2022年以降もホンダの技術を使うレッドブル。ホンダのラストイヤー、その進化が運命を決める
懸案となっていた「ホンダ撤退後」の道筋が見えた。ホンダからパワーユニット(PU)の供給を受ける「レッドブル」は2021年を最後にホンダがF1から撤退した後も、ホンダのPUを引き継いで使用することになった。
レッドブルは新会社レッドブル・パワートレインズを英国ミルトンキーンズに設立し、ジュニアチームの「アルファタウリ」と共にPUを運用していく。
F1パワーユニット開発凍結で合意
昨年秋、ホンダが「F1活動終了」という表現でF1からの撤退を発表してからというものの、PUを失うレッドブルとアルファタウリがどのメーカーのPUを獲得するのか、はF1の将来像を左右する懸案事項だった。
供給できるキャパに空きがあるのはルノーのPUだが、レッドブルとルノーはホンダと組む前に喧嘩別れした経緯がある。後発のホンダに凌駕されていたルノーと渋々タッグを組むか、あるいはパワーユニット喪失でF1 から撤退か。レッドブルの進退に関わる問題に、残されたソフトランディング策はホンダの技術をレッドブルが買い取りホンダPUを継続使用することだった。
しかしながら、巨大な施設と人員でPUを開発してきたホンダが去った後、PUだけを渡されてもライバルメーカーとの差は年々大きくなるばかりである。この策で重要なのはF1がエンジン開発を凍結することだった。
当初、ライバルたちは開発凍結案に難色を示したと伝えられていたが、2月11日に開催されたF1コミッションでは満場一致で賛成となり、FIA(国際自動車連盟)は2022年から24年までの3年間、F1パワーユニットの開発凍結を発表した。
コロナ禍で予定してたレースを消化できず、F1の収入、チームの収入は激減している。今季2021年からはチームの年間予算を約150億円に制限するバジェットキャップが導入されるなど、F1はサーカス全体でコスト削減に向かっている。そんな折、ただでさえ10チームしかないF1チームのうち、レッドブルとアルファタウリに辞められればF1にとっては大きな損失となる。
このような事情を踏まえた上で、2025年に新エンジン規定がスタートするまでの間、開発競争をストップさせようということになったわけだ。
2021年、ホンダ最後の年の重圧
ホンダは今年、2021年シーズンをもって1960年代から4回に渡って挑戦してきたF1活動に終止符を打つ。
レッドブルとの合意についてホンダはブランド・コミュニケーション本部長 渡辺康治氏のコメントを発表。レッドブルの新会社にホンダのスタッフが出向するのか、あるいは全く関わらなくなるのか、詳細は不明だ。
ただ、2021年を今まで以上の成績で戦い抜いて、ハイ終わりという訳には行かない。パワーユニットの凍結は2022年の頭からという表現になっている。
すなわち22年から向こう3年間使うパワーユニットは2021年中に完成していなければならない。2022年からはコロナ禍で1年延期された新しい技術規則が施行されるので、現行型から大幅変更になる新型シャシーと合わせた開発作業が必要になる。
現実的にはここまでがホンダのF1での仕事ということになるのだろう。レッドブルとアルファタウリと共に勝利し、ホンダは彼らに良い「置き土産」を提供できるだろうか。ホンダの2021年はとても重要だ。
この仕上がり具合はエースドライバーのマックス・フェルスタッペンの去就にも関わってくる問題だ。フェルスタッペンとレッドブルの契約は2023年まであるが、17歳でF1デビューして7年目のフルシーズンを過ごすフェルスタッペンは今まで一度もシーズン最速のポテンシャルを持ったマシンを手にしていない。
セバスチャン・ベッテルがレッドブルで樹立した「史上最年少F1チャンピオン(23歳134日)」を更新する可能性を秘めていたフェルスタッペンだが、結局その機会は2020年も訪れずじまいで、今季フェルスタッペンは24歳になる。
フェルスタッペンがホンダの撤退を機にチームの移籍を考えるのは何ら不思議なことではない。エースドライバーを維持したいレッドブルの運命は、いろんな意味で去りゆくホンダにかかっている。