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「ナオヤがモンスターならネリだってモンスターだ」井上尚弥と対決が有力なネリの参謀を直撃

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
ネリ-ホバニシアンのWBC1位決定戦(写真:Cris Esqueda/GBP)

ネリはテキサス州で始動か?

 米国スポーツ専門メディア「ESPN」が8日(日本時間9日)伝えた世界スーパーバンタム級4団体統一王者井上尚弥(大橋)vs.挑戦者WBC1位ルイス・ネリ(メキシコ)の「5月、東京で対戦合意」報道。このカードは日本、メキシコのみならず全世界のボクシングファン垂涎の対決である。執筆者のマイク・コッピンガー記者はESPNのメイン・ボクシングライターで特ダネ、スクープに定評がある。時々、フライングもするのだが、井上が所属する大橋ジムの大橋秀行会長も「交渉中」と明かしており、実現への期待は尽きない。

 2人が雌雄を決するにはJBC(日本ボクシング・コミッション)から日本国内で活動が停止されているネリの処分が撤回される必要がある。井上がマーロン・タパレス(フィリピン)に10回KO勝ちでスーパーバンタム級4団体統一王者に就いた後、スポーツ紙などの報道によるとネリ本人と陣営が活動再許可の申請をすれば、処分が解除されてJBCからライセンスが発行される見通しだという。

 そこで、メキシコ・ティファナで「サングレ・ヌエバ・ジム」を運営し、ネリをアマチュア時代から指導するイスマエル・ラミレス・トレーナーにネリの近況などを聞いてみた。

――井上尚弥vs.ルイス・ネリが5月、東京開催のニュースは聞いていますか?

ラミレス氏「そのニュースは聞いているよ。一つ確認したいんだけど、日本のコミッションが下した処分は東京限定とも聞いている。東京以外の別の地域はどうなのかな?」

――2018年に下された処分は日本全域です。もし取り消されれば日本のどこでも試合が可能になるでしょう。一説には5万人以上収容の東京ドームが会場に用意されるとも言われています。

ラミレス氏「それを聞いて安心した。こちらのコミッションはそれぞれ、言うことが違ったりして、はっきりしなかったんだ」

――セニョール・ラミレスが聞いたのはティファナそれともメキシコシティのコミッション?

ラミレス氏「両方だよ。それにグアダラハラ(スーパーミドル級4団体統一王者サウル“カネロ”アルバレスの故郷)のコミッションにも問い合わせたんだよ」

ラミレス氏(右)とミット打ちに励むネリ(写真:筆者)
ラミレス氏(右)とミット打ちに励むネリ(写真:筆者)

――なるほど。ところでネリはトレーニングを始めていますか?

ラミレス氏「もう動き始めている。本格的に調整に入るのは2月1日を予定している。たぶん(米国の)テキサスになると思う」

――テキサス州のどこになりますか?

ラミレス氏「エルパソになるはずだ。ただ正式に決まっているわけではない。メキシコシティ周辺になるかもしれない。我々が考えているのはオトミ(メキシコシティ郊外のボクサーの高地キャンプ地)よりももっと標高が高い場所なんだ」

――エルパソでネリが練習するのは初めてですね。

ラミレス氏「そう、初めてになる。もちろん私も帯同するけど、ネリが自分のコネクションで見つけたみたいだ。誰のところへ行くかまだ私はわからない。いずれにせよエルパソでやるなら標高は関係ない」

「俺は勝てる!」とネリ

――セニョールから見て井上の印象を聞かせてください。

ラミレス氏「第一にインテリヘンテ(頭の良い、知性的)な選手だね。でもネリだって負けていない。両者ともボクシングもできれば、打ち合いもいとわない。好ファイト、興味津々の試合が保証される。同時に私自身もナーバスになり神経をすり減らす攻防を予想している」

――ではネリ本人は井上戦に関して何と言っていますか?

ラミレス氏「多くの人々が関心を抱く、興味深い試合が待っていると。そんな舞台に立てるのがうれしいとも。そして『俺は勝てる、イノウエを捕まえられる、ディフェンスだって負けない』と言っている」

――ソーシャルメディアでも井上を挑発していますね。

ラミレス氏「そうだね。ちょっと勇敢すぎるところもあるけど……」

――ネリはかなり自信があると見ていいですね。

ラミレス氏「シー(イエス)。彼は外国で試合をするのが好きだし、強い選手、才能にあふれた相手との対戦を望んでいるから、いっそう張り切っている」

最新試合でネリはフィリピンのフロイラン・サルダールに2回TKO勝ち(写真:Zanfer Boxing)
最新試合でネリはフィリピンのフロイラン・サルダールに2回TKO勝ち(写真:Zanfer Boxing)

ネリにとって唯一無二の恩人

――打倒・井上の戦略は頭にありますか?

ラミレス氏「私から言わせると全てを前面に押し立てて対処しなければ勝てない。ナオヤはとてもいい戦闘スタイルを持っているから、これから全力でトレーニングに没頭しなければならない。ナオヤの才能とパンチ力は確かにモンスターだ。でもネリもモンスターだよ。対抗できる。素晴らしい戦闘、ペレア(試合の意味のほかにケンカの意味も)になるだろう」

――正式決定が待ち遠しいですね。

ラミレス氏「ここメキシコでも日本でもアメリカでも世界中のファンがこの試合にすごく関心を持っている。そんな試合は頻繫にあるわけではない。ラスベガスで開催されても不思議ではない。ファンの観戦意欲を刺激して止まないカードだね」

 ネリ(35勝27KO1敗=29歳)は一時、カネロのトレーナー、エディ・レイノソ氏、ロサンゼルスで「ワイルドカード・ジム」を運営する殿堂入り名将フレディ・ローチ氏に弟子入りした。しかしいずれも長続きせず、ラミレス氏の下に戻って来た経過がある。新人当時、ネリの生活を陰ひなたで支えたこともある同氏は「悪童」と呼ばれるネリにとってかけがえのない恩人。山中慎介との2戦から6年近くが経過。気心が知れた同氏との二人三脚以外にモンスター攻略の手段はなさそうだ。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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