バルサが決定力を取り戻した理由。オーバメヤンの獲得とダービッツの記憶。
混沌の日々から、抜け出そうとしている。
バルセロナは現在、リーガエスパニョーラで暫定4位に位置している。リーガ第30節ではセビージャとの上位対決を控えており、1試合未消化のバルセロナは2位に浮上する可能性を十分残している。
今季、バルセロナはロナルド・クーマン前監督の下で好スタートを切れなかった。リオネル・メッシやアントワーヌ・グリーズマンら主力選手が抜けて、チームの弱体化は避けられなかった。リーガでの順位を落として欧州カップ戦出場圏内から外れ、クーマン前監督が解任された。
そしてシャビ・エルナンデス監督が招聘された。新監督の課題のひとつは、決定力の回復だった。
メンフィス・デパイ、ルーク・デ・ヨング、セルヒオ・アグエロと複数のストライカーをこの夏の移籍市場で獲得していたバルセロナだが、新戦力は期待されていたような活躍を見せられなかった。アグエロに関しては、心臓の問題でシーズン途中に現役引退を強いられた。
そこで、バルセロナは冬の移籍市場で補強に動いた。フェラン・トーレス、ダニ・アウベス、アダマ・トラオレといった選手を獲得。なかでも、決定力アップに貢献しているのがピエール・エメリク・オーバメヤンだ。
■スアレスの残した穴
バルセロナは今冬の移籍市場で初めてオーバメヤンに関心を寄せたわけではない。とりわけ、ルイス・スアレスが退団した際、その後釜としてオーバメヤンの獲得が真剣に検討されていた。
スアレスは2014年夏にリヴァプールからバルセロナに移籍して以降、持ち前の決定力で幾度となくチームを救った。2014年から2017年にかけては、リオネル・メッシ、ネイマールと共に「MSN」と呼ばれる3トップを形成。ネイマールがパリ・サンジェルマンに移籍してからも、メッシの良き相棒であり続けた。
スアレスはバルセロナに在籍した6シーズンで198得点97アシストを記録。メッシやネイマールのためにスペースを空け、ポストワークをこなし、なおかつ数字を残した。文句のつけようのないパフォーマンスだった。
無論、スアレスと同じ役割がオーバメヤンに求められてはいない。
「天からの贈り物のようだ。ポジティブなプレーヤーで、バルセロナの選手たちにすぐに溶け込んだ。チームのアイデアを理解して適応し、プレスをかけ、チャンスをつくり、ゴールを決めてくれている。全員の模範になっている」
「ウィングのパスコースをつくり、2列目の飛び出したサイドバックの上がりを促す。そういったスペースメイクのランニングをしてくれる。オーバメヤンのゴール数に、目がいくかもしれない。しかし、彼はそれ以上のものを与えてくれている」とはシャビ監督のオーバメヤン評だ。
■ダービッツの記憶
思い起こされるのは2003−04シーズンである。
第一次ジョアン・ラポルタ政権で、フランク・ライカールト監督のバルセロナは苦しんでいた。シーズン前半戦終了時、首位に勝点16差で7位に位置していた。
その時、冬の補強が成果を挙げた。大きかったのはエドガー・ダービッツの加入だ。ユヴェントスからレンタル移籍したダービッツが、ラストピースとして嵌った。シャビやフィリップ・コクーと中盤を組み、前線ではロナウジーニョが躍動した。
03−04シーズン、バルセロナは破竹の勢いで追い上げ、リーガを2位でフィニッシュした。優勝こそバレンシアに譲ったものの、次のシーズンに向けて浮上するきっかけになった。
オーバメヤンがスアレスの後釜になるのか、ダービッツの代わりになるのかは分からない。ダービッツの代わりは、オーバメヤンだけではなく、フェラン、アダマ、アウベス、全員で務めることになるかもしれない。
いま、言えるのは、少しずつバルセロナというチームのベースは出来上がっているということだ。今季どこまで行けるかも重要だが、来シーズンに向けての準備という意味では、それは着々と進められている。