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あなたの街の建物は本当に必要?公共施設の見直しは喫緊の課題

加藤秀樹構想日本 代表

あなたの町でも

高層の県庁や市役所、立派な文化センターやホール、県庁所在地なら必ずある県と市二つの美術館…。その他、公民館や体育館など戦後造られた公共施設の数はおびただしい数になる。

外国に行けば、市議会は夕方から図書館で開く、教会でコンサートがあるなど、「何をする」が中心にあって、それを行う場所は極力既存の使えるところを使うというのが普通だ。

私たち個人の生活や会社の活動でも同じだろう。ところが行政では、とにかくハコモノ造りが優先された。「隣の町にあるんだからうちの町にも」「県は市よりも立派なものを」…、こうやって身の丈以上のものもたくさん建てられた。さらに、市町村合併の結果、同じような公共施設が3つも4つもあるということもしばしば聞く。

こうやって、今、全国の自治体には42万棟の公共施設が存在する。体育館だけでも全国の市町村で5800棟以上、一つの市町村あたり、平均約3棟の体育館があることになる。

消防庁「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査結果」(H23.12)より
消防庁「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査結果」(H23.12)より

今ツケを払う時代に

ツケとはどういうことだろうか。

老朽化して天井版が崩落し、9人が死亡した笹子トンネルの事故は皆さんの記憶に新しいだろう。施設の老朽化が深刻化する。築30年以上の施設がすべての公共施設の約半数にのぼる。笹子トンネルは特別のことではなく、同じようなことはどの公共施設でも起こりうる。

また、過去数十年で地域間の人の移動や住民が求める行政サービスの内容が大きく変わってきた。加えて少子高齢化が更に進む。世代と地域の分布が変わるのだから、当然、必要な施設は変化する。数十年前と同じ学校の数、介護施設の数では無駄も生じている。配置バランスが失われ、施設数はやたら多いのに住民のニーズに十分こたえられていない。

民間の常識、行政の非常識

本来、それほど必要ではない施設を持つということは、民間の企業においてはまず、ない。バブルの時には、土地投機や豪華な施設が競われたこともあったが大部分はその後処分された。土地を取得し、建物を建設、維持管理を行い、老朽化すれば改修や補強を行う。施設を持つということは、規模にもよるが長期の間には数億円、数十億円単位のコストがかかる。無駄な施設を多く抱えていれば、経営が問題になる。

しかし、多くの自治体の首長や議員の間では今だに多くの施設を持つことが繁栄、豊かさを表すものと考えられている。国の遊休施設はかなり整理が進んだものの、多くの自治体では施設の利用の実態や老朽化の状況すら把握されないままに造られ続けてきたのだ。

行政では通常バランスシート(貸借対照表)は作られず、企業的な意味での資産価値とか減価償却という考え方がない。建設時にいくら税金を使ったということしか分かっていないのが実情だ。

また、施設を建設するときには営繕部門が行い、完成後は各事業実施部門に所管が移される。そして、日常的な利用の実態把握や修繕、老朽化の度合いの確認はそれぞれのセクションごとに行われているのだ。その結果、各施設の現在の価値や、修繕の履歴の利用の実態を一覧できる台帳は多くの自治体で存在していない。

そのため、自治体の所有する施設が、今後の耐用年数の期限までにどの程度コストが掛かるのか、各施設の利用状況に基づき、類似の施設の整理や統合をしなくていいのかなどの全体像は誰も把握できていない。

どの自治体も厳しい財政状況にある中で、更に新しいハコモノを作る余裕などなく、逆に身の丈に合った施設水準への転換が急務なのだ。

そのためには公共施設の総点検が不可欠だ。構想日本でも、これまで10年以上、延べ170回以上の事業仕分けの経験・ノウハウを公共施設の最適化に活用する「施設仕分け」を提唱している。

構想日本 代表

大蔵省で、証券局、主税局、国際金融局、財政金融研究所などに勤務した後、1997年4月、日本に真に必要な政策を「民」の立場から立案・提言、そして実現するため、非営利独立のシンクタンク構想日本を設立。事業仕分けによる行革、政党ガバナンスの確立、教育行政や、医療制度改革などを提言。その実現に向けて各分野の変革者やNPOと連携し、縦横無尽の射程から日本の変革をめざす。

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