【仙台市若林区】繊細なタッチで緻密に描かれた「ツナミプラント」たち。企画展「ここに根をはる」リポート
仙台市宮城野区・若林区を愛する号外NETライターの長谷川誠です。
東日本大震災からの復興。10年ひと昔…。12年が経過した今、折に触れて忘れてはならない記憶として意識したり、防災意識を新たにすることはあるものの、忙しくも平和な日常に身を任せていると、ついつい頭の中から抜け落ちてしまうことがあります。
それは私自身被災者だとはいえ、幸いないことに、本当に幸いなことに、愛する誰かをそして我が家や生まれ育った土地を失うという、言葉にできないような絶望と欠落感を経験せずに済んだからかもしれません。
今回ご紹介するのは、2023年7月16日まで「せんだい3.11メモリアル交流館」にて開催されている企画展「ここに根をはる」。
まだまだ復興の道すがらにある場所が多くあるにも関わらず、ついつい復興についての意識が薄くなりがちな私が、復(ふく:ふたたび、また)興(こう:さかんになる)について植物達から学ばせてもらった企画展です。
企画展「ここに根をはる」
第40回全国都市緑化仙台フェアと連動する形で開催されている、倉科光子さんの手による「津波浸水域に芽生えた植物」たちの水彩画が鑑賞できる展覧会です。
会場はこちら、地下鉄東西線の荒井駅に併設されている「せんだい3.11メモリアル交流館」。普段から3.11の記録や地域の復興の様子を伝え続けてくれている施設です。
企画展はこちらの2階。階段かエレベーターで上がります。
2階へ上がると、まず目につくのはこちら。
若林区近隣のエリアが描かれた地図に沢山の付箋が貼ってあります。
こちらは仙台市東部沿岸地域の様々な年代の方の「個人の思い出」が書かれた付箋を元に、イラストレーターの佐藤ジュンコさんが「土地の思い出」をイラスト化してくれた地図。
復興が続く仙台市東部沿岸部への「記憶」や「思い」が伝わってくる素敵な展示です。
そして、こちらが企画展の会場となる2階展示室の入口。
ちなみに展示室は、企画展以外に常設展示のコーナーがあります。
常設展示は東日本大震災に関する数々の記録。
そして被災地域の歴史について知ることができるものです。こちらの企画展に来られた際には、この常設展示から見るとより一層理解が深まるかもしれません。
奥へと進むと企画展示コーナー。こちらで「ここに根をはる」が開催されています。
会場の入口脇には、展示されている作品についての解説資料と作者である倉科光子さんからのメッセージがありました。
倉科さんが「ツナミプラント」と名付け、津波の浸水域に生えてくる植物たちを描き続けている「思い」。
そして津波後の風景を再生させてくれる、まさに「復興」とでも言いたくなるような、小さな植物たちの「逞しさ」と「命の輝き」。このメッセージを噛みしめながら作品を鑑賞させていただきましょう。
ちなみにこちらは展示作品に関する解説資料。会場には全部で15もの作品が展示されています。
全て場所と時期が異なる「ツナミプラント」を描いた作品です。それではいざ、作品の鑑賞へ。
展示されている作品は、写真かと見間違えてしまうほど、水面への光の反射まで繊細に描き込まれたものから
小さいながらもギュッと群れを成し、植物の力強さを感じさせてくれるものまで。
繊細なタッチで、植物の毛まで細かく描き込まれた数々の作品を見ることができます。
これらはあくまで展示作品の一部。他にも植物達の力強さや美しさを感じる作品が多く展示されていますので、是非皆さんの目で確かめてみて下さい。
また、会場内では倉科さんの実際の作品制作過程を見ることができるVTRも流されています。絵心のない私、ついついその緻密な書き込み具合に見とれてしまいました。
いかがでしたでしょうか。数々の「ツナミプラント」たちの美しくも逞しい姿を、倉科さんの素晴らしい水彩画で見ることができる企画展「ここに根をはる」。描かれた植物達が当たり前のように芽吹き、世代交代をしてゆく様を思うと「復興とは何か」を改めて考えさせられる機会になりました。
繰り返しになりますが、開催期間は2023年7月16日(日)まで。
皆さんも是非足を運び、ご自身の目で鑑賞してみて下さいね。
●せんだい3.11メモリアル交流館●
〒984-0032 宮城県仙台市若林区荒井字沓形85−4