世界のスマートスピーカーやAR・VRの市場規模実情をさぐる(2023年公開版)
新技術を用いた新しい商品として注目を集めているスマートスピーカーや、ARやVRと呼ばれる疑似現実技術による商品。その市場規模の実情を、総務省が2023年7月に公開した、2023年版となる最新の「情報通信白書」の内容から確認する。
最初に示すのは、世界のスマートスピーカーの市場規模。2022年までが確定値で2023年以降は予想値。データの一次ソースはイギリスに本社を置く情報事業の多国籍企業Informa社のハイテク関連産業調査部門Omdiaとなっている。今件はあくまでも市場規模≒出荷台数で、該当年に出荷された台数であり、その時点で利用されている台数ではないことに注意。
収録データは2016年以降のみだが、IT系企業の大手がこぞって展開を始めたのは2014年のアマゾンによる「Amazon Echo」がきっかけ。現在ではアマゾン以外にグーグル、アップル、マイクロソフト、ソニー、LINEなどがそれぞれ独自のスマートスピーカーを展開している。単純に利便性の提供だけでなく、利用者の生活の囲い込みをすることで多様なデータの取得、そして経済活動そのものを掌握できることから、期待は非常に大きなものと思われる。
2025年における予想値は年間2.6億台。2022年時点の2.2億台からは18%増。あるいはこれすらも、まだ甘い予想かもしれない。
続いてARやVRと呼ばれる疑似現実技術関連市場。似ているようで別物だが、ざっと説明すると次の通り。
・AR…Augmented Reality(拡張現実)
現実世界の情報に仮想情報を加えて反映させていくもの。メインは現実世界の情報。「ポケモンGO」が好例。アニメではARの概念がよく分かるものとして「電脳コイル」が知られている。
・VR…Virtual Reality(仮想現実)
コンピューターなどを用いて疑似的な仮想空間を作り、利用者がその空間に存在しているかのような体験をさせる技術。HMD(Head Mounted Display、ヘッドマウントディスプレイ)が使われることが多い。
ARとVRとではVRの方が利用者ベースでの利用ツールが多くなり支出額が大きくなる(ARは概して利用者がすでに持っている他のデジタルツールでの活用となる)。今件データではARとVRを合わせた市場として実測・予想している。
AR/VRハードウェア出荷台数が2019年にかけて減少する動きを示しているが、これについて白書側ではかつて「VRゲームに多数のベンダーが参入したものの、市場で淘汰が進んだことにより、2019年にかけて出荷台数が減少」と説明していた。もっとも2020年以降は増加に転じ、2025年では2300万台に達すると予想している。VRヘッドセットの出荷台数減少も同様の理由だろう。新型コロナウイルスの流行や、ロシアによるウクライナへの侵略戦争で生じた景気後退や資源価格の高騰によるマイナスの影響を受けず、値を伸ばしているのは注目に値する。
白書ではかつて「消費者向けのエンターテインメント向け以外でも、企業で利用が広がっており、例えば、不動産分野で物件を、旅行分野で旅先を疑似体験するもののほか、他の分野でも訓練や教育、3次元空間でのナビゲーションなどに活用されている」とし、単にエンターテインメント部門だけでなく実用部門でも実績をあげ、今後も領域を拡大していくことが期待できると説明していた。
インターネットやスマートフォンのように一定の普及率を示すことで、その普及を前提とした新たな企画や商品、サービスの参入も容易になり、それは市場の相乗効果的な広がりにつながっていく。市場規模の広がりとともに、どのような世界が展開されるのか、それもまた今後が楽しみな話ではある。
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