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北京冬季五輪の開会式、台湾選手団の入場で「中華台北」のアナウンス 中国の人々はどう思った?

中島恵ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

注目されていた呼称

2月4日夜に行われた北京冬季オリンピックの開会式。注目ポイントのひとつが台湾選手団が入場する際の“呼称”だったが、結局、場内アナウンスは、中国語で「中華台北」、英語は「Chinese Taipei」、プラカードの表記も「中華台北」で、従来の五輪と同様だった。

日本のNHKの生放送では、昨夏の東京五輪のときと同様、NHKアナウンサーが「台湾です」とはっきりとした声で呼び、そのこと自体が日本や台湾のSNSでは大きな話題となった。

台湾では、NHKが昨年同様「台湾です」と紹介したことを非常に好意的に受け止め、報道された。

呼称問題が注目されていたこともあったのか、NHKアナウンサーは続けて「オリンピック、パラリンピックでは、チャイニーズタイペイという名称の選手団で参加しています」と付け加えた。

今回、呼称問題で警戒していた台湾は、新型コロナの感染リスクなどを理由に、1月下旬の段階では開会式への不参加を表明していたが、IOC(国際オリンピック委員会)の求めに応じる形で参加に踏み切った。

中国のSNSの声は……

入場行進の場面は中国側でも話題になった。日本でも報道されているように、場内アナウンスは「中華台北」だったが、中国のテレビの生放送では「中国台北」と呼ばれたからだ。

「中華台北」と「中国台北」という2つの呼称について、中国の人々はどのように受け止めたのか。

中国の微博(ウェイボー)や微信(ウィーチャット)などSNSを見てみると、さまざまな声があった。

私が見た限りでは、この件に関しては、それほどナショナリズムが高まっているような発言は多くなかったが、中には、「次の五輪のときには中華台北という呼称ではなくなっているといいな」、「なぜ中華台北?理解に苦しむ」といった意見があった。

一方、次のような意見もあった。

「あれ?入場のときの紹介は中華台北だったけど、解説では中国台北といっていたよね?これはやはり国内向けでしょうか?」

「中華台北というのはIOCの規定だから、そう呼んでいたんでしょう。それはそれで尊重する。しかし、CMG(中国広播電視総台、中国メディアグループ)は中国台北と呼んでいた。これは中国の立場だし、譲れないことですね」

「中国台北というのは、国内向けのアピール、政府の主張。プラカードとは違うけど」

台湾選手団の表情にも着目

細かいところに着目した人もいた。

「台湾選手団の旗手の表情がとても暗い……なんて暗い顔なんだ……」「東京五輪のときと表情が全然違う」と台湾人選手の顔をクローズアップした写真がかなり掲載されていた。

また、中国の大選手団の写真と、3人しかいない台湾選手団の写真を対比させたものや、「中華台北」という、今回とくに注目されるプラカードを持った女性はどこに所属している、どんな人なのか、などを紹介しているものもあった。

中国のテレビで放送された「中国台北」という呼称は「台湾は中国の一部」という中国の立場を反映したものだ。

それもあってか、中国のテレビ放送では、台湾選手団の入場の際、カメラが習近平国家主席に一瞬だけ切り替わった。このわずかな場面も、中国のSNSでは話題になっていた。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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