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サンウルブズ戦を控える南アフリカ代表のスカルク・バーガー、あの敗戦を語る【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
イングランド大会では大会最大のゲイン(守備網の突破)を記録。(写真:ロイター/アフロ)

国際リーグのスーパーラグビーに今季から初参戦する日本のサンウルブズは、現在、シンガポール、南アフリカで4試合をおこなう長期遠征の真っただ中だ。現地時間の4月8日、ケープタウンで第7節をおこなう。

相手のストーマーズにあっては、スカルク・バーガーがナンバーエイトで先発する。南アフリカ代表として86キャップ(国際間の真剣勝負への出場数)を持つ、身長193センチ、体重110キロの32歳だ。昨季まで2年間、日本のサントリーでもプレーしてきた。

サンウルブズはここまで開幕5連敗中。3月26日のブルズとの第5節(シンガポール・ナショナルスタジアム)を27-30とするなど接戦を演じているが、白星を掴めずにいる。

かたやストーマーズは好調をキープし、南アフリカカンファレンスで首位を走っている。主軸のバーガーは代表選手として4年に1度のワールドカップに通算4度、出場し、2回目となる2007年のフランス大会では同国2回目の優勝を経験した。2013年には細菌性髄膜炎のため引退の危機に瀕したが、翌年度に復活した。

2015年のワールドカップイングランド大会では予選プール初戦で日本代表に大会24年ぶりの白星を献上したが、その後にチームを再建した。王座についたニュージーランドに18-20と肉薄するなどし、3位で戦い終えた。その大会を終えて間もない頃に日本でインタビューに応じ、当時の心境を明かしている。

以下、その際の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――ワールドカップのお話を伺いに来ました。

「(笑みを浮かべて)…ノープロブレム」

――あの時の南アフリカ代表は、8月にアルゼンチン代表に敗れるなど開幕前から戸惑っているようでした。

「確かにいい結果は出ていませんでした。皆、自信がないようにも感じました。ただ、それはワールドカップ前までの話です。…日本にも負けたけれど」

――スポーツ史上、稀な番狂わせと言われています。

「私やフーリー(デュプレア、昨季までサントリーでプレー)は日本でプレーしていたので、日本のことはある程度わかっていたつもりでした。ただスプリングボクスは、(サントリー)また違うチーム。私とフーリーは、日本代表を最初から警戒していました。ただ、他のプレーヤーは…」

――国際ラグビーの歴史を鑑みたら、あなたを含めて負けると思った選手はいなかったのでは。

「…はい。負けないだろうという気持ちは最初からありました。例えばオールブラックス(ニュージーランド代表)に対しては気持ちの準備もあるし、知識も十分。ただ、日本に対する知識があるのは僕とフーリーだけ。その違いは大きい。選手の経験不足もありましたよね(日本代表戦には初のワールドカップとなる選手も何人か先発)」

――試合中は。

「前半が終わって、あ、このゲームはタフになるかもしれないと皆が認識し始めました。ただ後半になると、南アフリカ代表に反則とミスがあって、ナーバスになってきた」

――反則の多くは、タックラーが接点から展退できないノットロールアウェー。日本代表のサポートの選手が、南アフリカ代表のタックラーを押さえつけていました。よく、南アフリカ代表選手の(タックルした後の立ち上がりがやや遅いなどの)特性を研究していました。

「日本代表は、僕たちとの試合に対して6ヶ月もの準備をしてきた。僕たちは日本に対して、それほどのことはしていなかった」

――日本代表の低いタックルにも手を焼きました。

「スーパーラグビーでは(足元へ突き刺さる)レッグタックルをするチームは、1つか2つしかない。ジャパンは効果的な低いタックルをしてきた」

――ラストワンプレー。スクラムを起点に、逆転トライを決められます。

「(南アフリカ代表に一時退場処分が出て、フォワードは)7対8だった。相手にとってはいい選択だと思いました」

――負けてわかったこととは。

「もう1回自分たちの責任を果たそう、自分たちの仕事をクリアにしよう、となった。ゲームプランも明確にした。すごいプレッシャーがあったので、それをするのは簡単ではありませんでしたが」

――プレッシャー、とは。

「南アフリカはそこらじゅうの人がラグビーをしている。スプリングボクスを皆、愛している。スプリングボクスは経済効果も含めて重要な位置づけだったのに、負けたことで本当に失望した。特に、日本代表に負けたことで。選手も監督も辞めさせろ、という声がありました。それでも、皆がいいプレーをしようとまとまっていました」

――よく崩壊しなかった。

「あの日のスコアボードを観た後に、メンタリティーが変わったのです。気持ちの準備が変わったのです。負けたことへの気持ちは色々あって、ワールドカップの決勝でジャパンと…とも考えたけど、それにこだわっても仕方がない。今度のスーパーラグビー。ストーマーズはサンウルブズに挑戦するチャンスもあります。日本ラグビーに挑戦する、いいチャンスです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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