シリア:イスラーム国がロシア軍兵士を殺害したと主張、ロシアも爆撃でテロリスト200人を殲滅したと発表
イスラーム国がロシア軍兵士を殺害か?
イスラーム国に近いアアマーク通信は4月17日、シリア中部のヒムス県スフナ市に近い砂漠地帯(スフナ砂漠)で、イスラーム国メンバーがロシア軍の兵士2人を殺害したと伝えた。
アアマーク通信が軍事筋の話として伝えたところによると、ロシア軍ヘリコプター1機が、イスラーム国が活動を続けるスフナ砂漠内の地域に対して空挺作戦を試みたが、メンバーらがヘリコプターに向けて機関銃を発砲、また降下したロシア軍部隊と交戦し、兵士2人を殺害、複数を負傷させたという。
これに関して、反体制系サイトのダイル・ザウル24は4月19日、イスラーム国による攻撃で、ダイル・ザウル県カバージブ村に設置されている検問所に駐留するシリア軍は部隊が、ダマスカス県とダイル・ザウル県を結ぶ幹線道路を封鎖した、と伝えた。
イスラーム国は2019年3月までにシリア国内の支配地をすべて失ったが、ダイル・ザウル県、ヒムス県、ラッカ県西部、ハマー県東部の砂漠地帯に潜伏し、住民、シリア軍、北・東シリア自治局の武装部隊であるシリア民主軍を襲撃するなど、活動を続けている。
ロシア軍がテロリスト200人を殺害したと発表
アアマーク通信の報道の真偽は定かではない。だが、ロシア軍兵士2人殺害の報が拡散された2日後の4月19日、ロシア国防省は、ロシア軍戦闘機が、ヒムス県タドムル市近郊のテロリストの教練基地を爆撃し、200人あまりを殺害したと発表した。
テロリストとはイスラーム国メンバーのことと思われる。
ラタキア県フマイミーム航空基地のシリア駐留ロシア軍司令部に設置されている当事者和解調整センターのアレキサンデル・カルポフ副センター長(海軍少将)が発表した報道声明の内容は以下の通り。
タンフ地区とは、米国および同国が主導する有志連合が違法に占領を続けるタンフ国境通行所を中心とするいわゆる55キロ地帯のこと。ロシア・シリア両国政府は、ユーフラテス川東岸地域を実効支配するクルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導する北・東シリア自治局の管理下にある刑務所に収監されているイスラーム国のメンバーを55キロ地帯に移送し、シリア国内で新たなテロを行わせるため教練を行っていると批判している。
なお、200人あまりのテロリストを殺害したとするロシア国防省の発表の真偽も定かではない。だが、英国を拠点とする反体制系NGOのシリア人権監視団は4月19日、ロシア軍戦闘機がヒムス県東部のアブー・ルジュマイン山、スフナ砂漠、タドムル市北東の砂漠地帯を中心に実施した爆撃回数は過去72時間で220回以上に達し、ダーイシュ・メンバー26人が死亡したと発表している。
また、爆撃に合わせて、ロシア軍地上部隊が、シリア軍第5軍団とともにダイル・ザウル県南部の砂漠地帯からスフナ砂漠に至る地域でダーイシュ・セルに対する掃討作戦を本格化させている。
第5軍団は、シリア政府との和解に応じた反体制武装集団の元司令官や元戦闘員が参加している武装部隊で、ロシアの支援を受けている。