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カーショウは「最もポストシーズンに弱い大投手」なのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
クレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース)Oct 9, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 クレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース)は、球史に残る大投手だ。通算防御率2.44は、1900年以降に2000イニング以上を投げた投手の14位に位置し、1920年以降に限れば、誰よりも低い。防御率リーグ1位のシーズンは5度。サイ・ヤング賞には3度選ばれている。受賞3度以上の投手は、カーショウを含めて10人しかいない。

 だが、ポストシーズンのカーショウは、レギュラーシーズンの彼とは違う。今年のディビジョン・シリーズ第2戦は、最初の2イニングに3点を奪われ、その後は立ち直ったものの、敗戦投手となった。第5戦は7回表の二死一、二塁からリリーフとして登板し、その回は抑えたが、次の回2者連続ホームランを喫し、同点に追いつかれた。カーショウが2人に続けてホームランを打たれるのは、2年前のディビジョン・シリーズ第1戦に続く2度目。レギュラーシーズンでは、キャリアを通して一度もない3度だ。

 また、ポストシーズンの25先発中、24.0%の6試合は自責点5以上だ。レギュラーシーズンの344先発中、自責点5以上は24試合なので、7.0%に過ぎない。

 ポストシーズンの通算防御率4.43は、サイ・ヤング賞2度以上の19投手中、ワースト3位に位置する。それに対し、レギュラーシーズンの通算防御率は19人のベスト。落差はいっそう際立つ。

筆者作成
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 とはいえ、カーショウのキャリアはまだ終わっていない。昨年のデビッド・プライス(ボストン・レッドソックス)のように、ポストシーズンに弱いというレッテルを剥がすチャンスは残っている。

 一昨年まで、プライスのポストシーズン通算成績は2勝8敗(1セーブ)、防御率5.03。しかも、2勝はいずれもリリーフとして挙げたもので、先発9登板は0勝8敗、防御率5.74だった。

 昨年のポストシーズンも、最初の2登板は不本意な投球が続いた。ディビジョン・シリーズ第2戦は2回途中に降板し、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ第2戦も5イニングを投げることができなかった。

 ところが、中3日で先発した第5戦で6イニングを無失点に封じ、先発としてはポストシーズン初の白星を挙げると、そこからは快投を続けた。ワールドシリーズで、第2戦に先発、第3戦にリリーフ、第5戦は再び先発とフル回転し、計13.2イニングを投げて3点しか与えなかった(防御率1.98)。第3戦と第5戦は、いずれも中1日で登板。イニングとともに2勝(第2戦と第5戦)も両チームで最も多く、シリーズMVPは8打点のスティーブ・ピアースが受賞したが、プライスが選ばれても、まったくおかしくなかった。

 当時のプライスは33歳だった。カーショウは来年3月に32歳を迎える。

 なお、プライスも、2012年にサイ・ヤング賞を受賞している。ワールドシリーズ優勝は、プライスが1度、カーショウはゼロだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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