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大阪の「インディーズお笑い」王者はボニーボニーに決定「自分たちはおもしろいんだと信じてやっている」

田辺ユウキ芸能ライター
左から、涼風、ボニーボニー、オーパスツー/写真:筆者撮影

「地下」から湧き上がる、拍手笑い――。たくさんのお笑いファンが、大阪市西区にあるテナントビルの地下にあるお笑いの劇場へ降りていく。そしてあっという間に、約100席用意された座席が埋まった。

事務所無所属のフリー、アマチュアのお笑い芸人らによるインディーズライブなどを数多くおこなっている劇場・楽屋Aで12月15日、名物イベント『楽屋A 頂上決戦〜TOP3入替バトル2024冬〜』が開催。大阪を拠点に活動するフリーのお笑いコンビ、ボニーボニー(花﨑天神、バリーとくのしん)が「ナンバーワン」となった。

オーパスツー、ガングリオンなど2024年賞レースで実績を持つ面々も

2位のオーパスツーの漫才は、場の「支配力」が抜群/写真:筆者撮影
2位のオーパスツーの漫才は、場の「支配力」が抜群/写真:筆者撮影

同イベントは、楽屋Aの舞台に立つ「劇場メンバー」のランキングを決める、半期に一度のバトルライブ。同劇場最強芸人ほか、ランキング上位3組を示す「TOP3」がこのイベントで決定される。出場芸人の人数構成、ネタ形式などは不問。ピン、コンビ、トリオの芸人たちが漫才、コントなどで勝負ネタを披露した。

今回の出場者は、2025年開催『ytv漫才新人賞決定戦』に松竹芸能所属の芸人として初めて出場を決めたオーパスツー(大ちゃん、しんじょう)、25歳以下限定の賞『UNDER 25 OWARAI CHAMPIONSHIP 2024』で優勝したガングリオン(クボ、北村文化財/フリー)、『M-1グランプリ2020』ベストアマチュア賞受賞経験を持つガーベラガーデン(かみうら、ジッパー/アマチュア)など、賞レースで実績を持つ面々を含む15組。

2024年6月開催の『楽屋A 頂上決戦』では、ボニーボニーが1位、オーパスツーが2位、百点飯店(当時のコンビ名はよしもとズ/森田GM、良元カルビ/松竹芸能)が3位に。それから半年経った2024年冬大会でも、上位2組は不動だった。両大会で勝利したボニーボニーは2024年夏冬制覇の完全優勝となった。一方、前回3位の百点飯店は陥落(6位)。3位には、『M-1グランプリ2024』準々決勝進出者の涼風(松尾だいち、2000000000000京(にちょうけい)/フリー)が初ランクインした。

ちなみにボニーボニー、オーパスツーは漫才を披露。一方の涼風は、漫才と一見思わせながらBGMもまじえるなどし、「漫才のフォーマットをフリとするコント」として捉えられものでもあった。そのトリッキーなスタイルに意表をつかれた観客からは、大きな笑い声があがった。

“連覇”のボニーボニー「ウケているとちゃんと実感できた」

大阪のお笑いのインディーズシーンで広く知られる、ボニーボニー/撮影:筆者撮影
大阪のお笑いのインディーズシーンで広く知られる、ボニーボニー/撮影:筆者撮影

イベント後におこなった筆者のインタビューでは、貫禄の連覇を果たしたボニーボニーの花﨑天神は「自分たちはおもしろいんだと信じて漫才をやっています。ただ、フリー芸人という立場なのでなかなかその“基準”を見つけづらい。そんななか、吉本興業さんに所属する芸人以外を集め、そこで『誰が一番おもろいか決めようや』というこのイベントは、とても貴重。そこで勝つことで『自分たちはまだまだがんばれる』という気持ちになれます」とモチベーションにつながると話す。

同コンビのバリーとくのしんは「楽屋Aのライブのなかでも『頂上決戦』はもっともお客さんが入り、熱量もものすごい。そのなかで勝ったらやっぱり格好いいですよね。今回のネタ中は、『ウケているな』とちゃんと実感できていました」と一段と気合いを込めて漫才に臨んだという。

涼風「出るものは全部勝ちたい。まだまだ満足できない」

1万組以上のエントリーがあった2024年『M-1』でも準々決勝まで進んだ、涼風/写真:筆者撮影
1万組以上のエントリーがあった2024年『M-1』でも準々決勝まで進んだ、涼風/写真:筆者撮影

また「TOP3」に初めて食い込んだ涼風の松尾だいちは、「自分は以前からインディーズでお笑いをやっていました。そんななか楽屋Aができて(2022年5月開業)、大阪のインディーズライブでおもしろいと言われている人たちが方々(ほうぼう)から集まるようになった。『頂上決戦』はそのなかで1位を決める、とんでもない戦い。今回、そこにようやく肩を並べることができた。芸人になっての第一目標をやっとクリアできました」と笑顔。

相方の2000000000000京は、「私のなかでは楽屋Aで1位になることと、『M-1』で優勝することは、喜びの感情という点ではおそらく一緒なんです。というのも私は戦うことが好きで、勝ちたいからバトルやコンテストに出ています。だからこそ、出るものは全部勝ちたい。シンプルに1位が欲しい。今回『TOP3』に入れたのは嬉しいですけど、まだまだ満足できていません」とどん欲な姿勢を崩さなかった。

現在、お笑いシーンで活動する芸人たちの多くは、『M-1』、『キングオブコント』、『R-1グランプリ』などの大型賞レースを目指している。そこで一つでも勝ち上がるために必要なのは、とにかくたくさんの舞台に立ちながらネタを磨いていくこと、そしてほかの芸人たちと切磋琢磨すること。楽屋Aではその機会を持つことができる。大阪では吉本芸人が圧倒的な強さを誇っているが、楽屋Aの舞台に立つ芸人たちに気後れの様子はない。

この日、大阪の「地下」の劇場で起きた拍手笑いの数々が、いつか全国の舞台で聞ける日が来ることを期待したい。筆者も引き続き、楽屋Aなどで開かれるインディーズライブなどを取材する。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga. jp、リアルサウンド、SPICE、ぴあ、大阪芸大公式、集英社オンライン、gooランキング、KEPオンライン、みよか、マガジンサミット、TOKYO TREND NEWS、お笑いファンほか多数。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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