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藤井聡太棋聖への挑戦権は誰が獲得するか? 4月17日、決勝T準決勝・佐藤天彦九段-佐々木大地七段

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月17日。東京・将棋会館においてヒューリック杯第95期棋聖戦・決勝トーナメント準決勝、佐藤天彦九段(36歳)-佐々木大地七段(28歳)戦がおこなわれます。

 勝者は挑戦者決定戦に進み、4月22日、山崎隆之八段(43歳)と対戦します。

 藤井聡太棋聖への挑戦権を獲得するのは、果たして誰になるのでしょうか。

両者の棋聖戦での戦績

 佐藤九段は本棋戦5回目の準決勝進出。挑戦者決定戦には2回、2011年と15年に進んでいます。

 佐藤九段はまだ、棋聖戦五番勝負進出の経験はありません。

 佐々木七段は昨年の挑戦者です。

 佐々木七段は五番勝負で藤井棋聖に挑戦。1勝3敗で敗退したものの、その熱い戦いは記憶に新しいところです。

今期両者のここまで

 佐藤九段は今期、二次予選からの登場。石井健太郎六段(現七段)、村中秀史七段、屋敷伸之九段に勝って二次予選通過を決めました。

 佐藤九段は、もともとは居飛車党ながら、最近ではよく振り飛車を指しています。ただし決勝トーナメントではここまで振り飛車党と当たり、居飛車を持っています。

 1回戦は藤井猛九段と対戦。後手の藤井九段は四間飛車を採用しました。戦いが始まったあと、藤井九段に誤算があったようで、15時59分、53手の短手数で佐藤九段の勝ちとなりました。

 2回戦では西田拓也五段と対戦。西田五段は角交換四間飛車を採用しています。居飛車穴熊に組んだ佐藤九段は玉の堅さ、遠さを活かしながら、巧みに攻めをつなげていきます。77手目、角をタダで捨てたのが驚くべき強手。最後は粘る西田五段を振り切って、119手で勝利を収めました。

 前期挑戦の佐々木七段は、今期は予選はなく、決勝トーナメントから出場のシードです。

 1回戦では広瀬章人九段と対戦。後手の佐々木七段は序盤でなかなか角筋を開かず、相居飛車の力戦になっています。終盤に入ったあたりでは、形勢は広瀬九段リード。佐々木七段の玉は中段で追いかけられ、ピンチを迎えます。しかし佐々木七段はギリギリのところでしのぎ、反撃。最後は佐々木七段が一手争いを制し、138手で終局となりました。

 2回戦では大橋貴洸七段と対戦。駆け引きの末、後手の佐々木七段が横歩取りに誘導しました。中盤、やや模様のよさそうな大橋七段が積極的に動いてきたのに対して、佐々木七段は的確に応対。進んでいくうちに、次第に佐々木七段がポイントを稼ぐ展開となりました。最後は佐々木七段が大橋玉を受けなしに追い込んで、102手で勝利を収めています。

九州対決

 佐藤九段と佐々木七段は過去に3回対戦し、佐藤九段が3連勝で貫禄を見せています。

 佐々木七段は居飛車党。対して、最近では振り飛車をよく用いる佐藤九段が、どのような作戦を選択するのかが、まずは注目ポイントかもしれません。

 佐藤九段は福岡県福岡市、佐々木七段は長崎県対馬市の出身。両者はABEMA地域対抗戦では、チーム九州のメンバーでした。

 地域対抗戦では、藤井棋聖(八冠)を擁する中部が優勝しました。個人成績15勝1敗という圧倒的な強さを見せた藤井棋聖に唯一黒星をつけたのは、佐々木七段。中部をもっとも追い込んだチームは、九州でした。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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