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号泣勝利の拳四朗 気になる長期防衛と統一戦の行方は

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真提供全て FUKUDA NAOKI

24日、エディオンアリーナ大阪でWBC世界ライトフライ級タイトルマッチが行われ、王者・寺地拳四朗(29=BMB)と同級1位・久田哲也(36=ハラダ)が対戦した。

試合の展開

試合が始まるとお互いジャブをつきながら間合いを測る。動きながらパンチを打つ拳四朗に対し、久田はプレッシャーを掛けて中に入ろうと隙をうかがっていた。共に前回の試合からブランクがあるため慎重な立ち上がりとなった。

次のラウンドで試合が大きく動く。久田が前に出ようとしたところに拳四朗のカウンターのワンツーがヒット。久田からダウンを奪った。

そこから拳四朗がペースを掴む。久田もポイントを取り返そうと前に出るが、拳四朗がサイドに動きながらアウトボクシングでポイントをとっていく。

中盤以降は、久田も前に出てチャンスをうかがうが、跳ねるようなステップを踏む拳四朗を捕まえきれない。拳四朗は不意の右ストレートや、時折ボディも織り交ぜながらパンチをまとめていた。

後半になっても拳四朗のペースは落ちず、ヒットアンドアウェイで久田にダメージを与えていく。久田も打ち返すが、拳四朗のステップが速く追撃できない。

最終ラウンドでは、久田も打ち合いで見せ場を作ったが、拳四朗が最後までペースを譲らず、採点は118-109が2者、119-108が1者の3−0で拳四朗の勝利。8回目の防衛に成功した。

1年4ヶ月ぶりの試合となったが、拳四朗が王者の強さを見せつけた。

2R目でダウンを奪った拳四朗
2R目でダウンを奪った拳四朗

強い姿を見せていきたい

「こんな僕を応援してくれて嬉しいです。これから勝ち続けて皆さんに恩返していきたい」

試合後の勝利者インタビューで涙ながらに語った拳四朗。

今回の試合は本来昨年12月に予定されていたが、自身の飲酒トラブルにより延期となり、JBCから3か月のライセンス停止処分。6か月で48時間以上200時間以内の社会貢献活動を義務付けられていた。

それゆえにいつも以上にプレッシャーが掛かっていただろう。試合では緊張しないと話し、普段から笑顔を絶やさない明るい性格の拳四朗だが、今回の試合では勝利後も一切笑顔はなかった。

ボクサーは様々な人の応援や協力でリングに立つことができる。今回の件でそれをより一層感じたことだろう。

現役で日本人最多防衛回数を誇る拳四朗だが、実力はトップクラスだ。独特なステップワークからパワフルなパンチで久田にダメージを与えていた。

今後の決意表明として「チャンピオンらしくもっと強くなって皆さんに強い姿を見せていきたい」と話した。

気になる長期防衛と統一戦の行方

現役で国内最多である8度目の防衛に成功した拳四朗。ここのところ無敵で、世界ランカー相手でもまだ底を見せていない。

他団体の王者との統一戦も気になるところだ。この階級は以下の王者が君臨している。

WBAスーパー|京口紘人

WBAレギュラー|カルロス・カニサレス

WBO|エルウィン・ソト

IBF|フェリックス・アルバラード

WBAスーパー王者の京口紘人は、拳四朗と同世代でライバル関係にあるため注目が集まっている。

また、日本人として初めて主要四団体(WBA・WBC・IBF・WBO)で世界タイトルを獲得した高山勝成が5月にWBO王者エルウィン・ソトに挑戦する。

多くの日本人が活躍する階級なだけに、他団体の動向も気になるところだろう。

拳四朗も「ベルトは(4団体)全部取る」と統一戦にも興味を示している。この階級では安定王者となり並の挑戦者では相手にならない。

2017年5月に王者になってから王者として4年経ち、8回の防衛記録を誇る。抜群の安定感がある拳四朗だが、体の成長も含め減量も苦しくなってきている。そう考えるとピークも近い。

具志堅用高氏が記録を持つ13回の防衛目標を越えるのが目標の拳四朗だが、ここからはより自制が求められてくる。

統一戦も含めて、今後に注目していきたい。

試合後にはいつも笑顔の拳四朗だが、今回は安堵した表情が印象的だった。
試合後にはいつも笑顔の拳四朗だが、今回は安堵した表情が印象的だった。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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