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【名古屋市】おいしい食事とお酒とつながりを「古民家韓かふぇ いるだ」さん

羽矢旬良ライター(名古屋市)

2023年9月にオープンしてからまだ2カ月足らずですが、今やすっかり近隣に認知され、地域に溶け込んでいるカフェがあります。
「いろんな方に支援していただいてオープンすることができました。奇跡のお店だと感じています。感謝しかありません」そう話すのは店主のリ・ヒョウンさん。
今回は、「古民家韓かふぇ いるだ(以下、いるだ)」さんにおじゃまして、おいしいランチをいただきました。それから、お店を開くまでの経緯と店主の夢も聞かせていただきましたよ。

「いるだ」さんは、築100年近くたつ古民家を改装したお店。店内はおよそ15畳ほどでこぢんまりとしています。内装のほとんどは和のテイストで新しく整えられていますが、天井を剥がしてはりをむき出しにしたり、ガラス戸はそのまま使うなど、当時のものをある程度残していますのでとても味わい深い雰囲気です。

そして、席はなんと学校机。お客さん同士の距離が近づくのではないかと考えてこのスタイルに決めたそうです。
「今はみんなスマホを見ながら自分の世界に浸る時間が多いと思うんですね。なので、あえてそれができない空間を作ろうと思いました。お客さん同士がフレンドリーになってくれればいいなと思っていたら、狙い取りになりました(笑)」
確かにこの距離では周囲を気にせざるを得ませんね。それに、ここに座れば、どんなに偏屈になった人でも、素直な気持ちを取り戻せそうな気がします。

「もし椅子が硬かったら机の中にマットが入っているので自由に敷いてください」と優しい気づかいも。

ランチは黒板メニューから選びます。この日筆者は「海鮮スンドゥブ」をオーダーしました。

ランチと一緒にドリンクを注文すると、ドリンクの代金が半額になります。

ほどなく運ばれてきたのがこちら。グツグツ煮えているスンドゥブが食欲をそそります。

スンドゥブのレシピは、リ・ヒョウンさんのお父さんのレシピを採用しているそうです。リ・ヒョウンさんのお父さんは、昭和区広路通りで営む「リトルコリア」のオーナーであり料理長。「リトルコリア」さんのスンドゥブは海鮮だけでなく牛骨からもだしをとっているため、とてもコク深くおいしいのです。筆者も以前味わったことがあるのですが、まさにその味でした。
「父は釜山出身なので、濃いめの味付けなんですね。最初は私の味付けで料理を提供しようとしたのですが、濃い味を好まれるお客さまもいらっしゃるので、いろいろ調整した結果、今は父のレシピと私のレシピが混在しているような感じです」(リ・ヒョウンさん)

卵も中でほどよく固まっていました。かき混ぜると全体がマイルドな味わいに。

併せて提供していただいたのは、目玉焼き。「まだメニュー化していないのですが、ご飯に乗せて食べていただけるよう、トッピングメニューにしようかなと考えているところです」(リ・ヒョウンさん)

さっそくごはんに乗せて、小鉢にかかっていた自家製オリエンタルソースをかけて食べてみました。おいしい!このトッピングメニューはありですね。

メニューの価格設定は相当迷ったようですが、来店客が属している会社や友人知人関係などに応じて割引する方式にしたそうです。
夜はお酒のメニューが豊富にあります。日曜日はメニューにないカクテルも作ってくれるそう。

「この家、古いので雨の日は上から雨音が聞こえるんです。この雨音がすごく心地よくて。ついついお酒が進んでしまうんです(笑)」と雨の日もおすすめなんだとか。

リ・ヒョウンさんが日本に来たのは小学校4年生の頃。およそ3年ほど名古屋で過ごした後、韓国に帰国します。帰国後も名古屋で過ごした日々が忘れられず、毎年名古屋に遊びに来ていたそうです。そして、就職の際は日本の企業を希望し、通訳士として働いていました。そうして過ごす中、日本で過ごした頃とその後の韓国での経験から、将来は日本で学校を開きたいという思いも持っていたそうで、やがて仕事を辞め、名古屋で韓国語学校の教師をしながら親友と共に夢の実現へと歩み始めます。「年齢とか能力とか、そういったものは一切関係なく、みんなが癒される場をつくりたいんです。だから、今は一生懸命働かなないと。近道じゃなくて、自分達らしい道を歩いていきたい。それも、何もかも我慢してお金を貯めてというのではなく、身近な夢をかなえながら大きな夢に向かうといった感じで進んでいきたい。お店を始めるのは身近な夢でした。そして、第一歩です。まずは、仲間を見つけることができる場、人生の先輩から学べる場を作りたいと思っていました。そんな夢を周りに話していたら、たくさんの方が『協力するよ』って言ってくれて、自分達だけではまだまだ無理だと思っていたお店を、今回オープンすることができました。一緒に頑張ってくれている親友のハイジにも『ありがとう』と言いたい」(リ・ヒョウンさん) 

「いるだ」は韓国語で「成し遂げる」や「かなえる」といった意味を持つ言葉です。お店は、店主や訪れた人が思いを成し遂げるためのベースといったところでしょうか。帰りぎわに振り返り、砂利道の奥を眺ながら「あの看板のような素朴な気持ちの持ち主が集まる場であり続けて欲しい・・・」そう感じていました。

店舗情報

店名:古民家韓かふぇ いるだ
住所:名古屋市昭和区滝子通り1丁目12番地24
営業時間:ランチ 11:30~14:00(Lo13:30)ディナー〈月・火〉17:30~21:30(フードLo20:30)〈日〉16:00~22:00(フードLo21:00)
※営業時間は変更になる場合あり
休日:水曜日(他、不定休あり)
公式Instagram

※取材では「いるだ」様の協力により、ソフトドリンクと一部の料理を無償で提供いただきました。本記事の制作にあたってはガイドラインに基づき公平中立に制作しています。

ライター(名古屋市)

名古屋生まれの名古屋育ち、現在は近郊在住。ライトなものからディープなものまで、名古屋のリアルを主観を添えてお伝えします。

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