店舗を持たない「モバイルプランナー」との携帯電話の契約トラブル。国民生活センターに聞きました。
スマホの買い換えや新機種の購入の際には、新たに通信サービスの契約をしなければなりません。しかし、どのサービスが自分にとって最適なのか?なかなか素人にはわかりづらいもの。そこで、その道のプロにアドバイスを受けます。
この時、通信サービスの料金プランなどの提案してくれる方を、モバイルプランナーと呼びます。
この言葉を始めて聞く方もいらっしゃるかもしれません。
モバイルプランナーで検索すると、SNS上には数多くの投稿が出てきます。無事にスマホの機種変更の契約を終えたと思われる、スマートフォンを片手に笑顔のツーショット写真もみられます。
「スマホを安くしたい時には連絡をしてください」「月々の携帯代に困っている。ショップにいくのが面倒くさいなど、いろんな相談を受けています」
「最新機種に変えて、月々の値段も安くできてよかったです」
これらはモバイルプランナーと呼ばれる人の投稿です。
一方で「SNSを使って誘うモバイルプランナーは避けた方が良い」「モバイルプランナーってどうなの?マルチ?」という批判的な書き込みもあります。
モバイルプランナーは、お客さんに来店してもらい説明をするのが一般的ですが、SNSや知人の紹介を通じた依頼を受けて、ファミレスや自宅などに出向き、スマホなどの端末機器の通信プランを説明する人もいます。
今回は、後者の無店舗型で説明をするモバイルプランナーにフォーカスします。この言葉でネット検索すると賛否両論の情報が出てきていることからもわかるように、笑顔の写真の裏には、トラブルも潜んでいるようです。
店舗を介さないモバイルプランナーを利用する際、何に注意をすべきなのでしょうか?そして、どのようなトラブルが寄せられているのかについて、国民生活センターに話を聞きました。
ケース1「端末代金の残債を負担します」と言われたのに、約束を守ってもらえない。(21年3月相談)
10代女性は、モバイルプランナーを友人に紹介されました。そしてビルの一室に呼び出されて、スマホの乗り換え相談をしました。その際、女性が「今持っているスマホの機種代金が分割払いで支払いが終わっていない」ことを伝えると、モバイルプランナーは「その機種の残金はこちらで負担します」との説明をします。そこで、新しいスマホを契約して、違う通信会社に乗り換えました。
しかし、以前の通信会社から請求が届きました。仕方なく払いましたが、その後、残代金を一括で支払うようにという請求がありました。残っている代金を支払ってくれるということで契約したにもかかわらず、その約束が果たされないばかりか、挙げ句の果てには、モバイルプランナーとも連絡が取れなくなってしまいました。
同センターは「『端末代金の残債を負担します』と言いながら、その約束が守られないとなりますと、契約時の説明に問題があったといえます」と指摘します。
ただ、このケースのように相手のモバイルプランナーと連絡がとれなくなってしまうと、トラブルの解決は非常に難しくなってしまいます。無店舗型のモバイルプランナーとの契約ではこうした事態も起こり得ることを心しておく必要があります。
ケース2「スマホとWi-Fiの料金が、今より安くなるというので乗り換えることにしたが安くならない」(20年7月相談)
20代男性は、知人から紹介されたモバイルプランナーから「スマホを乗り換えると、3年間で約10万円もお得になる」との説明を受けます。スマホとWi-Fiの料金が今より安くなるのならと思い、端末機器を買い替えました。しかし実際には、説明どおりには安くなりませんでした。約束と違うので、モバイルプランナーに新しく購入した端末代金を請求できないでしょうか。
「これも説明の際に、10万円安くなるとか、お得になるような説明をしていますが、実際には違っています。契約時の説明が嘘だったとすれば、これもまた問題のある勧誘だといえます」(同センター)
こうした説明をするもののなかには、モバイルプランナー自身が通信契約に十分な知識がないままに、通信プランを提案した結果、このような事態になることもあります。
ケース3「友人を紹介すれば、キャッシュバックがあるといわれた」(21年3月相談)
20代女性は友人から「最新機種のスマホが格安で購入できる」という電話を受けて、モバイルプランナーを紹介されました。すると、モバイルプランナーの男性が家にやってきます。
男性は通信プランの説明をしながら「当社は店舗販売ではないので、安く提供できる」さらに「誰かを紹介してくれれば、キャッシュバックがある」との話を持ち掛けます。女性は新機種のスマホの契約することにしました。
後日、紹介してくれた友人に会った時に「やはり、別な友達を紹介することはできない」と伝えると「交通費を負担してもらう」と言われました。友達の紹介は無理だし、交通費の負担についても聞いていなかったので、解約したい。
無店舗型のモバイルプランナーを利用した時に、知人を紹介すれば、キャッシュバックがあるという話を持ち掛けてくることがあります。友人が別な友人を誘うというマルチ商法的な口コミの手法で、モバイルプランナーは契約数を増やしていくわけですが、キャッシュバックを得たいがために、強引な誘いが行われてしまうことも想定されます。相手の事情を無視したような形で、友人、知人を誘うことで、それまでに築いてきた大事な関係を壊しかねませんので、注意をする必要があります。
被害に遭わないためには
同センターに寄せられた事例には、20代前後の若い世代からの相談がみられます。若者の場合、友人からの紹介で勧誘されると、その場の空気感から、断り切れなくなり、契約してしまうことが往々にしてあります。
もし後になって、“やはり解約したい”と思った場合はどうすればよいのでしょうか?
「通信契約の場合は、特定商取引法のクーリングオフの適用はありませんが、同じような初期契約解除制度というのがあります。契約書面を受け取ってから8日以内でしたら解約ができる可能性があります。ただしこの期間を過ぎてしまいますと、解約は難しくなります」
最後に、被害に遭わないためには、何に気をつけるべきかを聞きました。
「今回の相談事例を見てわかるように、契約時の説明に問題があり、トラブルになってしまうケースがみられます。モバイルプランナーから“今より通信料が安くなる“との説明を受けた時には、そこにはしっかりとした根拠があるのかを尋ねてください。また“残債を払う”との説明であれば、それが契約書面に明記されているのかも確認してください。もし勧誘を受けて、少しでも不安や不審な点があれば、その場での契約は避けて、『188』(消費者ホットライン)に相談するようにして下さい」
スマホを使うのが日常になってきており、今後も、知人から紹介されたモバイルプランナーを介して、スマホの乗り換えをしていく人は増えていくと思われます。加えて、2022年4月から、成人年齢が18歳に引き下げられることで、トラブルの低年齢化も懸念されます。
一方で、年齢の垣根はありません。
先日もコーヒーショップで、モバイルプランナーの若い男性から説明を受けている中年女性を見かけました。
次々に話を繰り出されて、ただ説明を聞くしかない状況に陥っているのが、その表情にはありありと浮かんでいます。そして「何か、ご不明点やご質問はありますか?」と尋ねられても、女性は何を聞いてよいのかわからない様子で、黙り込みます。そこに、さっと契約書らしきものを差し出されて、サインをしていました。しかし、その内容をしっかりと見ている様子はありませんでした。
これまでの国民生活センターに寄せられたトラブルのように、モバイルプランナーが説明した言葉が、契約書に書かれているかどうか。その点は最低限、確認してから、サインをする必要があります。この点、携帯電話の事情に疎い中高年も注意を要するところです。
無店舗型のモバイルプランナーからの勧誘には、明らかな違法性というものは見られないかもしれませんが、通常の店舗に赴いての契約よりも、トラブルになりやすい状況があるとはいえるかと思います。こうしたリスクもはらんでいることを知って、利用すべきか否かを考える必要があります。