「ますます財布がいらなくなる〜」 韓国 スマホ内に「デジタル運転免許証」発行開始
地上波ニュースは「免許もスマホの中に」と報じる
「スマホの中にデジタル運転免許証発行」。韓国で実用化が始まった。韓国政府が取り組んできた「モバイル身分証明書」の第1弾として「免許書」の発行が27日にスタート。翌28日に各メディアが報じた。
28日、国営放送「KBS」はこうレポートした。
「スマートフォンにダウンロードした専用アプリでQRコードを撮影すると、免許がスマホの中に入ります」
同じく28日の「MBC」はこうも。
「最近はスマホさえあればクレジットカードなしでも決済できる世の中でしょう。今度は免許書もスマホの中に入ることになりました」
- ニュースを報じる「KBS」
即座にICカード入り免許書が発行される
第1段階で実用化が始まったソウル西部免許試験場と、大田のムンジョン試験場には、早くも多くの市民が訪れているという。
手続きの方法は下記のとおりだ。
- スマホから申請。この際に「発給される運転免許試験場」が指定される
- 指定された運転免許試験場に行く(7月以降はどこでも発行可能)
- 申込用紙に記入し、窓口で免許証を提出する
- 顔を担当者が目視で確認後、即座にICチップ入の免許証が発行される
- スマホに専用アプリをダウンロード
- アプリのカメラでICチップ入りの免許証を撮影
- スマホ内でセキュリティ確認
完了
要はスマホと免許書を持って近くの試験場に行けばいい。発行は無料。スマホを替えた場合は再発行が必要だ。
現時点では第1段階として上記2箇所のみで発給可能だが、今年7月からは全国の試験場で可能となるという。
韓国政府の行政安全省は公式YouTubeで実用化の背景をこう説明している。
「身分証明書としての運転免許証を使う場面が多いのは金融機関と公的機関。ここで使える、モバイル身分証明書を目指した」
オンライン、オフライン双方で利用が可能だ。
- 行政安全省公式アカウント
背景に「韓国版マイナンバーカード」の伝統
迅速な発給が可能な背景には、韓国版マイナンバーカード「住民登録番号」の恩恵があることは間違いない。
1962年、朴正煕政権時代に北朝鮮のスパイが韓国に潜入、大統領暗殺を試みるという事件があった。この後、自国民に12桁の番号をつけたところが始まりだ。筆者自身、これが記載された「住民登録証」(17歳の誕生日の次の日から発給可能)を持たない韓国人の存在を見聞きしたことがない。
このカード所持者は、多くの行政サービスが受けられる。個人事業主は確定申告の必要なく還付金も受け取れる。銀行口座とも紐付いており、収入などのデータが管理されているためだ。
便利で、スピーディーだが管理されてるのはプライバシーの面でちょっと…そんな抵抗も感じそうなものだが、今回の「モバイル免許証」では別の観点からのプライバシーも考えられている。KBSはこうレポートした。
「アプリの設定により、状況に応じて『誕生日だけ表示』『住所だけ表示』ということが可能。例えば年齢確認の際に住所まで見せるなど、必要以上の個人情報を見せる必要がなくなる」
”お上”に個人情報が管理(共有と言わねばならぬか)されている反面、「モバイル免許証」では日常生活でのプライバシー保護が可能、という話でもある。
セキリティは「万全」も、ネットでは不安の声
肝心要のセキュリティに関しては、韓国政府行政安全省関係者がKBSの取材にこう答えている。
「ブロックチェーン技術が使用されており、使用履歴が(すぐに暗号化され)中央サーバーに転送されないため、保安には問題がない)」
大規模な個人情報流出事故の可能性はない、ということか。韓国では今後、外国人登録証や障害者手帳などもデジタル化していく予定だという。
28日に「デジタル免許書」のニュースを報じた「KBS」、「MBC」などのYouTubeアカウントにはこんなコメントが寄せられている。
日本での「スマホ免許証」実現はまだま先の話になりそうだ。2020年9月16日に小此木八郎国家公安委員長が「2026年度にも免許証の情報をマイナンバーカードのICチップに登録して、運転免許証とマイナンバーカードとの一本化をスタートさせる」と発表している。