和田毅移籍の"誤報"はあってはならない!上原浩治が訴える情報管理への疑問とFA改革案
後味の悪い“決着”にモヤモヤしてしまう。
プロ野球の西武から国内フリーエージェント(FA)の権利を行使し、ソフトバンクに移籍した山川穂高選手の人的補償として、一部スポーツ紙がソフトバンクの「顔」のような存在である日米通算163勝左腕の和田毅投手を指名したと報じた。結果としては中継ぎ右腕の甲斐野央投手が西武に移籍することとなった。
事の真相は不明であるが、和田投手が人的補償の対象になったとの報道に対して、ソフトバンクファンを中心に大きな反響があった。
FA権を行使した選手の移籍に関しては、人的補償や金銭補償が発生する。補償内容はFA選手が移籍前に所属していた球団内の年俸順位(外国人選手は除く)によってランク付けされる。上位3位までに入っていた選手はAランク、4~10位までがBランク、11位以下の選手はCランクとなり、人的補償はAとBのランクの選手のFA移籍時に生じる。人的補償の対象となるのは、FAで選手を獲得した球団がプロテクトした28人(外国人や直近のドラフト選手を除く)以外の選手である。
山川選手の昨季の推定年俸は2億7000万円でAランクとみられ、西武はソフトバンクに対して「金銭補償(年俸の80%)」か「人的補償+金銭補償(年俸の50%)」のいずれかを選択することができ、今回は後者を求めた。
甲斐野投手はプロテクトされていなかったことになり、和田投手は実際に移籍していないため、プロテクトされたかどうかは不明である(報道ではされていないとのことだが、球団の発表がない段階で憶測は避けたい)。一つだけ言えることは、甲斐野投手にしても、和田投手にしても、他の選手にしても、ソフトバンクがプロテクトしていれば西武が獲得することはできない。どの選手をプロテクトするか、外すかを決めたのはソフトバンクで、ルールに則ったものである。
過去には巨人から工藤公康氏が横浜(現DeNA)に、内海哲也氏が西武へ、長野久義選手が広島へ人的補償で移籍するなど、実績のある選手が対象となったケースがある。
良い、悪いではないが、日本の球団経営には、ファンへの配慮も含めた「情」が入りやすいのではないかと思っている。実績があるベテランの「生え抜き」選手がトレードに出されたり、FAの人的補償になったりすることへの反響の大きさは、今回の和田投手に関する報道を例に出すまでもなく、こうした「情」による部分が大きい。
今回のことで最も残念なことは、プロテクトから外れた選手、もしくは実際にはプロテクトされていたとしても、特定の選手の名前が「人的補償」の対象として漏れてしまったことである。現役ドラフトや、通常のトレードに関してもそうだが、球団は情報管理を徹底しないといけない立場にある。「新聞辞令」と呼ばれる記事は、報じられる選手にとってはたまったものではない。今回の和田投手に関しては、結果としては“誤報”だったのだから、なおさらだろう。
プロテクトされなかったからといって、若い将来性のある選手を優先しなければならないなどの事情も球団によってはあるだろうから、必ずしも「戦力」としてみられていないわけではない。それでも、名前が出るのは気分の良いものではないはずだ。
ただ、もしも人的補償の対象になれば、ファンはともかく、球団も選手も「情」を挟むことなくプロとしてビジネスライクに徹することも必要だろう。生え抜きだろうが、ベテランだろうが、多くのファンに愛された選手であろうが、球団がプロテクトしなければ移籍はやむを得ないということになる。
今後のことについても持論を述べたい。FAに対しては、人的補償もあるが、例えば翌シーズンの「ドラフト指名権」を譲渡するということも今後のFA改革のときの選択肢にあっていいと思うが、皆さんはどうだろうか。Aランクの選手なら「翌シーズンのドラフト1位」、Bランクなら「同2位」などと12球団で協議すればいいと思う。
今回は、和田投手にとっては、周囲も騒々しくなっただろうが、経験豊富な左腕ゆえに気持ちを切り替えて来季に備えてほしい。甲斐野投手も間もなくキャンプという時期だったが、コメントを見る限りは前向きに見える。決まった以上はプロとしてソフトバンクを見返すくらいの気持ちでマウンドに立ってほしい。