アメリカ食材、料理コンクールでアジアへ羽ばたく
アメリカからの上陸
アメリカのグルメが今、日本を席巻しています。昨年から今年まで、上陸したものから未上陸のものまで含めると、以下の通りです。
- 2015/01/17 ゴリラコーヒー(ニューヨーク)
- 2015/01/29 JJハワイ(ハワイ)
- 2015/02/06 ブルーボトルコーヒー(カリフォルニア)
- 2015/04/21 タコベル(カリフォルニア)
- 2015/04/17 カムデンズ ブルー☆ドーナツ(ポートランド)
- 2015/04/28 ルークス(ニューヨーク)
- 2015/05/20 アロハコーヒーラボ(ハワイ)
- 2015/05/26 コーヒービーン&ティーリーフ(ロサンゼルス)
- 2015/06/20 ドミニクアンセルベーカリー(ニューヨーク)
- 2015/06/25 ポップバー(ニューヨーク)
- 2015/07/19 ベアバーガー(ニューヨーク)
- 2015/07/24 ジョバンニーズ(ハワイ)
- 2015/08/06 ハニーベイクド・ハム
- 2015/09/08 ファームショップ(カリフォルニア)
- 2015/10/16 キッピーズココクリーム(カリフォルニア)
- 2015/11/13 シェイク シャック(ニューヨーク)
- 2016/02/11 ダンデライオンチョコレート(サンフランシスコ)
- 2016/03/04 カールスジュニア(カリフォルニア)
- 2016年春 800 デグリーズ ナポリタン ピッツェリア(ロサンゼルス)
これだけ多く、しかも、注目されているグルメがアメリカから日本へと上陸しています。アメリカの食が進化していて、アメリカンキュイジーヌが評価されていることに加えて、日本では既にフランスやイタリアなどヨーロッパのグルメが飽和していて、ハワイやニューヨークといったアメリカのグルメがまだ目新しく感じられることが要因でしょう。
アメリカの食材も注目
トウモロコシ、小麦、大豆などはその輸入総量の半分以上をアメリカから輸入していることはよく知られていることであり、2015年における農林水産物の輸入額も1位となっていますが、アメリカの食材のクオリティは年々上がっています。それと平行するようにして、アメリカ大使館も日本への輸出に力を入れており、2013年には第1回目となる「United Tastes of America アジア大会 ~美味なるアメリカ~ プロのための料理コンクール」を開催したのです。
食材のよさを広めるには、それを調理する料理人にまず理解してもらうことが重要であり、そこからその食材を使ったおいしい料理を作ってもらうことが大切となります。これを促進するには料理コンクールを行うことが最も効果的です。何故ならば、料理人は常に料理コンクールによる箔付けを欲しており、食材提供者は影響力のある料理人に使ってもらうことによって食材をPRしたいからです。
第1回の東京大会で優勝し、アジア大会でも準優勝に輝いたのが、ミシュランガイド1つ星を獲得している「ジャン・ジョルジュ東京」のシェフである米澤文雄氏でした。米澤氏は気鋭の料理人として評価されており、「【クッキングコンクールの今】独学者 杉本敬三氏が優勝した「RED U-35」は何が新しいのか?」でも紹介した35歳以下の若手料理人だけが参加できるRED U-35の2015年の大会でもゴールドエッグに輝いています。実力派の米澤氏が参加して優勝したことによって「United Tastes of America」は注目され、先に行われた2016年大会も世間の耳目を集めることとなったのです。そして、アメリカの食材に興味があった私も審査員として参加しました。
多岐に渡るアメリカ食材
アメリカ大使館が関係しているだけあって、今大会で使用されているアメリカ食材は以下のように幅広いです。牛肉、豚肉から、タラ、米、チーズに野菜、ナッツやドライフルーツが名を連ねています。
- アメリカン・ビーフ(米国食肉輸出連合会)
- アメリカン・ポーク(米国食肉輸出連合会)
- アラスカ産真だら(アラスカシーフードマーケティング協会)
- カリフォルニア産米 「カルローズ」(米国ライス連合会)
- コルビージャックチーズ(アメリカ乳製品輸出協会)
- クリームチーズ(カリフォルニアミルクアドバイザリーボード(CMAB))
- ひよこ豆(ドライビーン・カウンシル)
- 豆乳(アメリカ大豆協会)
- アーモンドミルク(砂糖不使用)(ブルーダイヤモンド・アーモンド・グロワーズ)
- 玉ねぎ(オレゴン州農務局)
- ケール(カリフォルニア州農産物貿易協会)
- サンキスト レモン(サンキスト)
- 刻みピーナッツ(アメリカン・ピーナッツ協会)
- カリフォルニア産くるみ LHP(ライト・ハーフ&ピース)(カリフォルニア くるみ協会)
- いちじく(カリフォルニアフィグアドバイザリーボード)
- カリフォルニア産プルーン(ドライ)(カリフォルニア プルーン協会)
- カリフォルニア産レーズン(カリフォルニア・レーズン協会)
- カリフォルニア産オリーブオイル(カリフォルニアオリーブオイル協会)
コンクールのテーマはこちらです。アメリカならではの多様性を包容しつつも、アメリカの食文化に対する認知を広めようということが狙いとなっています。
「美味なるアメリカ」
アメリカン・キュイジーヌ(アメリカ料理)は、多種多様な農産物と、移民国家としての歴史が育んだ食文化の融合から生まれた、自由な発想で創作される料理です。
「豊かな風土」「多様な文化」「様々な人種」を背景に、広大な土地から育んだ豊富なアメリカ食材に対する理解を深め、自由な発想で考案するオリジナルレシピと、自らの技術を最大限揮った料理、それこそが「United Tastes of America~美味なるアメリカ~」なのです。
レギュレーション
レギュレーションは以下の通りでした。
世界的スターシェフへステップアップのチャンス!
本コンクールでは「世界基準のスターシェフ」を目指すプロフェッショナルを対象に、主催者が指定した、アメリカから日本に輸入されている新鮮で上質な食材を使って「最高の食事」を考案、調理いただきます。東京大会では、書類選考で選ばれた10チームが料理の味と独創性を競います。グランプリを獲得したシェフは、日本代表としてアジア大会に臨みます。これにより、アジア各国のシェフ同士の国際交流を実現し、国際的な感覚を身に付けた、世界で活躍する料理人の育成に役立てたいと考えています。
東京大会の優勝者は、毎年9月に米国・ポートランドで開催される全米注目のフードフェスティバル「フィースト・ポートランド」視察旅行への招待など、世界への新たな道が開けています。
指定食材を使ったコース料理(前菜、スープ、アントレ、デザート)を作り、それぞれの料理に対して、味、見た目、創造性、調理技術が採点されます。コース料理のコンクールは1品だけのコンクールよりもずっと本格的です。1品だけのコンクールであれば、その皿の中だけで完結することを考えればよいですが、コース料理となれば全体のバランス感やストーリー性も重要となってくるので、難易度は高まります。今回は2人1組のチーム構成ですが、料理だけではなくデザートも作る必要があるので、料理人と料理人で組むのか、料理人とパティシエで組むのかによっても、戦略は違ってくるところが興味深いところでしょう。
東京ディズニーランドホテルが優勝
コンクールで入賞したのは以下のチームでした。
第1位
東京ディズニーランドホテル
レストラン「カンナ」
(千葉県浦安市)
小柏 進/永野伸二 チーム
第2位
リーガロイヤルホテル
レストラン シャンボール
(大阪市北区)
村上智彦/永井尚樹 チーム
第3位
富士屋ホテル
(神奈川県箱根町)
大野年治/八木下博之 チーム
優勝した東京ディズニーランドホテルのメニューは以下の通りです。
- ニュースタイルウェッジサラダ スモーキーペッパーポークテンダーとクリーミーケールサンキストレモンのゼリーをアクセントに
- タイムの香るアーモンドミルクのチャウダースープ アラスカ産真鱈とカルローズ米のワッフルを添えて
- アメリカ産リブアイロールのワサビクラスト レッドワインの香るローストオニオンのソース ルッコラと味噌のディップ
- スフレショコラ・スモアとキャラメリゼしたひよこ豆とオレンジのクーリ シナモンの香るジェラート ドライフルーツと胡桃のコンポート
上記コースは、どの皿もアメリカの食材を中心に組み立てられているのは当然のことですが、サラダにポークテンダーを加えたアメリカらしい力強い前菜から始まり、見た目も独創的なカルローズ米のワッフルをスープに浮かべて驚きを創出し、ワサビクラストに味噌のディップと和の要素も取り入れたアントレで日本代表らしさをアピールし、最後は流行のスモアを使ったデザートで軽やかに締めくくるという流れで、全体的にアメリカ食材の潜在能力を引き出した流れとなったことが評価されました。
また、小柏進氏と永野伸二氏は共に料理人ですが、料理3品とデザート1品というコース構成なので、料理人2人で組んだ方が全体の得点を底上げできていたのでしょう。
東京大会からアジア大会へ
東京ディズニーランドホテルのチームは東京大会で優勝した後、2016年3月23日に東京で開催されるアジア大会で、広州、香港、台北、ソウルから勝ち抜いたシェフチームと対決しますが、アジアにおいて食を評価されているこれらの地域で、アメリカ食材を用いた大会が開催されることは非常に面白味があります。
アジア大会が開催されるこの3月23日は、料理家・美食家でもある北大路魯山人氏が生まれた日であり、辛口で有名な北大路氏は「アメリカの牛豚」で、いつもの通り、アメリカの牛や豚に対しても厳しい評価を下しているわけですが、しかしながら、それから60年以上を経た今では時代が全く変わっており、アメリカ大使館も本腰を入れ、アメリカの食材やグルメが世界から注目を浴びていることは周知の事実であり、もしも氏が存命しており、アメリカの食材を使った料理やデザートに対し評価を下すのであれば、今度はどういったものになるのだろうと、審査員席の末席にいた私は密やかに想像を巡らせるのです。
公式サイト
第2回 United Tastes of America 東京大会
参考
レストラン図鑑に元記事があります。