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なぜ社長の前では「あざとく」メモをとったほうがいいのか?

横山信弘経営コラムニスト
(ChatGPT DALL-E 3 にて筆者作成)

「社長」という人種は、だいたい人の話を聞かず、独善的で、早とちりして、自分の考えを相手に押し付けようとする。私は現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。クライアント企業の社長と話をしていて、うまく話が噛み合わないとき、いつもかなり苦労する。

話が噛み合わない理由は、論点がずれることだ。だから早合点しそうな社長と話をする場合は、必ず事前に資料を作っておく。手元に何もない状態で社長と話をすると、どんどん話が噛み合わなくなっていくからだ。

部下と社長との会話例を書いてみよう。

部下:「社長、二次クレームの件数を減らすために、現在スタッフで毎朝ミーティングを実施し、それぞれの行動パターンをチェックしています。そこで……」
社長:「それよりも、そもそも二次クレームの件数は減ったのか?」
部下:「え?」
社長:「二次クレームを減らすことが目的だろう? 減ったのか?」
部下:「いや、ちょっと待ってください。まずは一次クレームが発生したあとの行動パターンを見直すために、現場のモニタリングをするという話になっていたはずです」
社長:「だいたいさ、この前もスタッフの接客態度を観察していて思ったんだよ。気遣いがないというか」
部下:「その話は前回も出ていましたが、まずは一次クレームが出たあとの初動スピードについて、ですね……」
社長:「どうして最近の若い子は、気配りができんのかね。親はどういう教育をしてきたんだ」
部下:「社長――」

このように、すぐに話の論点をずらすような社長と会話する場合、手ぶらでコミュニケーションをとろうとしてはいけない。必ず、資料を手元に置き、「前提条件」や「仮説」、論拠となる「事実」を共有しながら話を進める。

■「聞く理解」と「読む理解」の違い

「聞く理解」と「読む理解」の違いを理解しよう。

言葉は発声と同時に消えてしまう。相手の頭に記憶として残ったかどうか、そもそも正しく認知してもらったかどうかを、話し手はコントロールできない。しかも話している途中から、社長はドンドン想像・空想を膨らませてしまう生き物だ。

そのため手ぶらで話をすると、「相手がいま話したいこと」に論点がずれてしまう。いったん話が「あさっての方向」にずれたあと、元に戻すのは大変。先ほど話をしたことが記憶に残っているかも疑わしいので、

「そもそも、どうしてこんな話題になったんだっけ?」

と質問され、その背景や前提まで再び話さなくてはならなくなる。「コミュニケーション効率」をアップさせるためにも、正しい資料を準備して会話することだ。

■社長の前でメモをとる2つのポイント

資料を使って会話する目的は、何らかの相談や、アドバイスをもらったうえで新たな意思決定をすることだ。ここで必要になるのが「メモのとり方」である。ポイントは以下の2つ。

(1)資料の上にメモをする
(2)メモの内容を相手に見せながら話す

最初に紹介したいポイントは、社長の意見やアドバイスを、あらかじめ準備しておいた資料の上に書いていくことだ。そしてそのメモを相手に見せる。会話の論点は資料にあるはずだ。だから社長がその場の思いつきで何かを話しはじめたら、論点がずれているので、メモを書くことができなくなる。

「あなたの話はいま、噛み合っていませんよ」

というサインを送るためにも、相手に見せながらメモをとるのだ。

部下:「この資料のように、スタッフの初動スピードは変わりつつあります」
社長:「なるほど……。しかし、Kさんだけは、まだ一次クレームの対応スピードが遅いな」
部下:「そうなんです。Kさんの意識改革が必要です」
社長:「わかった。じゃあKさんには、私から言っておくよ」
部下:「社長からKさんに言ってくださるんですね。それは心強いです。いつにしますか?」
社長:「うーん、そうだなァ……。じゃあ、明後日の夕方5時からでどうだろう」
部下:「かしこまりました。『明後日の、夕方の、5時から』ですね」

ここで、部下は「2月21日、17時から社長がKさんへ」と、資料の上にメモを取る。社長は当然、書き込んだそのメモを見ている。

部下:「ありがとうございます。それでは明後日の夕方5時ということですね。Kさんには社長から話があるとだけ伝えておきます」
社長:「う、うん。そうだな。……わかった」

このように、相談内容、改善事項を全部メモをとったあと、この会話の中で決まったことをまとめて読み上げる。これを「パラフレージング」と呼ぶ。パラフレージングとは、適切な表現に言い換えて、相手にフィードバックすることだ。

部下:「社長、それではまとめさせていただきます。決めたことは3つです。まず1つ目は、初動スピードの遅いKさんには明後日の夕方5時から社長が直接指導いただく。2つ目は二次クレーム発生後の報告先を一本化する。3つ目は――」

すべてメモに書いてあることを読みあげるので、相手は記憶をたどる必要がない。

社長:「わかった。頼んだぞ」

と言うだけだろう。

このように目の前でメモをとり、ひとつひとつ確認しないと、話している最中から社長は空想をはじめ、さらに「そういえばアレってどうなったの?」と言いかねない。社長は想像力豊かな人が多いからだ。

話を正しく前に進めるためには、シンプルな資料の上にあざとくメモを取ったうえで、パラフレージングしてみよう。

<参考記事>

脳を鍛える「メモの達人」の技術 メモのとり方5段階レベルをすべて解説!【5200文字】

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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