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大器・伊藤匠五段(19)棋王戦ベスト8一番乗り! 前期挑戦者・永瀬拓矢王座(29)を降す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月22日。東京・将棋会館において第48期棋王戦コナミグループ杯・挑戦者決定トーナメント3回戦▲伊藤匠五段(19歳)-△永瀬拓矢王座(29歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は19時16分に終局。結果は119手で伊藤五段の勝ちとなりました。伊藤五段はこれでベスト8一番乗り。4回戦では斎藤慎太郎八段-増田康宏六段戦の勝者と対戦します。

 前期挑戦者の永瀬王座。今期はこれで敗退が決まりました。

現役最年少棋士、またもタイトルホルダーを破る

 永瀬王座は前期棋王戦、トーナメントを制して挑戦権を獲得しました。

 永瀬王座は五番勝負で渡辺明棋王に1勝3敗で敗退。今期はシードで3回戦から登場です。

 伊藤五段は予選からの勝ち上がり。本戦では2回戦で三浦弘行九段に勝ちました。

 永瀬王座と伊藤五段は公式戦では昨年、王位戦予選で対戦。伊藤五段が堂々の勝利をあげています。

 準公式戦では今年のABEMAトーナメントで対戦。こちらは永瀬王座が貫禄を示し、チームの勝利を決める大きな白星をあげています。

 本局は伊藤五段が先手で、戦型は相掛かり。伊藤五段は浮き飛車に構えて動いていくのに対して、永瀬王座が受ける進行となりました。

 伊藤五段は中段で飛車を使って揺さぶりをかけ、堅く守る永瀬陣の突破をはかります。やがて飛車の取り合いに持ち込んで、大きくポイントを挙げました。

 強靭な粘り腰で知られる永瀬王座。自陣飛車を打って粘りに出ながら、2枚の角を放って伊藤陣に迫ります。

 一手を争う終盤を制したのは、伊藤五段。大駒の飛角はすべて手放したものの、最後は豊富な小駒で永瀬玉を寄せきりました。

 19歳の現役最年少棋士がタイトルホルダーを破れば「金星」と表現するのが自然でしょう。しかしそれが公式戦で2戦2勝となれば、もうその表現は当たらないのかもしれません。

 伊藤五段は今期これで17勝3敗(勝率0.850)となりました。

 記録4部門でも上位の位置につけています。

 伊藤五段の連勝が止まったのは竜王戦本戦。最初の「1組の壁」稲葉陽八段に進撃を阻まれました。

 伊藤五段は竜王戦では、永瀬王座の待つところまでは進めませんでした。しかし棋王戦では前期挑戦者を相手に、見事に勝利を挙げた形となりました。

「藤井聡太竜王の六冠目挑戦なるか?」など、話題の豊富な今期棋王戦。7月29日には女性として初めて本戦進出を果たした里見香奈女流四冠が、強豪・阿久津主税八段と対戦します。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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