パーキンソン病患者は皮膚がんリスクが高い?予防と早期発見のポイントを専門医が解説
【パーキンソン病と皮膚がんの関連性 - これまでの研究から分かったこと】
パーキンソン病は、中枢神経系の変性疾患の一つで、振戦、筋固縮、無動などの運動症状を特徴とします。一方、皮膚がんは、皮膚に発生するがんの総称で、悪性黒色腫、基底細胞がん、扁平上皮がんなどが含まれます。一見、関連性が薄そうなこの2つの疾患ですが、実は過去の疫学研究で、パーキンソン病患者は皮膚がん、特に悪性黒色腫の罹患率が高いことが報告されてきました。
この関連性については、2011年にLiuらが行ったメタ解析で、パーキンソン病患者の悪性黒色腫リスクが健常者の約2倍であると報告されて以降、多くの研究で確認されています。2015年のHuangらのメタ解析では、パーキンソン病患者の悪性黒色腫リスクは2.4倍、非黒色腫性皮膚がん(基底細胞がんと扁平上皮がん)のリスクも1.2~2.1倍高いとされました。
この関連性の背景には、パーキンソン病と悪性黒色腫に共通する遺伝的要因や環境要因の存在が示唆されています。例えば、α-シヌクレインというタンパク質の凝集はパーキンソン病の病理の特徴ですが、悪性黒色腫でもα-シヌクレインの発現亢進が報告されています。また、紫外線曝露や皮膚の色素性病変などの環境要因も、両疾患の発症に関与する可能性が指摘されています。
【皮膚がんのリスク因子とパーキンソン病の関係 - 最新の研究結果から】
そこで注目されるのが、今回Aziziらが発表した最新の研究結果です。彼らは、パーキンソン病患者と健常者を対象に、日光角化症、非黒色腫性皮膚がん、悪性黒色腫のリスク因子を比較検討しました。
その結果、パーキンソン病患者では、長期の日光暴露、そばかす、日光黒子(solar lentigo)が皮膚がんと関連していたのに対し、健常者ではそのような関連性は見られませんでした。一方、色素性母斑の数や異型母斑の有無は、両群ともに皮膚がんとの関連性は認められませんでした。多変量解析の結果、皮膚がんのリスク因子は高齢、白皮、長期の日光暴露であり、パーキンソン病自体は独立したリスク因子ではないことが示されました。
この結果から、パーキンソン病患者の皮膚がんリスクを評価する上では、母斑の数よりも、日光暴露歴や皮膚所見(そばかす、日光黒子)を重視すべきだと考えられます。ただし、パーキンソン病と皮膚がんの関連性を完全に説明できるわけではなく、さらなる研究が必要とされます。
【パーキンソン病患者の皮膚がん予防と早期発見のポイント】
Aziziらの研究からも明らかなように、パーキンソン病患者では皮膚がんのリスクが高く、定期的な皮膚チェックが重要です。特に、日光暴露歴が長い患者や、そばかす・日光黒子のある患者は要注意です。皮膚に異変を感じたら、早めに皮膚科を受診しましょう。
また、普段から日光対策を心がけることも大切です。紫外線は皮膚がんの最大のリスク因子であり、日傘の使用や日焼け止めの塗布などで、過剰な日光暴露を避けるようにしましょう。
定期的な皮膚チェックと日光対策を習慣づけることで、パーキンソン病患者の皮膚がんリスクを下げることができます。皮膚に異変を感じたら、早めに皮膚科を受診し、専門医の診察を受けることが大切です。皮膚がんは早期発見・早期治療が何より重要で、それが予後の改善につながります。
参考文献:
1. Azizi E et al. Risk factors for actinic keratosis, non‐melanoma skin cancer and cutaneous malignant melanoma in persons with and without Parkinson's disease: a cross‐sectional study. Skin Health Dis. 2024;e464. https://doi.org/10.1002/ski2.464