測している。
それによると、昨年12月31日におけるセッション数は47億、昨年1年間のセッション数は1兆1260億で、いずれも過去最高を更新した。年明けのデータも昨年実績を上回っており、この傾向が今後も続けば2014年も記録を更新すると予測している。
昨年におけるアプリの利用頻度(セッション数)の前年比伸び率をカテゴリー別に見ると、チャットや通話、写真メッセージなどの「メッセージ/ソーシャル」が203%増と、3倍超になり、最も大きく伸びた。
これに次いで伸びたのが、オンラインメモアプリ「エバーノート(Evernote)」やオンラインワープロの「クイップ(Quip)」などのカテゴリーである「ユーティリティ/プロダクティビティ」で、こちらは同149%増。
このほかのカテゴリーでは、「音楽/メディア/エンターテインメント」が同78%増と高い伸び。この後、「ゲーム」の同66%増、「スポーツ/健康/フィットネス」の同49%増、「ニュース/雑誌」の同31%増と続いている。
モバイルアプリは「メッセージ/ソーシャル」分野を中心に利用が増えている。
米フェイスブックは昨年、写真メッセージ「スナップチャット(Snapchat)」の買収を試みたり、2012年に買収した写真共有サービス「インスタグラム(Instagram)」に特定の相手やグループと通信できる機能を追加したりしており、同社の動向だけを見ても、この分野が活況を呈していることがうかがえると、フラーリーは指摘している。
アップルのアプリ販売、昨年100億ドルを突破
この調査に先立ち、米アップルが公表したデータによると、アイフォーンやアイパッド向けアプリの配信/販売サービス「アップストア(App Store)」の昨年1年間の売上高は100億ドルを突破した。
アップルは、売上高の30%を徴収しているため、昨年1年間にアプリ開発者が手にした金額は70億ドル超ということになる。また開発者がこれまでアップストアのアプリ販売で得た累計金額は150億ドルに上るという。
アップストアは世界155カ国でサービスを提供しており、現在用意している本数は100万本以上になる。これらの昨年12月におけるダウンロード件数は約30億件で、売上高は10億ドル超。同社によると12月は「アップストアの歴史で最も成功した月」だったという。
ガートナー、「有料アプリ開発は儲からない商売に」
ただ、その一方で米ガートナーの推計を見ると、開発者は安閑としてはいられない状況だ。同社の予測によると2018年までに、経済的に成功を収めるアプリの数は全体の0.01%未満に減るという。
その最大の理由は、アプリ市場の競争激化。
アプリはすでに膨大な数が登場しており、消費者はそれらの中から自ら選別して希望のものを見つけるのではなく、推奨サービスや口コミ、広告などによって情報を得ている。これにより消費者が目にするアプリはおのずと限られ、大半のアプリは埋もれてしまうという。
同社の分析によると、現在のアプリは企業ブランドや製品の認知度向上を図ったり、遊び感覚で公開したりしている無料のものが大半で、アプリ自体が利益を生むことを目的としていないという。
同社は2017年には、ダウンロードされるアプリのうち、無料のものが94.5%を占めるようになると予測している。
また有料アプリの約90%は、1日のダウンロード回数が500回未満、1日の売上高が1250ドル未満になるという。有料のアプリ開発者にとって市場環境はますます厳しいものになるとガートナーは予測している。
(JBpress:2014年1月15日号に掲載)