本田圭佑のミラン逆オファー、現地メディアの反応は? 「魅惑的」との声もあるが…
本田圭佑がミランに「助け」を申し出たのには、イタリアのメディアも驚いただろう。
9月29日の第6節でフィオレンティーナに1-3と敗れたミランは、セリエAで16位と低迷している。データサイト『Opta』によると、開幕6試合で4敗はじつは81年ぶり。1930-31シーズン、38-39シーズンに続くクラブ史上3度目の最悪のシーズンスタートだ。
不振にあえぐ古巣に、何か手助けしたいと思ったのか。本田はツイッターで「ずっと助けたいと思っている。必要なときは連絡をくれ!」とミランに呼びかけた。
◆ミランは本田を必要としているのか?
現状のミランが補強を必要としているかといえば、答えはイエスだ。前述のように深刻な成績で苦しんでいるうえに、結果だけではなく内容も芳しくないからである。
今季のミランは、マルコ・ジャンパオロ監督を新たに招へいした。昨季までサンプドリアで高く評価された指揮官だ。だが、トレクアルティスタ(トップ下)を置く4-3-1-2システムを好む監督と、純粋なトレクアルティスタがいない現チームがフィットしていない。
プレシーズン途中から苦しみ、リーグ開幕戦で黒星発進に終わると、ジャンパオロはシステムをいじって修正を試みた。だが、結果こそ2連勝と残せたが、内容は向上せず。ライバルのインテルとのミラノダービーで0-2と敗れると、批判の声は一気に大きくなった。
続くトリノ戦では初めて昨季までのシステム(4-3-3)を用い、一定の改善がみられたが、逆転負けで結果につながらず。そしてフィオレンティーナ戦で再び完敗し、本拠地サン・シーロの観客から激しいブーイングを浴びせられた。ウルトラスに至っては、終盤に席を空けて抗議したほどだ。
前述のように81年ぶりの低調なスタート、降格圏に勝ち点1差の16位という順位に加え、リーグワースト2位タイの総得点4でその半分はPKと、結果も内容も極めて厳しい状況にあるのが、現在のミランの立ち位置だ。
だからこそ、本田は何かできることがあると思ったのかもしれない。しかも、ジャンパオロが必要とし、ミランに欠けているのは、トレクアルティスタだ。ただそれは、「ミランには本田が必要」とイコールではない。
◆各メディアが報じるも、扱いは…
地元メディアは、本田の呼びかけを報じた。ただ、印象としては、あくまで「ネタ」のひとつとして、だ。
3大スポーツ紙の『コッリエレ・デッロ・スポルト』や『トゥットスポルト』の電子版は、本田のツイートを紹介した程度。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』に至っては、自社ではなく提携するミラン専門サイト『PianetaMilan』の記事で済ませている。
『Milan News.it』や『IL MILANISTA.it』、『milanlive.it』といったその他のミラン専門サイトも、ツイート紹介程度の記事でしかない。せいぜい『milanlive』が「チームに売り込むにはかなり興味深いやり方」という一文を織り込んだ程度だ。
一般紙では、『コッリエレ・デッラ・セーラ』が、本田がマンチェスター・ユナイテッドにも売り込んでいたことを合わせて記事にした。元フランス代表のエマニュエル・プティが「気迫と発想力、勝者のメンタリティーを持つ選手はどこに?」と、同じく不振のユナイテッドを批判したのを紹介し、「プティの疑問に答えるのは本田か?」と締めくくっている。
テレビメディア系では、『スカイ・スポーツ』が「真面目とウィットのはざまで魅惑的なアイディアが届いた」と報じたが、本気度は感じられない。その『スカイ』で活躍し、移籍専門記者として有名なジャンルカ・ディ・マルツィオ氏のサイトでは、このように伝えられている。
「ジャンパオロのポストを手にしたいのか、サン・シーロのピッチにまた降り立ちたいのかは分からない。確かなのは、ミランが新たにもうひとりの候補者をあてにできるということだ」
◆ミラン時代の成績はネック
各メディアが大きく取り上げていないのは、現実的でないことに加え、ミラン時代に本田が「助け」となるほどのインパクトを残せなかったからでもあるだろう。
『スカイ』は、「本田のミランでの経験には浮き沈み」があったと指摘。ミラノを拠点とする一般紙『イル・ジョルナーレ』に至っては、「2014年に豪華にお披露目された本田だが、クラブの期待に見合うパフォーマンスではなく、軌跡を残すことなく2017年夏に去った」と手厳しい。
一方で、『フォックス・スポーツ』は、「特別な能力はなかったが、最大限のプロ意識」「見事なシュートと素晴らしい技術クオリティーを持った左利きのトレクアルティスタ」と、本田をたたえる表現も用いている。
もちろん、サッカー界は「一寸先は闇」。何が起きるかはだれにも分からない。そして本田は、世界を驚かせる行動を繰り返してきた。ただ確かなのは、かつての背番号10のメッセージが、少なくとも現時点では本気で受け止められてはいないということだ。