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志田彩良を衝き動かす「ドラゴン桜」での“悔しさ”

中西正男芸能記者
映画「かそけきサンカヨウ」で主演を務める志田彩良さん

 TBSドラマ「ドラゴン桜」でも注目を集めた女優・志田彩良さん(21)。映画「かそけきサンカヨウ」(10月15日公開、今泉力哉監督)では主演を務めています。着実に、そして力強く歩みを重ねていますが、根底にある思いを吐露しました。

新型コロナ禍で再認識した自分

 今回の映画の撮影期間も変更になりましたし、もちろん新型コロナ禍で大変な部分はたくさんあります。ただ、その中だからこそ得るものもあると感じています。

 人と会う絶対量は激減しましたし、その分、自分自身と向き合う時間が増えたなと。そこで改めて感じたのが「お芝居がやりたくて仕方ない」という思いでした。心底、このお仕事が好きなんだ。それを痛感した期間でもありました。

 いつも以上に時間があることでいろいろな作品を見ましたし、そんな中で思い出したのがデビュー当時のことだったんです。

 高校1年の頃に担当してくださっていたマネージャーさんがいらっしゃって、その方が私の芯の部分を作ってくださったんだなと再認識しました。

 毎日、毎日、毎日、怒られたりもしてたんですけど(笑)、現場での居方だったり、基本の基本みたいなところから教えていただきました。30代の女性マネージャーさんだったんですけど、今でもマネージャーさんの言葉を見返したりもするくらい、たくさんのことを学びました。

 いろいろと教えていただいた中で、1週間ごとに、その週見た映画やドラマへの思いを綴って送るというミッションみたいなのがあったんです(笑)。しかも、その作品に自分が出演していて、それこそ、こういう取材の場でインタビューを受けているかのような感じで綴ってくださいと。

 正直な話、当時は「面倒くさいな…」という思いもあったんですけど(笑)、そこで自分の語彙力だとか文章力も確実に鍛えられました。そして何より、お芝居の“引き出し”をたくさん作ることができたと今は強く感じています。

 毎週あらゆる作品を見るため、レンタルDVD屋さんに行って目をつぶって棚からDVDを取ってました。自分で選ぶとどうしても偏りが出ますし、本来の自分だったら見ないような作品にもそうやって触れてきたことで、その一つ一つが今の自分を作ってくれているなと本当に思います。

「ドラゴン桜」での悔しさ

 そうやって積み重ねてきたものがもちろん今回の映画にもつながっていると思いますし、多くのお声をいただいた「ドラゴン桜」にもつながっているなと。

 「ドラゴン桜」は今までのオーディションの中でも一番「受かりたい」と思った作品でしたし、マネージャーさんらとも、その思いを強く共有していました。

 前作に出演されていた方々のご活躍もすさまじいですし、一つの作品としても純粋にすごく魅力的ですし。

 これは直感的な部分としか言いようがないんですけど「この作品に関われたら何かが変わる」ということをオーディション前から確信していたんです。

 実際、出演の前と後では自分の内面に変化がありました。まず阿部寛さんや長澤まさみさんを始めとする出演者の皆さん、そしてスタッフの皆さんの熱量、そして優しさをナマで感じたことが大きかったなと。一人の俳優としてというよりも、一人の人間としてこうありたいという気遣いをたくさん教えていただきました。

 あと、劇中の“東大専科”メンバーとして、同世代で活躍されている皆さんと一緒にお芝居ができたのもとても大きなことでした。

 お芝居についてあれだけ語り合ったこともなかったですし、作り上げていく中で誰かが良いお芝居をするとすごくうれしいんです。そして、リアルな話、悔しい思いもありました。

 同世代で、しかも最前線でやられている方々とあそこまでガッチリやらせていただく機会もなかったですし、同世代だからこその刺激もあった。もっと、もっと、自分のお芝居のレベルを上げたいと心から思いました。

 あと、これは完全に技術的なことになるんですけど、もともと私は“表情の芝居”が苦手だという意識があったんです。

 オーディションの時もプロデューサーさんから「今の自分の課題は何だと思いますか?」と聞かれて「表情のお芝居が今は苦手で勉強中です」と答えていましたし。

 ただ、収録が始まってプロデューサーさんから「目を意識してお芝居をした方がいい」というアドバイスをいただいて、自分なりに試行錯誤をしながら実は目に力点を置いたお芝居にトライしていたんです。

 その結果、見てくださった方から「目が印象的だった」という言葉をいただけたのは本当にうれしかったです。チャレンジして、誉めてもらえた。この感覚は今回のことだけではなく、今後あらゆる部分で生きるものだと感じました。

 それと、演出の福澤克雄さんが「役者は30代から」という言葉をたびたびおっしゃってたのも印象に残っています。30代が楽しみになると同時に、良い30代を迎えるためには、今の20代をしっかり過ごさないといけないんだなとも思いました。

 30代の自分のために、今の自分がコツコツ積み重ねをしておく。多分、30代の自分も40代の自分のためにそうするんだろうなと思いますし、その結果、役者としても、人としても、魅力的な存在になれたらなと思います。

 …真面目な話になっちゃいましたけど大丈夫ですかね(笑)。でも、今、本当にそう思いますし、そうなれるように一つ一つ大切に生きていきたいと思います。

(撮影・中西正男)

■志田彩良(しだ・さら)

1999年7月28日生まれ。神奈川県出身。テンカラット所属。小学6年のときにスカウトされ、芸能界入り。2013年から「ピチレモン」で専属モデルを務める。14年、短編映画「サルビア」に主演し女優デビュー。17年には「ひかりのたび」で長編映画に初主演する。TBS系ドラマ「チア☆ダン」、「ドラゴン桜」などで注目を集める。10月15日公開の映画「かそけきサンカヨウ」(今泉力哉監督)に主演している。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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