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【能登半島豪雨被害】塚田川氾濫の航空写真と防災対策|想定外から命を守る方法

栗栖成之防災士ライター
出典:地理院地図(電子国土WEB)輪島東部地区(9/24撮影)写真を筆者加工

9月21日に能登地方周辺に発生した線状降水帯によって、石川県では観測史上最大の大雨を記録。中小河川の氾濫が相次ぎ土砂災害もいたる所で発生し、甚大な被害を引き起こしました。

特に塚田川では、捜索に入った救助隊が発した「地形が変わってしまっている」との言葉が驚きでした!

甚大な災害が起きると、ほとんどのケースで「想定外」と表現されます。では、想定外な状況に対応するにはどうすればよいのでしょう。

今回は、変貌した塚田川の被害状況を航空写真で確認しながら、想定外の状況を改めて考えたいと思います。

輪島市 塚田川流域は広範囲に「斜面崩壊・土石流・堆積分布」が起きている

出典:国土地理院 令和6年(2024年)9月20日からの大雨に関する情報 斜面崩壊・土石流・堆積分布図「輪島西」を筆者加工
出典:国土地理院 令和6年(2024年)9月20日からの大雨に関する情報 斜面崩壊・土石流・堆積分布図「輪島西」を筆者加工

これは国土交通省が公開している、令和6年9月20日からの大雨による斜面崩壊・土石流・堆積分布図 「輪島西」から、塚田川周辺を抽出し加工した画像です。

国土交通省の発表によると、今回の能登半島豪雨では27河川が氾濫し浸水被害が発生。その内、輪島市では6河川が氾濫したとされていますが、9月25日13時に作成された「斜面崩壊・土石流・堆積分布図」を確認すると、塚田川流域が最も被害が多いことが分かります。

塚田川流域の航空写真位置図(範囲図)

出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)標準地図を筆者加工
出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)標準地図を筆者加工

このマップは、国土交通省が公開している地理院地図(電子国土WEB)の、標準地図を加工したものです。

塚田川上流から1~4の範囲に分けて、平常時と被災後の9月24日時点との違いを紹介します。塚田川流域では多くの個所で土砂災害が発生しており、上流部でも住宅が流される被害が起きていました。

●範囲1:上流部でも被害が発生

住宅が点在する上流部において既に大きな浸水被害が起きており、平常時の写真と比較すると住宅が1棟流されたように思われます。

また、川の蛇行部には流木が積み重なっているのが、ハッキリ分かります。このことから、土石流のような勢いで大量の土砂などが流れたことは、容易に想像できるでしょう。

▼平常時の写真

出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)写真を筆者加工
出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)写真を筆者加工

▼9月24日時点の被災状況

出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)輪島東部地区(9/24撮影)写真を筆者加工
出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)輪島東部地区(9/24撮影)写真を筆者加工

●範囲2:川の流れが変わり土砂災害も発生

範囲2では元の川の流れと全く違う場所を、水が流れているのが分かります。流れの勢いが凄すぎて、元の河川のとおり蛇行できずほぼストレートに水が流れたのでしょう。

流域で土砂災害も発生しています。また、流域近くの道路も水没していることから、当時川となっていた幅が従来の数倍に広がった証拠です。

さらに、塚田川に流れ込む支流も氾濫したことも、写真から読み取れます。

▼平常時の写真

出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)写真を筆者加工
出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)写真を筆者加工

▼9月24日時点の被災状況

出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)輪島東部地区(9/24撮影)写真を筆者加工
出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)輪島東部地区(9/24撮影)写真を筆者加工

●範囲3:道路南西の住宅が被害を受けている

範囲3では道路南西に位置する住宅が、数棟流されていることが分かります。この範囲では川が大きく曲がる地域で、大きな被害が起きています。

また、塚田川から離れた場所でも複数の土砂災害が起きていますから、本当に想定外の豪雨がこの地域を集中的に襲った証です。

▼平常時の写真

出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)写真を筆者加工
出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)写真を筆者加工

▼9月24日時点の被災状況

出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)輪島東部地区(9/24撮影)写真を筆者加工
出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)輪島東部地区(9/24撮影)写真を筆者加工

●範囲4:下流域でも相当数の住宅が浸水被害を受けている

海に流れ出る最下流部では、上流から流れてきた水が広範囲に浸水したことが分かります。

また、河口部には大量の土砂が堆積し、海岸線の状況を一変させています。平常時の写真では透き通った海が、24日の写真では泥によって広範囲に濁っています。

上流部から河口まで塚田川の状況を確認しましたが、相当の泥や流木などが流れ込んでいるのがお分かり頂けたでしょう。また、住宅被害も甚大であり尊い人命までも失われました。

▼平常時の写真

出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)写真を筆者加工
出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)写真を筆者加工

▼9月24日時点の被災状況

出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)輪島東部地区(9/24撮影)写真を筆者加工
出典:国土地理院 地理院地図(電子国土WEB)輪島東部地区(9/24撮影)写真を筆者加工

想定外の自然災害にどう対処するのか?確実に生活再建できる国や自治体からの支援も必要

今回の塚田川をはじめとする河川の氾濫は、想定外の要素がいくつも重なって起きたとされています。

  • 線状降水帯が発生
  • 元旦の地震で地盤の緩みや堤防の一部決壊があった
  • 大河川だけでなく中小河川の水位が急激に増えた

これらは全て想定外の状況であり、普段では考えられないことが起きたと言えるでしょう。

今回の豪雨は、24時間雨量が400ミリ超となる観測史上最大の大雨となりましたが「線状降水帯発生情報」は発表されていません。

ということは、現代のスーパーコンピューターでも災害級の豪雨を、確実に予測するのは不可能と言えます。ではどうするのか、ですが・・

「大雨が予想されたら、安全な場所に早く逃げる」しか、思い当たりません。

行政からの指示を待っていると逃げ遅れる可能性もありますし、夜中や大雨の中で避難するのは危険です。

今後は、ハザードマップで浸水想定のない地域でも、小さな河川などがある場合はスピード感を持って自ら逃げて、命を守らないといけないのでしょう。

さらに、自然災害における被害は年々増加傾向にあることから、被災者生活再建支援制度などの内容を見直して「確実に生活再建できる金額を支給」する必要が、今後は国や自治体に求められます。

今回ご紹介した現地の航空写真などは、国土交通省 国土地理院「令和6年(2024年)9月20日からの大雨に関する情報」サイトから、誰でも無料で見ることができます。

防災士ライター

これまで、洪水・土砂災害・地震・津波・高潮など、あらゆるハザードマップを作成。2017年に防災士とひょうご防災リーダーの資格を取得。2014年からWEBライターとして活躍し、現在では経験と資格を活かしてさまざまなメディアに多ジャンルにて記事を投稿中!

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