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Cö shu Nie 全国ツアーが仙台からスタート。歌と音が緻密に重なり生まれる“深化”したグルーヴ

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ジー・ミュージック

“終わらない夏休み”――全国ツアー『Cö shu Nie Live Tour 2023-unbreakable summer-』がスタート

Cö shu Nie (コシュニエ)の全国ツアー『Cö shu Nie Live Tour 2023-unbreakable summer-』が9月1日、仙台Rensaでスタートした。

7月にアメリカ・ロサンゼルスで開催された『Anime Expo 2023』に出演、初の海外公演で現地ファンを熱狂の渦に巻き込んだCö shu Nie。さらにパワーアップした姿を見せるのがこのツアーだ。

中村未来(Vocal, Guitar, Keyboard, Manipulator)
中村未来(Vocal, Guitar, Keyboard, Manipulator)

<終わらない夏休みが欲しい>——6月28日に配信リリースした「no future」の一節だ。それが“unbreakable summer”というツアータイトルになっているように、8月31日がずっと続くような、終わらない夏休みを再現したいという思いが込められている。

ステージ上には提灯、客席には浴衣姿のファンも見ることができ、どこか夏祭りのような雰囲気が漂っていたが、一曲目「絶体絶命」から松本駿介のベースが唸り、空気を切り裂く。中村未来(Vocal, Guitar, Keyboard, Manipulator)のボーカルと強靱なリズムがスリリングな高揚感を生み、早くも熱気が満ちていく。

松本の重厚で、感情の深い場所に訴えかけてくるエモーショナルなベースと、中村の強くて繊細な、カリスマ性を湛えたボーカル

松本駿介(B)
松本駿介(B)

「SAKURA BURST」では、Cö shu Nieサウンドの肝のリズム隊、松本の魂を削るような、重厚で感情の深い場所に訴えかけてくるエモーショナルなベース、サポートドラム大津資盛の超絶テクが生む、獰猛さと華やかさを感じるリズム、そしてこのツアーから参加した beja(べジャ/Key、G)の、人力とは思えない圧倒的な指さばきから生まれる鍵盤の音色が、見事なアンサンブルを作り上げる。この素晴らしく“危険”なサウンドが、中村の強さと繊細さ、キュートさ、セクシーさ湛えたカリスマ性を感じさせてくれるボーカルが相まって、客席の一人ひとりの心に突き刺さる。

シーケンスと4ピースの音は圧倒的な情報量で、獰猛に襲い掛かってくるようだが、時には温もりを感じさせてくれ、キメるべきところでは寸分の狂いもなく息を合わせビシッと決める。 キーボードとギターにbejaという心強いサポートを迎えたことで、進化したアンサンブルを楽しめ、歌と音が緻密に重なり生まれる“深化”したグルーヴを感じることができるのがこのツアーだ。

「絶対的に美しい時間にします」。なにかも受け入れてくれるような、鷹揚な器を感じることができる中村が紡ぐ曲

中村がいつものように「絶対的に美しい時間にします」とオーディエンスと“約束”。手を振り上げ、ノリノリで聴いている人もいれば、その音楽にたゆたうように目を瞑りながら聴いている人もいる。それは、“ここではないどこかに行きたい”という、中村が紡ぐCö shu Nieの音楽の根底に流れる思いに触れることで、苦しみや葛藤から“逃避”できたり、答えを探しに来る「場所」になっているからだ。

「自分を愛するために作った」(中村)という「no future」はまさにそうだ。誰もが感じる日常のダルさを歌い「誰にも色々な“何もしたくない”があると思う。でもそれに対して罪悪感を持って欲しくない」(中村)という思いが込められている。荒々しく、でもメロウで脱力感を感じる中毒性のある作品だ。この作品を含めて中村が作る楽曲、メッセージからは、なにもかも受け入れてくれるような鷹揚な器を感じることができる。

ツアー初日に新曲「Burn The Fire」を初披露

「no future」は、来年発売されるアルバムに向けての幕開けになる一曲だが、この日は次の“カード”となる新曲「Burn The Fire」が披露された。まだレコーディングも終わっていない曲を誰よりも先に聴けるとあって、客席から大きな歓声が上がった。「激しい曲です」と中村が紹介したように、ガレージロックっぽいギターのリフが高らかに響き、激しい展開をよりドラマティックにするリズムの重低音が響く。“ダルい、何もしたくない”日常の中で湧き上がる鬱々とした思いを怒りに変換し、それをエネルギーにすることで放熱されるものの尊さ、そんな熱い思いを感じた。

ツアーは始まったばかりなので、セットリストの全貌を明かすことはできないが、最新曲から「give it back」「asphyxia」などの代表曲、インディーズ時代の作品まで、Cö shu Nieの現在地と、来年発売されるアルバムへと続く“その先”の佇まいを予感させてくれる構成になっている。

『Cö shu Nie Live Tour 2023-unbreakable summer-』は、9月9日(土)大阪・Zepp Namba、9月10日(日)愛知・Zepp Nagoya、9月21日(木)福岡・BEAT STATION、9月22日(金)・広島・Live Space Reed、9月24(日)徳島・club GRINDHOUSE、9月29日(金)新潟・GOLDEN PIGS RED、9月30日(土)東京・Zepp DiverCity(SOLD OUT)で行われる。

Cö shu Nieオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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