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結婚のために知っておきたい法知識18~結婚生活円満の極意

竹内豊行政書士
結婚生活円満の極意を憲法が教えています(写真:アフロ)

女優の浅野ゆう子さんが5月27日、大阪市内で、日本抗加齢協会などによる「アンチエイジングフェア in Osaka」イベントに出演した際に語った言葉をご紹介します。

昨年末に同世代一般男性と結婚したことを祝福され、「まったく違う人生を生きてきた人と暮らし、生きていくたいへんさを実感しております」と語ったうえで、次の発言をしています。

「お互いがどちらかに合わせるのではなく、これまで長い間、1人で生きてきたわけですから、お互いを尊重し合うように時間をつくっています」

※以上参考浅野ゆう子が語る「お互いを尊重し合う」

浅野さんの「お互いを尊重し合う」という考えは、実は、憲法の結婚観に則しています。憲法は24条で次のように結婚観を唱えています。

憲法24条1項

婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

「両性の合意」で成立する

まず、結婚が両性の合意のみに基づいて成立するとします。つまり、一方が「結婚してください」とプロポーズをして、他方が「わかりました。結婚しましょう」と受け入れれば成立します。

憲法は、結婚する者に自由な独立した人格を認め、結婚はそれを基礎とする一種の契約であるという結婚観を表明しています。

なお、民法は憲法24条を受けて「婚姻は、戸籍法の定めにより届出ることにより効力を生ずる」(民法739条)と規定しています(いわゆる「入籍」)。したがって、結婚の成立条件は両性の婚姻する合意が前提ですが、届出がなければ法的な結婚になりません。

「相互の協力」で維持する

次に、夫と妻が平等の権利を有することを基本とし、相互の協力で結婚が維持されなければならないとします。

性差別を否定し、夫婦の法的地位の平等と同権を保障し、これを前提として初めて夫婦相互の愛情と協力による家庭生活が維持されると考えます。

世間体や親のためではない

このように、結婚は「両性の合意」によって成立します。しかし、「世間体や親を喜ばせるため」に結婚する人も実際いらっしゃるようです。このような考えで結婚すると、困難な状況に陥ったときに「相互の協力」で乗り切ることが難しいような気がします。

また、深読みかもしれませんが、この考えは、戦前の「家制度」的発想が多少とも含まれている気がします。結婚式の「田中家」「伊藤家」といった「家」単位の表札や祝辞は「家制度」の名残の一つと考えられます。

他人でしかも異性が一緒に生活し続けるのが結婚。楽しいことばかりではありません。当然、「いろいろ」あります。

憲法がわざわざ「相互の協力により、維持されなければならない」と命令的に規定したのは、夫婦生活の維持が困難なことを見据えた結果かもしれません(憲法を創設した先人も「結婚生活はたいへんだな」と感じていたのかもしれませんね)。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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