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「国民民主党入りの山尾」「立憲民主党離党の須藤」に見た野党議員の劣化の現実

安積明子政治ジャーナリスト
国民民主党に入党届を出したものの……(写真:つのだよしお/アフロ)

会期末に現出したドタバタ劇

 会期末のせいだろうか、政界に“地殻変動”が起きている。6月16日夕方、山尾志桜里衆議院議員が会見し、国民民主党に入党することを発表した。翌17日夕方には、須藤元気参議院議員が立憲民主党を離党することを表明。須藤氏は昨年の参議院選で比例区で出馬して当選したばかりで、議員となって1年もたっていない。

 まずは山尾氏だが、16日午後にいきなり国民民主党本部に赴き、たまたま居合わせた平野博文幹事長に入党届を提出。平野氏が「(今年3月まで山尾氏が所属した立憲民主党側に)仁義は切ったか?」と聞いたところ、山尾氏は立憲民主党の福山哲郎幹事長に電話をかけた。

 この時の様子について、同日夕方に開かれた定例会見で福山幹事長は以下のように述べている。

「率直に言って驚きました。一方で国民民主党に入党届を出された直後にお電話をいただきました。国民民主党側から『立憲民主党と福山幹事長に仁義を切ってきたか』と言われて、入党届を出してからお電話をいただいたようでしたので、私は事情がわかりませんので、いまお電話をいただいて『入党届を出した』と言われても、なんともコメントしようがありませんと申し上げました。それ以上でもそれ以下でもありません」

 静かに語る福山幹事長の顔は、それでも怒りがふつふつと湧き出ているのが見てとれる。

山尾氏の国民入りは矛盾

 ある立憲民主党関係者は山尾氏の国民入りは理屈に合わないと主張する。

「山尾議員が3月に立憲民主党を離党したのは、新型コロナウイルス感染症対策のための改正特別措置法に『国会の承認』を盛り込むべきと主張して、立憲民主党が付帯決議に『国会への事前報告』を入れることで妥協したことを許せなかったからだ。しかしそれなら、国民民主党もあの改正案には賛成している。にもかかわらず、国民民主党に入党するのは矛盾ではないか」

 受ける方の国民民主党も戸惑いを隠さない。ある議員がこう述べた。

「山尾さんのスキャンダルのせいで民進党が瓦解し、仲間が分裂し、選挙で討ち死にしたことを誰も忘れていない。全ては岡田克也元民進党代表が彼女を政調会長に任命したり、前原誠司元代表が幹事長に内定して、甘やかしたことが発端だ。どうせ衆議院選が近くなったから比例狙いだろうが、入党して役員でも任命されたら、集団離党は必至。しかし入党届を出した後で電話1本かけて、“仁義を切った”と言えるのか。それは“通告”にすぎないのではないか」

山尾入党は立憲との合流を阻止するためか?

 どうやら国民民主党側に山尾氏を歓迎するムードはなさそうだが、誰も手引きをしなかったのか。あくまで山尾氏の突発的な入党騒動なのか。ある記者は「ひとつだけ可能性がある」と言う。

「立憲と国民の合流を阻止することが目的だ」

 すなわち立憲民主党から“裏切り者”扱いされている山尾氏を入れることで、合流を阻止しようというわけだ。それではまるで山尾氏は、コロナ封じのアマビエではないか。

 実際に入党届を出した後に会見を開いた山尾氏は、国民民主党の玉木雄一郎代表の政治姿勢に共感したことを強調した。玉木代表も17日の定例会見で、「山尾氏は優秀な人」「仲間が増えるのはいいことだ」と述べるなど肯定的。もっともこれまで国民民主党から立憲民主党に移った議員はいても、その逆はいなかった(自由党を経由した日吉雄太衆議院議員を除く)から、代表として喜ばしいのは当然かもしれない。ただし山尾氏の入党が支持率アップに繋がるかどうかは不明だ。しかも党内には日本維新の会と共闘しようという勢力もあり、山尾氏の入党により党内の混乱が加速する危険性も否定できない。

須藤氏は泣きながら離党を訴える

 立憲民主党に離党届を出した須藤氏は17日夕方に会見を開き、翌18日告示の東京都知事選で党が推薦する宇都宮健児氏ではなく、れいわ新選組の山本太郎代表を応援することを宣言。須藤氏は山本氏が提唱する消費税5%に賛同を表明しているが、それをも含めて福山幹事長にたしなめられたのが不満のようだ。「なぜ上の言うことを聞かなければならないのか」「消費税減税を言うなとか、何が言うなだよ」など、泣きながら党執行部への不満をぶちまけている。

 だが須藤氏はあまりにも無知ではないか。そもそも立憲民主党はかつての民主党政権時に、消費税増税を推進している。須藤氏がれいわ新撰組の政策が良ければ、昨年の参議院選でれいわ新選組から出馬すれば良かったのではないか。それらを知らずにただ政党に乗っかって出馬したのなら、政治を甘く見すぎているというしかない。

 たとえ所属政党を替えたとしても、議員としての特権や地位は変わらない。しかしこのような醜態を見せられては、やはり政治離れ・野党離れは加速するのではないだろうか。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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