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韓国フィギュア・ファンが見た羽生結弦と宇野昌磨

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
羽生結弦と宇野昌磨の活躍を韓国ファンたちは羨ましく見ている。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

3月28日からアメリカのボストンで行われる世界フィギュアスケート選手権。平昌(ピョンチャン)オリンピックが行われることを踏まえると、韓国でも当然注目が高いと思いきや、意外と関心は低いようだ。試しに韓国の大手ポータルサイト『NAVER』の検索窓に「世界フィギュアスケート選手権」と入力してリサーチしてみたが、関連ニュースは少なく、テレビでの生中継放送もないらしい。知人のテレビ局関係者にも聞いてみたが、こんな答えが返ってきた。

「キム・ヨナが全盛期だった頃は世界フィギュアが人気コンテンツでした。彼女が優勝した2013年大会ではSBSで生中継され、視聴率17.9%を記録した。けど、キム・ヨナ引退以降は世界選手権だけでなく、フィギュア公式大会が地上波で中継されることはなくなった。昨年に上海で行われた世界選手権もケーブルテレビでの録画中継でしたから」

ただ、それも無理はない。韓国人選手の出場は少なく、今回も女子シングルではパク・ソヨン、チェ・ダビン、男子シングルに至ってはイ・ジュンヒョンただひとりという状況なのだ。特に韓国における男子フィギュアは「不毛地帯」と言われるほど選手層は薄い。最近は若い選手も頭角を現しているようだが、シニアで活躍しているのは前出のイ・ジュンヒョンや今年の4大陸選手権で韓国男子としては初のトップ10入り(10位)したキム・ジンソくらいだ。

(参考記事:「“不毛地帯”とされる韓国男子フィギュアの知られざる現状」

それだけに韓国のフィギュアファンたちは日本の男子フィギュア界が羨ましい。とりわけ羨望の眼差しで見つめているのは、羽生結弦の活躍だ。「男版キム・ヨナ」「日本フィギュア界のコッミナム(美男子という意味)」と絶賛するだけではなく、フィギュアスケート界のアイドルという意味を込めて、羽生は“フィギュドル”とも呼ばれている。韓国のフィギュアファンたちの間では今回の世界選手権でも優勝候補筆頭に挙げているほどだ。

(参考記事:「韓国でも有名な羽生結弦、別名「ウセンキョルヒョン」とはどんな意味?」

その羽生は韓国ファンたちの間で「ウセンキョルヒョン」とも呼ばれている。いかにも韓国らしい呼び名だが、試しに同じ方法で『NAVER』の検索窓に「ウヤチャンマ」と入力して検索してみた。そう、宇野昌磨のことだ。

宇野も羽生と並ぶ日本男子フィギュア界のスター選手だけに当然、多数の記事がヒットするかと思いきや、羽生も掲載されている「人物情報」にその名はなく、彼のことを扱う記事も少ない。2014年にソウルで行われた4大陸フィギュアスケート選手権に出場しているだけに、もっと知名度があるかと思ったが、まだそれほどメジャーではないようだ。

それどころか4大陸フィギュアスケート選手権でのインタビュー動画のせいで、アンチ・ファンも存在するらしい。同じ日本の男子フィギュアの“顔”でありながら、羽生と宇野では韓国フィギュアファンの評価は分かれるようだ。

(参考記事:「韓国ファンが宇野昌磨に厳しい理由」

もっとも、韓国男子フィギュアの実力は、そんな羽生と宇野の足元にも遠く及ばないということも事実だ。羽生に至ってはSPとフリーの合計も合計300点以上を叩き出すが、韓国男子は200点台前半程度。はるかに引き離されているどころか、前出のイ・ジュンヒョンが「トリブル・アクセルを完成させたあと、世界選手権ではクワドルッツに挑戦したい」と語ったことが記事になる具合でもある。

冬季五輪種目でのメダル獲得数では日本を凌ぐ韓国だが、男子フィギュアではメダル獲得がない韓国。平昌五輪まで2年しかない状況の中、韓国フィギュアファンたちの目に今回の世界選手権はどのように映るのだろう。大会が開幕したら韓国の反応も注視したい。

(参考記事:「冬季オリンピックのメダル獲得数では韓国も、2年後の平昌五輪が心配!?」

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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