喫煙者の「税金払ってるから自由にタバコ吸わせて」は通らない。社会的負担と差し引きすると大幅マイナス
“たばこ代の何割が税金なのだろうか”という分析記事で、「これだけ税金を払っているのだからもっと優遇して欲しい」との読者コメントをちらほら見かけました。しかし、残念ながらそれは通らないんですよ。
たばこ代の何割が税金なのだろうか(不破雷蔵) - 個人 - Yahoo!ニュース(2013/10/20)
記事では、たばこの代表的な銘柄『メビウス(マイルドセブン)』1箱の代金410円のうち、264.5円(64.5%)が税金として取られているとあります。たしかに、商品代金の半分以上が税金だと言われると、とても多く感じます。
けれども、たばこの税収では喫煙による社会的負担を支えきれていないことはご存じでしょうか?
喫煙によるコストは約6兆3,628億円(平成17年度推計)
一般財団法人『医療経済研究機構』が2010年に発表した、平成17年度のデータに基づいた喫煙によるコスト推計結果は次のようになっています。
超過医療費が1兆7,680.8億円。喫煙がもたらす火災の消防や清掃の費用が1,918.3億円。喫煙関連疾患による労働力損失、火災による労働力損失などが2兆3,664.4億円。あわせて約4兆3,264億円が喫煙によるコストだと推計されています。
禁煙政策のありかたに関する研究 ~喫煙によるコスト推計~ 報告書(※PDF)(2010/07/06)
なお、このコストには参考値として出された超過介護費や喫煙時間分の労働力損失が計上されておらず、それらもくわえると総額は約6兆3,628億円になります。
喫煙により、約6兆円もの社会的負担が発生しているわけです。
対するたばこ税収は2兆2,400億円
それでは、たばこ税で国はどれほどの収入を得ているのでしょうか。
一般社団法人『日本たばこ協会』によると、同年のたばこ税の総計は2兆2,400億円です。喫煙によるコスト推計と差し引きするとマイナス2兆864億円。参考値もくわえた総額との差になるとマイナス4兆1,228億円となり、たばこ税を今の3倍にしてようやくトントンになるレベルなのです(平成22年度のたばこ税総計は2兆1,139億円)。
もちろん、たばこの税収と喫煙によるコストを比べるのはおかしいと感じられる方もいるでしょう。しかし、喫煙者側がお金の話をしてくるのであれば、非喫煙者としてもお金の話で返すことになります。
そうなったときに比べるのは、喫煙により発生している社会的負担にほかなりません。
個人的にタバコの臭いは嫌いですが、「タバコを禁止しろ」とまでは思いません。吸いたい人は、自由に吸えば良いと思います。ただし、そこに嫌いな人に煙を吸わせない、というマナーも入れて欲しいのです。
もちろん、喫煙者の大多数はマナーの良い人たちでしょう。しかし、守らない人が一定数おり、その一定数がそれなりの数のため、今のような嫌煙ブームができあがっていったのもまた事実です。
「マナーを守っているのになぜ値上げされるんだ」というその気持ちは分かりますが、その裏でタバコに嫌な思いをさせられた人たちが大勢いることを忘れてはいけません。「税金を払っている」と権利を主張されるのは勝手ですが、その先にある喫煙者の未来は暗いです。