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ボヌッチ、ミランからユーヴェへの復帰は望まれず? 「プロの裏切り者」と批判の声も

中村大晃カルチョ・ライター
3月31日、アリアンツ・スタジアムで古巣ユヴェントス相手に得点した際のボヌッチ(写真:ロイター/アフロ)

怪しげな雰囲気が絶えなかった中国資本から、真意はともかく資金力は確かなアメリカ資本に経営権が移り、ミランは再び新時代を迎えた。イタリア『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のセバスティアーノ・ヴェルナッツァ記者は「夜は終わり、ミランに夜明け」というタイトルのコラムを記している。

確かに、ヘッジファンド「エリオット」が新オーナーとなり、ミランはヨーロッパリーグ出場権を取り戻した。マルコ・ファッソーネCEOやマッシミリアーノ・ミラベッリSDに代わる新首脳陣は、ミランとの絆が深い面子で形成されつつある。少なくとも、先行き不透明感しかなかった前体制よりは希望の光が見えてきた。

ただ、レオナルド・ボヌッチが思い描く「夜明け」は、ミランとミラニスタが願うそれとはまったく別物のようだ。すでに報じられているように、ボヌッチは古巣ユヴェントスへの復帰を望んでいる。7月26日には、ミランのレオナルド新ゼネラルディレクターが選手の移籍希望を認めた。

◆サポーターは反対も心配無用か

だが、ボヌッチがユヴェントスを去ったのは、わずか1年前のことだ。誰もが驚くかたちで飛び出し、ミランではキャプテンマークも巻いた。「アリアンツ・スタジアム」で得点した際には、以前時代と同じポーズでゴールを祝福。古巣サポーターからの反感が強まったのは言うまでもない。

そのボヌッチがユーヴェに戻りたがっているとなれば、物議を醸すのは当然だ。実際、復帰を望まないサポーターは少なくない。『ガゼッタ』電子版のアンケートでは、6000人超のユーザーの76%が、『スポーツメディアセット』では3万5000人のうち78%が、ボヌッチ復帰に反対している。

ただ、ボヌッチが世界有数のセンターバックであることも事実だ。G.B.・オリヴェーロ記者は25日の『ガゼッタ』でのコラムで、「環境を知り、勝利に飢え、4バックも3バックもこなせるボヌッチの復帰は朗報」と主張。ミランもゴールゲッターを必要としていることから、ボヌッチとゴンサロ・イグアインのトレードは「Win-Win」になり得るとの見解を示した。

サポーターを気にする心配はないとの声もある。『トゥットスポルト』のヴァルテル・ノート副編集長は、「納得させるのが簡単でないことは確か」としつつ、勝利に貢献するパフォーマンスやゴールによって、ファンの不満を鎮めることは可能と主張した。

ステーファノ・アグレスティ記者も『Calciomercato.com』で、サポーターが不服なのは「副次的な側面でしかない」とコメント。「数試合勝つだけですべて元通り」になると予想する。

◆若手とのトレードにはアレルギー反応

だが、そのアグレスティ記者は「再獲得を考えるのは、手放したとき以上に深刻な過ち」とも指摘した。「退団を望み、ライバルの主将になることも受け入れた選手に弱さを見せることになる」とし、ダニエレ・ルガーニやマッティア・カルダーラら若手を放出し、犠牲にすることにも懸念を示している。

特にカルダーラは、アタランタでの武者修行を経てようやく加わった期待の若手だ。その有望株をまったくプレーさせずに手放すことへのアレルギー反応は小さくない。SNSでは「カルダーラに手を出すな」というハッシュタグがサポーターの間で出回っている。

オリヴェーロ記者も、カルダーラ放出はユーヴェにとって危険な賭けになり得ると指摘した。OBのアンジェロ・ディ・リーヴィオも、『Tuttomercatoweb』のインタビューで、ボヌッチの復帰希望は「理解できない」とコメント。さらに「何よりもカルダーラ放出なら驚き」とトレードに反対している。

◆ミランからも冷たい視線?

とはいえ、退団希望が分かった以上、ミラン残留もいばらの道だ。ノート記者は「ボヌッチはこういった状況に耐えられる気質の強さを示してきた」と話すが、当然、批判的な論調も出てきている。

クリスティアーノ・ルイウ記者は『Calciomercato.com』で、ミラニスタに「誰を『オレのキャプテン』と呼んでいたか分かったか?」と皮肉を突きつけつつ、「技術的・道徳的という以上に、財政的な義務」とボヌッチ売却を主張した。

アグレスティ記者に至っては、ボヌッチが「もはやプロの裏切り者のようなもの」と、ユーヴェとミランの両クラブを裏切ったと断じている。

実際、自ら望んで加入しながら、1年で退団を希望したのであれば、「ミランのキャプテンマーク」を軽んじていると言われても仕方がない。

パオロ・マルディーニが巻いていたころのように、腕章が重みを取り戻したとき、ミランは真の夜明けを迎えられるのかもしれない。それとも、昨今よく言われるように、「もはやそういう時代ではない」のだろうか…。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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