日本はエネルギー輸入依存度89% 主要国と比べると過度の依存度なのか(2023年公開版)
国を維持するのに必要なエネルギーは地域偏在が生じ、多くの国が互いに不足分を他国から輸入し、余剰分を不足時に備えて蓄積したり他国へ輸出している。その実情を「エネルギー輸入依存度」として確認する。
今件該当データは日本原子力文化財団などが発行している「原子力・エネルギー」図面集の最新版の値を参照する。この値を用い、グラフを作成する。
次のグラフは各国が消費エネルギー全体のうち、どの程度を国外に依存しているかについて図にしたもの。100%なら国内消費エネルギーの100%を海外からの輸入に頼っている計算になる。逆にマイナスの場合は、自国内で生産したエネルギーで国内消費エネルギーのすべてを(原則的に)まかなっており、さらに余った分(マイナスの分)を海外に何らかの形で輸出している計算。
もっともこれらの値は総和。例えばプラスの国(輸入国)が一切エネルギーを国外に輸出していないわけではない。逆にマイナスの国(輸出国)がエネルギーを一切輸入していないはずもない。
原子力発電の場合、燃料の輸入問題はあるが、それを別にすれば備蓄できる燃料の効率の観点から、自国内でエネルギーを生産していると考えることもできる。そこでこのグラフでは原子力発電を含めた場合と、除外した場合の2通りで算出した値をグラフにしている。
イタリアは脱原発政策を貫いているため、「含む」「除く」双方で同じ値を示している。一方、エネルギーの自給自足・自活を(他国に影響されない、政略上の独自基調を裏付けるための)国策としているフランスでは、積極的な原発推進をしている。その関係で、含む・除くの差が非常に大きなものとなっている。原子力を自国算出エネルギーと換算すればフランスでは4割台を自活できているが、そうでない場合は日本とほぼ同じレベルの輸入依存度となる。
それらの特異的な動向を除けば、グラフの左から順に、日本、韓国、イタリア、ドイツまでがエネルギー輸入大国、フランス、インド、イギリス、中国までが輸入小国(「原子力含む」の値で50%以上か否かで判断)、アメリカ合衆国はエネルギーに関してはほぼトントン、そしてブラジル、カナダ、ロシアが輸出国であるのが分かる。
意外に思えるのが「カナダがエネルギー輸出国」であること。これは同国では石油が採掘できるだけでなく、各種自然に恵まれており、水力発電が極めて盛んなのが要因。自国内の電力料金も安めで、他国に輸出できる余裕すらある(もちろん無駄使いをしているわけではない)。
整数値までの公開値のためぶれが大きいが、年単位での変移の概要を計算したのが次のグラフ。国の並びは上のグラフと揃えてある。
2%幅以内は誤差の範囲と見ると、ロシアがプラス、イタリアとインドとイギリスとブラジル、カナダがマイナスとの動きが確認できる。対外戦略上は当然国内だけでエネルギーをまかなえる=輸入依存度が低い方がよい(海外の思惑に翻弄されることなく、国内の経済政策が行える)ので、プラス、イタリアとインドとイギリスとブラジル、カナダはポジティブにエネルギー状況が変化したことになる。もっともこれが、景気動向に伴うもの(景気悪化≒エネルギー消費量減少≒輸入依存度減少(国内算出分でまかなえる))の場合には、一概に「マイナス=よいこと」とは言い切れない。恐らく2020年は、新型コロナウイルスの流行による経済低迷が影響し、多くの国でマイナスとなったのだろう。
また、日本にスポットライトを当ててみると、少資源国であるがため、エネルギーの多くを輸入に頼っている現状が改めて認識できる(例えば石油の場合、国内産出量はごくわずかに過ぎない)。輸入でエネルギーが十分に、安定した状態で確保されている状況に慣れていると、それが当たり前のものとして認識し、忘却し、大切さを忘れてしまう。しかし実際には多くの人の手によってその「気がつかない当たり前」が支えられている。インフラとは、かくも地味で、そして大切なものであることを忘れてはならない。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
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