論文の自己盗用で…
Astrophysical Journal(天体物理学雑誌)に掲載された一つの論文が撤回されることになった。
アメリカ天文学会のホームページに撤回理由が書かれている。
いくら著者のひとりが書いた学会発表の資料といえど、引用したことを明示しなかったことから、この論文は盗用とされ、撤回されることになった。
盗用は捏造、改ざんと並んで最も行ってはならない研究不正とされている。日本では特定不正行為とされ、いわば「即アウト」だ。
なぜ他人ではない自分の過去の資料を引用するのが盗用なのか。
天才少年の蹉跌
撤回されたこの論文の著者は韓国人のソン・ユグン氏(科学技術連合大学院大(UST)大学院生)と、ソン氏の指導者であるパク・ソクチェ韓国天文研究院研究委員。
ここまでは、言ってしまえば「ありふれた」研究不正事件だが、韓国ではこの事件が大きな話題になっている。というのも、ソン・ユグン氏はなんと17歳、韓国では「天才少年」として有名だったからだ。
先週、ソン氏が韓国史上最年少の博士となると報道されていたこともあり、韓国では大きく報道されている。
ソン氏の「最年少博士」は、論文の撤回により要件を満たせなくなったことよりお預けとなった。
著者にもなっている指導者の学会発表資料からの自己引用であり、ソン氏の「天才性」とは関係ないのかもしれないが、ルール違反であり言い訳はできない。
揺れる韓国学術界
この事件が明らかになる直前、別の事件が明らかになっていた。
ほぼ同時期に明らかになった二つの事件で、韓国の学術界は強い批判にさらされている。
他人事ではない
こうした事態は、決して他人事ではない。
ご存じのように、日本国内でも、多くの研究不正事件が発生している。昨年世間を騒がせたSTAP細胞事件、STAP細胞事件よりも大規模かつ悪質(その割には報道量が少ない)な東大分子細胞生物学研究所加藤茂明教授の事件、172本もの論文に不正を行った東邦大学の事件など、知られているものだけでも多数ある。
日本人が出した論文の画像加工を疑わせる率は、平均より高いという指摘もある。
小保方晴子氏に責任を押し付け、嵐が過ぎ去るのを待っている研究者は多いと思うが、研究不正が起こる構造はまだそれほど変わっていない。隣国での研究不正事件は、日本の研究者にも警鐘を鳴らしていると言えよう。