元SEALDs、稲田防衛大臣を批判―「戦闘」を「衝突」と言い換え、国会前で500人が抗議
「稲田朋美は大臣辞めろ!」「自衛隊の命を守れ!」―先週金曜の晩、寒空の下、約500人が国会前に集まり、南スーダン自衛隊派遣をめぐる稲田防衛大臣の姿勢に抗議した。都内在住の一人の男性が前日にtwitter で抗議行動を呼びかけたところ、瞬く間に賛同する人々が増え、共に声をあげた。その中には、安保法制審議の際、国会前での抗議活動がメディアの注目を集めたSEALDsの元メンバーの若者達の姿もあった。
〇稲田大臣はことの善悪もつかない
稲田防衛大臣の国会答弁に批判が集まっている。今月8日の衆院予算委員会で、南スーダン情勢について自衛隊の部隊の活動記録に「戦闘」との記載があったことについて野党に追及された稲田大臣は「事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」と答弁。南スーダンへの自衛隊PKO派遣が違憲とされないよう、実態にそぐわない表現に言い換えているとも取れる答弁だった。
現実を無視して、口先だけで憲法違反の疑いのあることを、「合憲」としてしまうことへの危機感―10日の晩に国会前に集まった人々に共通する思いだ。昨年8月、一旦、解散した学生団体SEALDsの元メンバーであった若者達も、久々に国会前に駆け付けた。現在は筑波大学の院生である諏訪原健さんは、筆者にこう語る。
「稲田大臣は、国民をバカにしてるし、今も南スーダンで任務についている上、安保法制のせいで、武器使用も伴うような危険な立場に置かれてる自衛官をバカにしています。『戦闘』を『衝突』に言い換えることに、何の迷いもない稲田大臣は、ことの善悪の区別もついていない。(米国大統領選で社会問題となった、それが事実か否か関係なく言ったもの勝ちだという)『ポスト真実』そのものです。日本は『ポスト真実』先進国になってしまいました。安保法制の国会審議の時もそうでしたが、安倍政権は、どんなことを言って、何をやってもいいという考えでいて、それが当たり前になってしまいつつあるのですが、人の命がかかっていることまで、そんな酷い言い換えをしてしまう。今回のことで、やはり安倍政権のやり方に慣れてしまってはいけない、と思いました。今こそ、声をあげるべき時なのです」(諏訪原さん)
今回の抗議をtwitter で呼びかけた日下部将之さんも「急な呼びかけで、こんなに集まるとは思わなかった」と話す。日下部さんの呼びかけに、多くの人々がネット上で動き始め、実際の段取りが決まったのは、当日未明のことだった。日下部さんは「稲田大臣は辞任すべきです。もし辞任しないなら、次回の金曜日、17日も20時から国会前で抗議したいと思います」と意気込みを見せた。
〇危機が続く現地情勢
南スーダンでは、現在も同国政府軍と反政府勢力の内戦が続いており、今月10日には、国連安全保障理事会が現地の紛争当事者らを強く批難、即時に停戦を求める声明を出している。政府が自衛隊をPKO派遣する際の条件である「PKO5原則」の一つ、「全ての紛争当事者が停戦し、和平が実現している」という状況とはかけ離れているのが実情だ。10日に国会前に集まった人々とは別に、明日14日にも、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の主催で、12時から13時から衆議院第二議員会館前で、抗議活動が行われるという。現実を直視せず、自身や安倍政権の都合ばかりを優先する稲田大臣への批判は、国会の内外で高まりそうである。
(了)