18歳で「100億円の価値ある選手」とされるバレンシアの韓国人イ・ガンインとは?
ベルギーのゲンクに移籍した伊東純也が新天地デビューしたUEFAヨーロッパリーグ・ラウンド32で、韓国人選手もデビューした。スペインはバレンシアで行われたバレンシア対セルティックのUEFAヨーロッパリーグ・ラウンド32の第2レグに出場したイ・ガンインがそのひとだ。
バレンシアの背番号16をつけたイ・ガンインは後半31分分から途中出場。ゴールこそ決められなかったものの、若干18歳の若さでELデビューしたのだから大したものだ。韓国メディアも、「イ・ガンイン、ELで成功的なデビュー」(『ニューシス』)、「ELデビューのイ・ガンイン、韓国人欧州対抗戦最年少記録を更新」(『スポーツソウル』)と一斉に報じている。
そもそもイ・ガンインはかなり以前から韓国で注目されていた。それも2,3年前のことではない。今から12年前、つまりまだ6歳にしてイ・ガンインは韓国でちょっとした有名人だった。
当時の愛称は“シユットリ”。シユットリとは1990年代後半に韓国で流行し、その人気は日本の『キャプテン翼』を凌ぐほどとも言われた『蹴球王シュットリ』のこと。韓国代表やKリーガーの中にも「シュットリを見て育った」という選手は多く、まさに韓国版『キャプ翼』のような存在だ。
(参考記事:韓国では『キャプテン翼』を凌ぐ人気サッカー漫画『シュットリ』の真実とは?)
そのシユットリの名を冠したサッカーバラエティ番組『ナルララ(はばたけ)シユットリ』に、当時6歳だったイ・ガンインが出演。『ナルララ・シュットリ』は、サッカー選手を目指す未就学児を集めてその成長過程を追うバラエティ番組で、あのユ・サンチョルがコーチ役を務めていたのだが、イ・ガンインはそこで “サッカー神童” として脚光を浴びた。
就学後はKリーグの仁川ユナイテッドの下部組織に属し、2010年にはパク・チソンとテレビCMで共演。多くのサッカーファンから「シユットリ」の愛称で親しまれていた。
そんなチビッ子が2011年7月にバレンシア下部組織の入団テストに合格したというニュースは、当時大きな話題にもなった。まだ10歳だったイ・ガンインがバレンシアのテストを受けたのは、当時韓国の小学生レベルで流行していたスペイン遠征も無関係ではないだろう。
バルサ下部出身のイ・スンウやペク・スンホ、チャン・ギョルヒなどがそうだったように、イ・ガンインもスペインサッカー界に人脈を持つスポーツマネージメント会社の紹介でいくつかのクラブのテストを受け、見事合格したのがバレンシアだった。
(参考記事:欧州トップリーグでプレー!! “韓国のメッシ”だけじゃない「注目株」10人を一挙紹介)
そしてそのバレンシアでイ・ガンインは順調に成長していった。
2013年には当時トッテナムでプレーしていたロベルト・ソルダードが、イ・ガンインのプレー映像をツイッターにアップして話題になり、その年の6月にはバレンシアと6年契約。
16歳になった2017年6月にはその契約を2022年6月まで延長。この頃、レアル・マドリードも興味を示しており、一部メディアでは8000万ユーロ(約100億円)の市場価値がある」と報じられたほどだった。
そして昨年10月のスペイン国王杯のCDエブロ戦で、ついにバレンシアの1軍デビュー。17歳253日でのデビューはバレンシアの歴代外国人史上最年少で、韓国サッカー界にとっても欧州デビュー史上最年少記録となった。
年が明けた1月13日のバヤドリード戦ではスペイン1部リーグ・デビューも達成。イ・チョンスやパク・チュホなどに続く韓国サッカー界史上5番目のプリメラリーガとなり、1月27日にはバレンシアとトップチーム登録され背番号16を授かった。
ただ、それだけに最近は何かとニュースになる。先日もスペイン国王杯での試合で相手チームのサポーターから人種差別的な扱いを受けたと報じられて、韓国でちょっとした話題になった。
(参考記事:イ・ガンインも「人種差別」を受けた…バレンシアが柴崎属するヘタフェに抗議した理由)
昨今、韓国では10代で欧州デビューする選手が増えている。昨季はイ・スンウやペク・スンホがそうたったが、今季はバイエルン・ミュンヘンでUEFAチャンピオンズリーグのデビューも果たしたチョン・ウヨンのように、いきなり大舞台でトップチーム・デビューを果たす選手も出てきた。
そんな若くて才能がある10代にメディアやファンが期待や関心を寄せたくなるのは当然だが、だからこそアジア人欧州進出の成功例にして韓国サッカー界のレジェンドであるパク・チソンは語っている。
「韓国ファンの期待も高まっているのはわかる。しかし才能のある選手たちだからこそ、今の姿をどれだけうまく維持するかのほうが大切だ」と。
(参考記事:欧州でプレーする韓国サッカーの「若き逸材」に呈した、パク・チソンの“苦言”とは?)
パク・チソンよりも早く、ソン・フンミンよりも若く大舞台にデビューしたイ・ガンイン。今後の成長と活躍に注目したい。