「Windows依存」から脱却図るマイクロソフト、ソフトやサービスAndroidとiPhoneに提供
米マイクロソフトのWindows Phoneには、「コルタナ(Cortana)」と呼ばれる音声アシスタント機能がある。
英ロイター通信によると、同社は現在、これを米グーグルの「Android」や米アップルの「iOS」で使えるようにする専用アプリを開発しているという。
コルタナは、Windows Phone 8.1で提供されている機能だが、マイクロソフトは次期Windows「Windows 10」にもこれを搭載すると発表している。
ロイター通信によると、マイクロソフトは現在、「アインシュタイン」という研究プロジェクトでコルタナの高機能版を開発しており、今秋をめどにリリースする予定。そしてAndroidやiOS向けのアプリは、Windows 10のリリース後に提供が始まるという。
ナデラCEOで大きく変わるマイクロソフト
もし、ロイターの報道が正しければ、マイクロソフトはサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)が就任以来掲げてきたWindowsに固執しない経営戦略をまた1つ推し進めることになると、米シーネットの記事は伝えている。
スマートフォンをはじめとするモバイル端末の普及が進む中、マイクロソフトが今後長期的に生き残るためには、パソコンのOSやソフトウエア、サービスに大きく依存しない収益モデルが必要になる。
そうした中、マイクロソフトのモバイルOSであるWindows Phoneの世界シェアは、わずか数パーセントにとどまっている。
「オフィス」をiPhoneやAndroidに
そこで、ナデラCEOは、「モバイル第一」を経営戦略に掲げ、同社ソフトウエアやサービスを他社のモバイルプラットフォームに提供する方針を打ち出している。
その第1弾が、業務ソフトの「オフィス」だった。
同社はすでにiPhoneやiPad、Android向けのオフィスアプリを提供しており、先頃はiOS向けOfficeアプリからアップルの「iCloud」など、他社クラウドサービスを利用できる機能の提供も始めた。シーネットによると、これは自社OSに依存してきたスティーブ・バルマー前CEO時代の戦略とは大きく異なる。
ナデラCEOの戦略にとって他社OSへの対応は必要不可欠だという。他社OSのユーザーに自社のソフトウエアを使ってもらうことが、ビジネスの拡大につながると同氏は見ており、同社はかつてのようにユーザーにWindows上で動くソフトウエアを使うよう強制はしないと、ロイターは伝えている。
目指すのは人工知能
シーネットの報道によると、マイクロソフトのコルタナはアップルの音声アシスタント「シリ(Siri)」に対抗して開発されたパーソナルアシスタントだが、その機能は一歩先を進んでいる。
例えば、アップルのシリが、ユーザーの質問に答えたり、要望に応えたりすることを主な機能としているのに対し、マイクロソフトは前述の「アインシュタイン」プロジェクトで人口知能(AI)のような機能を目指している。
コルタナでは、あらかじめ電子メールの内容を読み、ユーザーが航空機で旅行する予定であることを把握する。
当日はそのフライト情報を調べ、GPSの位置情報からユーザーの居場所を確認。空港までの渋滞情報も調べ、家を出発する時刻をユーザーに告げる。こうしたことが日常可能になる世界をマイクロソフトは描いているという。
ロイターによると、マイクロソフト研究部門のマネージングディレクタである、エリック・ホロビッツ氏はインタビューで、「電子メールを読み、その内容を理解することのできるこの種の技術は、次期コルタナの中心的役割を果たす」と話している。
(JBpress:2015年3月17日号に掲載)