CX-60と暮らす|納車1年半の徹底レビュー。熟成を重ねてさらにいい車に。
MAZDA CX-60を購入して1年半が経ちました。
現時点での走行距離は15,000kmあまり、月に1,000km弱くらいのペースで乗っているので平均的な距離感といったところでしょうか。
この1年半、定期点検以外で何度かディーラーに入庫してリコール対応などをやっていただきました。主にソフトウェアアップデートだったのですが、大きいもので言えばリアショックアブソーバーの交換などを経て、現在売られている改良モデルと同じ構成になっています。
ちょうど先日もソフトウェアアップデートをかけてもらい、より一層乗り心地のよい車に仕上がってきました。そこでこの記事では、納車1年半の徹底レビューと題して、2024年7月時点におけるCX-60のインプレッションをお届けします。
購入グレード
CX-60のグレード構成は結構複雑で、パワートレイン別に大きく4種類、その中に細かな内外装の仕立ての違いが数種類ある感じになっています。
その中で僕が購入したのは、XD-HYBRID Premium Modernというグレードです。もろもろオプションや諸費用を入れて、乗り出し価格6,016,177円になりました。今は値上げされてしまったのでもう少し上がります。
十分すぎるパワートレイン
僕が購入したXD-HYBRIDというグレードには、e-SKYACTIV Dというパワートレインが搭載されています。3.3L直列6気筒ディーゼルターボエンジンにモーターを組み合わせたマイルドハイブリッド、という心躍る構成。
254馬力・550 N・mという大トルクエンジンに加え、16.3馬力・153 N・mのモーターが組み合わされています。後輪駆動ベースの四輪駆動というわけです。
数字だけ見てもすごいけれども、実際に乗るとやっぱり凄まじくて。アクセルをちょっと踏むだけで十分すぎるパワーを得ることができるんですよ。
間違ってもベタ踏みすることはまずありません。そんなことするとぶっ飛んでいって危なすぎるので、高速道路の合流などでも6〜7割くらいの開度で十分です。
これだけのパワーがあるので、加速で困るようなシチュエーションは全くありませんでした。ほんと、「十分すぎる」という言葉がぴったりです。
燃費も両立しているのがすごい
特筆すべきは、それでいて21.0 km/Lという燃費を叩き出しているところ。
個人的には燃費は二の次というか、まずは十分な加速が得られて楽しく走れることが重要だと思っています。楽しく走れないと車を運転する意味がないんです。
しかし、上述のとおりe-SKYACTIV Dというシステムはそれを高い次元で得られているのに、燃費まで両立してしまったと。
21.0 km/Lというのはカタログ値だから実際に乗ると違うという意見もあるかもしれません。でも、結論から言うと乖離はほとんどないのですよ。
- WLTCモード燃費 21.0 km/L
- 市街地モード 18.0 km/L
- 郊外モード 21.2 km/L
- 高速道路モード 22.4 km/L
カタログ値は上記のとおりなのですが、実際に乗ってもこれとほとんど同じような数値が出てきます。街乗り中心だと18.0 km/Lというのは、体感的にも違和感ありません。
しかもディーゼルエンジンなので軽油ですからね。燃料タンクは58Lなので、軽油価格140円/Lとすると満タンにしても8,000円ほど。実際は空の状態から満タンにすることはないから、1回の給油で6,000〜7,000円くらいです。これで1,000km近く走れると思うと頼もしすぎる。
自動車税は高いけれども
ただ、自動車税は高いです。現状の税制だと排気量によって課税されるので、3.3Lだと58,000円にもなります。前に乗っていたCX-5のときは45,000円だったので13,000円上がりました。高え…
僕の場合は住宅ローン減税の還付金で家の固定資産税と自動車税を相殺できるので実質ゼロなのですが、そっくりそのまま58,000円を払うと思うと高いですね。
雪道でも安定し信頼できる走行性能
オーナーとしては雪道での走行性能にも触れておきたい。
雪が降りしきる高速道路、がっつり積もったスキー場近くの道、凍結していそうな橋の上など、いろんな状況の雪道を走りました。どの状況でも動作が不安定になるようなこともなく、CX-60の四輪駆動システムには全幅の信頼を寄せています。
もちろんスタッドレスタイヤを履いていますが、全然滑らないからすごい。ヒヤッとする場面には一度も遭遇しませんでした。
目を釘付けにする伸びやかなエクステリア
後輪駆動ベースということで、誰もが目を釘付けにする伸びやかなエクステリアに仕上がっています。
前輪を前に出してプレミアムレングスを確保し伸びやかなスタイルとした上で、ドアパネル付近はシンプルかつ流麗な造形になっています。そしてリアフェンダーは盛り上がらせ、テールの抑揚に満ちた造形に繋げていく。
ヨーロッパをターゲットにしているだけあって、BMWやメルセデスと同じような価値観でデザインされていることが見て取れます。そしてそれがとても美しいし、ここまで徹底的に伸びやかさを追求した日本車は他にないのではないでしょうか。
レビュー記事を書くたびに言っている気がするけれど、斜め後ろから見たときの筋肉質な形が好きなんですよ。フロントフェンダーにある "INLINE 6" の加飾によって伸びやかさがより強調され、この車の価値をまたひとつ上に押し上げているように感じます。
また、新色「ロジウムホワイトプレミアムメタリック」もとてもいい色です。光が当たるとより白く、暗いところはシルバーのようになってメリハリが出るから、流麗で抑揚の効いた造形を引き立ててくれます。
要するに、オーナーとしてはめちゃめちゃ満足しているということです。このスタイリングが好きすぎてCX-60を購入したし、購入後も噛み締めるたびに味が出るような、奥深いエクステリアだと思っています。
美しいインテリアに包まれて優雅に遠出できる
僕が購入したPremium Modernという最上級グレードは、その内装が特徴的なんです。
日本の美を追究したファブリック素材の仕立ては目を見張るものがあります。ドアを開けたときに白基調の優しい色合いが目に飛び込んできて、最初はかなりインパクトありました。さすがに見慣れてしまった今では驚きはないけど、相変わらず質の高いインテリアだと思いますね。
そして、このような質の高いインテリアが嫌味なく、そして優しさを持って広がっている雰囲気が大好きで、Premium Modernを買ってよかったと思っています。センターコンソールやドアトリムには本物の木(メープルウッド)が使われていて、これが優しい雰囲気を醸し出してくれているのです。
この美しいインテリアに囲まれてドライブするのが本当に心地よいし、優雅な気分でどこまででも遠出することができます。
質の高いシートやステアリングは顔認証で自動調整
また、白いナッパレザーのシートは手触りもよく、シートの構造も長時間座っていても全然疲れないものになっているので、遠出のときも安心です。もちろんシートヒーターやベンチレーションもあって、空調と合わせて自動でオンオフしてくれる機能も搭載されています。
運転席のシートは「ドライバー・パーソナライゼーション・システム」に対応していて、顔認証で自動的にシートやステアリングの位置を調整してくれます。正しい使い方をすれば百発百中で、認証精度は全く問題ありません。
正しい使い方とは、「乗り込んでドアを閉め、エンジン始動前に前方を向いて一呼吸置く」ことです。こうすれば1〜2秒程度でスムーズに認証してくれます。また、エンジン停止時は自動でシートが下がるので乗り降りしやすくなります。
一部のYouTuberに苦言を呈しておきたいのですが、このドライバー・パーソナライゼーション・システムが動作しないというレビューがいくつかみられます。そういう人たちは往々にしてやり方が悪くて、上記の正しい使い方をしていません。iPhoneのFace IDと同じで、きちんと顔を向けないと認証されないのは当然です。
また、本革巻のステアリングは回すと結構重いタイプになっています。僕としては重厚感があって好印象なのですが、重すぎると感じる人もいるかもしれません。ただ、太めのステアリングなので手のひらがしっかりグリップして回しやすいです。
大型センターディスプレイはワイヤレスCarPlayに対応
そして、ダッシュボードには12.3インチのセンターディスプレイが装備されています。このマツダコネクトのシステムは第2世代のもので、Apple CarPlayやAndroid Autoにももちろん対応しています。
iPhoneとはワイヤレスで接続することができ、初期設定さえやっておけばエンジン始動後に自動でCarPlayを表示させることができます。僕は専らこのような運用にしていて、ナビはAppleマップ、音楽はApple MusicやSpotifyという感じ。
ただし、このセンターディスプレイはタッチ操作には対応していません。手元のコマンダーコントロールを使って操作するか、停車中ならiPhoneを直接操作できるので、あまり不便は感じていませんが。
運転しやすいオルガン式アクセルペダルは配置もいい
従来のマツダ車と同じように、CX-60もオルガン式アクセルペダルとなっています。アクセル開度の微調整がとてもやりやすくて、これに慣れたら吊り下げ式の車には戻れないですね。
そして、左右のペダル配置もめちゃめちゃいいです。体の中心線に対して左右対称に足を広げた部分にアクセルペダルやフットレストがあります。遠出しても疲れないのはこういう細かい部分も効いているんですよね。
パノラマサンルーフの開放感すごい
それから、CX-60でマツダ車として初めて採用されたパノラマサンルーフの開放感もすごいです。これPremium Modern / Premium Sportsだったら標準装備ですからね、太っ腹すぎる。
夏の時期はシェードを閉めておくことも多いですが、日差しが強くないときはいつも開けるようにしています。白基調のインテリアと相まって車内がすごく明るくなるし、後席の人からは眺めもいいと評判です。
シェードの開閉はもちろん電動で、ガラス部分の前側半分は開けることができます(これももちろん電動)。換気したいときにも重宝します。
乗り心地もかなりよくなってきた
さて、ここまでCX-60のいいところばかり述べてきましたが、そうでない部分にも切り込んでいきます。むしろこっちが本質であり、CX-60の解決すべき課題でもあります。
納車当初に感じていたのは「期待値と比較して乗り心地がよくない」ということ。
乗り心地とは何と比較するかによると思うけれど、「乗り出し600万円の車と考えたときに、同価格帯の他車と比較するとよくない部分もあった」と言う方が正確かもしれません。
具体的には以下の3点。
- リアの足の硬さ
- トランスミッションの変速ショック・ギクシャク感
- 有車速時のアイドリングストップからの復帰ラグ
そしてこれは、現時点ではかなり改善されたことを強調させてください。この期に及んで最初のイメージで語っている人が多くて辟易するので、オーナーとして世間の認識をアップデートすべく発信する必要があると思っています。
リアの足の硬さ
多くの人が指摘していましたが、確かにリアが硬かった…かも?
個人的には全然気になっていなかったのですが、僕が鈍感なのかたまたま当たりのいい個体を引いたのか分かりません。でも全然気になってなかったのです。
とはいえ、申し出れば最新仕様と同じものに無償で交換していただけるとのことで、リアショックアブソーバーとスタビライザーを対策品に交換してもらいました。確かに乗り心地は変わり、角があった部分がより丸くなった感じ。
ただ、そもそも硬いと言われていたのは、CX-60固有の問題だったのか、それともマツダ車の硬めな味付けゆえだったのか。個人的には後者のような気がしてならないのです。
以前乗っていたCX-5と比べても、先日代車で乗ったMX-30と比べても、硬さという観点では全然変わらないんですよね。それがいいか悪いか・好きか嫌いかは各人で判断すべきだと思うし、いいと思わなければ買わないだけですよ。
硬さというのは乗り心地を形成するひとつの要素に過ぎません。そのため、硬さだけにフォーカスするよりも、乗り心地全体に目を向けてもいいのでは?とも思います。少なくともCX-5から乗り換えたときにはレベルが高すぎてびっくりしたくらいですよ。
その「乗り心地のいい車」の中で比べたときに、硬さが目立つ部分があっただけではないかと。そしてそれはマツダ車特有の味付けだっただけではないかと思うのです。
トランスミッションの変速ショック・ギクシャク感
個人的にはこれが一番の課題だったのですが、結論から言うとソフトウェアアップデートでほとんど解消されました。
CX-60には新開発のトランスミッションが搭載されていますが、納車時は〈1速→2速〉と〈2速→3速〉の変速ショックが大きいと感じていたのです。
何回かディーラーに入庫して、トランスミッション制御ソフトウェアをアップデートすることによって、ほとんど気にならなくなりました。とても滑らかでいい車に乗っている感じがします。
ただ、今の状態まで熟成させた上でリリースすべきだったのでは?とも思います。これだとまるで600万円を払ってベータ版のテストに参加した気分です。ユーザー体験としてはとても悪いものだったので、品質管理をちゃんとやってほしかった。
今はほとんど解消しているので、今から新車で買う分には心配する必要はありません。中古車で買う方は、ちゃんとアップデートされた個体なのか確認することをおすすめします。
有車速時のアイドリングストップからの復帰ラグ
こちらもソフトウェアアップデートで解消しています。
CX-60のマイルドハイブリッドモデルでは、走行中にアクセルを抜いたときにエンジンを止め、モーターだけの走行に切り替わることがあります。この状態をマツダでは「有車速時のアイドリングストップ」と呼ぶようです。
ここから再度アクセルを踏み込むと、エンジンがかかって再加速します。課題だと思っていたのは、このときのエンジン復帰のラグでした。納車1か月時点のレビューでは以下のように書きました。
ラグがあるせいで、アクセルを踏み直した直後は十分な加速感が得られない。だから無意識のうちにもっと強く踏んでしまう。それに対し、エンジンがかかった後はアクセル開度に応じたトルクが出る。そのため、アクセルを踏み直して2秒程度のラグの後、一気に加速してしまいます。これが地味に不快で、分かっていても制御するのが難しいのです。
これに対しても何回かのアップデートが施され、ラグがゼロではないにしても限りなく短くなってきました。そのため、かなり滑らかに走ることができるようになっています。今から新車で買う分には心配する必要はありません。
アイドリングストップからの復帰については課題あり?
ただ、アイドリングストップからの復帰に関しては気になった点がもうひとつ。
先月のことですが、東名高速を走行中に「有車速時のアイドリングストップ」からエンジンが復帰せず、路肩に停車させたことがありました。
さすがにこれは異常だと思ったのでディーラーに見ていただいたところ、他のユーザーからも報告を受けているのでサービスキャンペーンの対象になっていると。(※現在停止中のようです)
このアップデートを適用してもらいましたが、ちゃんと直ったのかどうかは分かりません。今のところ発生していませんが、そもそも稀な現象なので2回目に遭遇していないだけかもしれない。
ディーラーからはおそらく直っているだろうと聞いていますが、引き続き注視します。
最後に
以上、納車1年半時点の徹底レビューをお届けしました。
確かにネガティブな部分もあるけれども、運転していて楽しかったり気持ちが昂ぶったりする部分の方が大きいので、いい車だというのが総評かな。
特に、最新のアップデートを施すとエンジンやトランスミッションの制御がより洗練され、とても滑らかに走ることができる車に仕上がってきました。エンジン再始動時の振動も軽減され、走行中もおそらくモーターをより積極的に使う制御に変更されています。
それでいて、アクセルを踏むと力強くエンジンが唸って大トルクで加速していく。こんなに楽しい車他にある?と思うと同時に、次に買い替える先がないかもしれないと余計な心配をしてしまいます。
僕はそれくらいCX-60の世界観にのめり込んでいるし、それだけの魅力がこの車にはあるということです。これからもどんどん遠出していきますよ。