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梅毒の皮膚症状を見逃さないで!硬性下疳からバラ疹まで - 皮膚科医が解説

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【梅毒の基礎知識 - 症状と感染経路】

梅毒は、トレポネーマ・パリダムという細菌による性感染症です。主に性的接触により感染しますが、感染した母親から生まれた子供に感染する先天梅毒もあります。

初期症状として、感染部位に無痛性の硬性下疳(こうせいげかん)ができます。これは小さな腫れ物で、数週間で自然に治ってしまうため、見過ごされやすいのが特徴です。その後、体の各所に銅色の斑点や湿疹などの皮膚症状が現れる二期梅毒へと進行します。

さらに治療をせずに放置すると、三期梅毒となり、脳や心臓などの重要臓器に深刻な合併症を引き起こします。特に、梅毒性大動脈瘤は致死的な状態につながる可能性があるため、注意が必要です。

【梅毒の多彩な皮膚症状 - 初期から後期まで】

1. 初期症状(硬性下疳): 感染部位に現れる無痛性の硬い腫れ物で、数週間で自然治癒します。

2. 二期梅毒の皮膚症状:

- 梅毒性乾癬: 手のひらや足の裏に、赤褐色のフケ(鱗屑)を伴う丘疹が現れます。

- 扁平コンジローマ: 肛門周囲や外陰部に、白っぽい湿潤な丘疹が多発します。

- 粘膜病変: 口腔内や咽頭に、白斑や潰瘍が生じることがあります。

- バラ疹: 体幹部や四肢に、淡紅色の斑や丘疹が広範囲に現れます。

3. 三期梅毒の皮膚症状(ゴム腫): 皮下の結節や潰瘍が現れ、治癒すると瘢痕(はんこん)を残します。

これらの皮膚症状は、自然に消退と再燃を繰り返すことが特徴です。

【診断と治療法 - 皮膚科を受診しよう】

梅毒が疑われる場合は、速やかに皮膚科を受診しましょう。血液検査により梅毒の診断を行い、感染ステージに応じた治療を開始します。

治療には、ペニシリン系抗菌薬の注射が用いられます。ペニシリンアレルギーの方には、他の抗菌薬が処方されることもありますが、妊婦の場合は胎児への感染を防ぐためペニシリン脱感作療法を行い、ペニシリンを投与します。

治療開始後、ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応と呼ばれる一時的な症状の悪化が見られることがありますが、治療の継続が重要です。治療後も、定期的な血液検査によるフォローアップが必要不可欠です。

【予防策 - コンドームの使用と定期検査】

梅毒の予防には、コンドームの適切な使用が欠かせません。性感染症のリスクがある場合は、必ずコンドームを使用しましょう。また、感染の早期発見と治療のために、定期的な梅毒検査を受けることが推奨されます。特に、HIV感染者や妊婦は注意が必要です。

パートナーへの感染を防ぐためにも、感染が判明した場合は速やかにパートナーに連絡し、検査と治療を促しましょう。

梅毒は古くから知られる性感染症ですが、近年再び増加傾向にあります。自覚症状が乏しい場合もあるため、感染に気づかないまま放置してしまうケースが少なくありません。特に、初期症状や二期梅毒の皮膚症状は見過ごされやすく、他の皮膚疾患と混同されやすいため、注意が必要です。

性感染症が疑われる皮膚症状がある場合は、躊躇せずに皮膚科を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。早期発見・早期治療に努め、重篤な合併症を防ぎましょう。

参考文献:

Clin Dermatol. 2024 Mar-Apr;42(2):134-154. doi: 10.1016/j.clindermatol.2023.12.009.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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