Meta、AI活用したバーチャルホロコースト教育プログラム開発「何千年にもわたって後世に伝える」
「今後何千年にもわたってホロコーストの経験を伝えていくことができるのはとても素晴らしいことです」
第二次大戦時にナチスドイツが600万人以上のユダヤ人を大量に虐殺したホロコーストだが、そのホロコーストを生き延びることができた生存者たちも高齢化が進んでいき、その数も年々減少している。彼らの多くが現在でも博物館などで若い学生らにホロコースト時代の思い出や経験を語っているが、だんだん体力も記憶も衰えてきている。
現在、世界中の多くのホロコースト博物館、大学、ユダヤ機関がホロコースト生存者らの証言をデジタル化して後世に伝えようとしている。ホロコーストの当時の記憶と経験を自ら証言できる生存者らがいなくなると、「ホロコーストはなかった」という"ホロコースト否定論"と反ユダヤ主義が世界中に蔓延することによって「ホロコーストはなかった」という虚構がいつの間にか事実になってしまいかねない。いわゆる歴史修正主義だ。そのようなことをホロコースト博物館やユダヤ機関は懸念して、ホロコースト生存者が元気なうちに1つでも多くの経験や記憶を語ってもらいデジタル化している。そのようなホロコースト生存者の記憶のデジタル化を通して、後世の人たちにホロコーストを伝えて、反ユダヤ主義と対抗している。いわゆるホロコーストの「記憶のデジタル化」を行っている。そして欧米ではホロコーストの歴史を伝えるためにホロコースト教育が多くの学校で行われている。
そんななか、Meta(旧Facebook)はAI(人工知能)技術を活用したホロコースト教育のプログラムを開発した。その様子を英国のBBCが報道していた。ゴーグルを装着して、バーチャルの世界でホロコースト生存者があたかも目の前にいるように登場して、ホロコースト時代の質問に対してリアルタイムに答えてくれる。「ホロコースト時代をどう過ごしていたの?」などといった学生からの質問にゴーグルの中に登場するホロコースト生存者がリアルタイムに回答してくれる。ホロコーストの生存者が高齢化しても、亡くなってからでも、バーチャルで登場して未来の世代にホロコーストを語り継いでいくことができる。またホロコースト生存者が経験してきた体験をアニメや当時の映像などで回想しながら追体験をすることができる。
ホロコースト生存者でMeta(旧Facebook)が開発したプログラムに登場しているインガ氏は「もう過去の歴史は終わったことです。ホロコーストで殺された人が戻って来ることはありません。でもこのようにAIを活用したデジタルツールで今後何千年にもわたってホロコーストの経験を伝えていくことができるのはとても素晴らしいことです」と語っている。
Meta(旧Facebook)は以前からユネスコやイスラエルのホロコースト国立博物館ヤド・バシェムなどと連携してホロコースト分野でのデジタル化の支援やSNS(Facebook)との連携を積極的に行っている。
このようなデジタル化されたホロコースト生存者らの記憶の証言は歴史学の研究においても、当時の様子を知ることができる貴重なツールでありとても重要である。ホロコースト生存者の記憶のデジタル化はメタが開発したプログラムだけでなく、カリフォルニア大学ショア財団などもホログラムでの生存者とのインタラクティブな対話の技術開発にも積極的である。ショア財団ではホロコーストの生存者の証言だけでなく、少数民族などの虐殺を生き延びることができた人たちの証言を撮影してデジタル化して後世に伝えている。さらにショア財団では2023年10月に武装集団ハマスがイスラエルを攻撃して、武装集団ハマスの人質になった人たちの証言もデジタル化して伝えている。
▼Metaが開発したAIを活用したホロコースト教育プログラムを紹介するBBC