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議会中継の「AI字幕表示」スタート 杉並区議会

亀松太郎記者/編集者
杉並区議会のネット中継でAIによる字幕が表示されるようになった(撮影・亀松太郎)

東京都の杉並区議会は、審議の模様を伝えるネット中継で「音声の字幕表示」を始めた。AI(人工知能)の音声認識技術による自動表示で、6月21日まで開催されている第2回定例会から導入された。

聴覚障害者から「うれしい」の声

音声の聞き取りが難しい聴覚障害者が、議会の審議の内容をリアルタイムで確認できるようにするための方策だ。議会事務局の職員は「2023年に杉並区手話言語条例が施行されたことが背景にある」と説明する。

手話通訳の導入も検討したが、議会は長時間に及ぶことがあるため、手話通訳者の負担や費用が大きくなる懸念がある。そこで、「まず、AIによる字幕表示を実施することにした」という。

議会中継の字幕表示に対して、聴覚障害者の団体からは歓迎するコメントが見られた。第2回定例会の初日にあたる6月3日、X(旧Twitter)では、杉並区中途失聴・難聴者の会のアカウントが「杉並区議会、本会議のライブ配信に音声認識字幕が付いています スマホでも見られました!うれしい」と投稿した。

こちらの動画は、第2回定例会の最終日(6月21日)の議案採決のシーンを録画したものだ。ネットのライブ中継では、このように字幕が表示される。

字幕が正しく表示されないケースも

実際にネット中継の字幕を見てみると、大半は正しく表示されていたが、誤った表示も散見された。

AIによる字幕表示は100%正しいわけではない(出典・杉並区議会ライブ中継)
AIによる字幕表示は100%正しいわけではない(出典・杉並区議会ライブ中継)

たとえば、こちらの画面は6月3日の一般質問の様子。1行目の「明示を表す性」は本来、「名字を表す姓」と表示されるべきだ。2行目の「生徒性の多様性」も「性と姓の多様性」と表示されなければいけない。しかし字幕では、誤った表示がされている。

AIによる字幕表示が100%正しいわけでないことは、議会事務局も認めており、ライブ中継の説明ページには、次のような記載がある。

・AI音声認識技術により自動で字幕が生成されるため、誤認識・誤変換が起きることがありますので、あらかじめご了承ください。
・この議会中継(映像、音声及び字幕)は、杉並区議会の公式記録ではありません。

議会事務局の職員は「どのような誤変換が起きるのかについて分析しながら、事前に固有名詞を登録するなどして、変換の精度を上げていきたい」と話している。

記者/編集者

大卒後、朝日新聞記者になるが、3年で退社。法律事務所リサーチャーやJ-CASTニュース記者を経て、ニコニコ動画のドワンゴへ。ニコニコニュース編集長として報道・言論コンテンツを制作した。その後、弁護士ドットコムニュースの編集長として、時事的な話題を法律的な切り口で紹介するニュースを配信。さらに、朝日新聞運営「DANRO」の創刊編集長を務めた後、同社からメディアを買い取って再び編集長となる。2019年4月〜23年3月、関西大学の特任教授(ネットジャーナリズム論)を担当。現在はフリーランスの記者/編集者として活動しつつ、「あしたメディア研究会」を運営。在住する東京都杉並区のニュースを取材している。

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