今年のワールドシリーズは史上最も暑い試合に 得するのは打者か投手か?
追記:第1戦開始時の気温は39.4℃まで上がり、ワールドシリーズ史上最高気温を記録。結果は3対1でドジャースが勝利。全得点は3つのホームランが関与。試合時間は1992年以来最も短い2時間28分。
第2戦開始時の気温は33.9℃。結果は7対6でアストロズが勝利。ワールドシリーズ最多となる8本のホームランを記録。
暑さは打者に味方したか。
ドジャース・前田健太選手やダルビッシュ有投手の活躍が期待される今年のワールドシリーズ。その第1、2戦は、アメリカ時間24日(火)と25日(水)にロサンゼルスのドジャーススタジアムで開催されます。
今、これらの試合は「ある理由」から前代未聞となる可能性があると話題になっています。
その理由とは、現在ロサンゼルスを襲っている記録的な熱波です。秋だというのに、猛暑警報が発令されており、24日(火)の最高気温は39℃、25日(水)は37℃まで上がることが予想されています。この時期の最高気温の平均は26℃なので、10℃以上も高いのです。
試合開始は夕方ですが、それでも35℃以上の高温が予想され、これまでの最高気温の記録である34℃を超えて、史上最も暑いワールドシリーズとなる可能性が出ています。
高温の理由
何がこの高温をもたらすのでしょうか。
それはカリフォルニア南部に吹く、高温で乾燥した「サンタアナ(Santa Ana)」と呼ばれる局地風です。アメリカ大盆地に発生した高気圧から吹き出した風が山を越え、フェーン現象を起こし、高温となってロサンゼルス周辺に吹き降りるのです。
この「サンタアナ」が、ワールドシリーズの勝敗に影響をもたらすかもしれないのです。
投手に有利な風
ドジャーススタジアムに北東のサンタアナ風が吹き込むと、ちょうど投手の投げる球にとっては追い風、逆に打者にとって向かい風となります。当日は10メートルを超えるような強い風が予想されていますから、打者の打つボールの飛距離がなかなか伸びない可能性が出てきます。
打者に有利な気温
しかし反対に風が弱まれば、打者にとって有利な状況が生まれる可能性があります。それはなぜかというと、気温が高いと空気が膨張し、空気の密度が小さくなるので、ボールの空気抵抗も減り、球が飛びやすくなるためです。
ではその程度はどれくらいでしょうか。
イリノイ大学のアラン・ネイサン名誉教授の研究によると、気温が約5℃上がるごとにボールの飛距離が1メートル伸びるのだといいます。
実際の試合においても、次のような結果が出ています。
2001年以降にドジャーススタジアムで行われた試合の平均得点数は、気温が32℃以上の時は4.36点であったのに対し、16℃以下の場合は3.85点と低かったようです。つまり暖かいほど球が飛び、点数が取りやすくなると言えるのです。
第3試合
一方で、ダルビッシュ投手の先発が予定されている第3戦は、27日(金)にテキサス州ヒューストンで行われます。その天気は「晴れ一時雨、最高気温21℃」と予想されています。
雨の試合で思い出されるのは、1996年に野茂英雄投手が達成したノーヒットノーランでしょう。野茂投手がこの快挙を成し遂げた時の天気は雨でした。もちろんこの快挙は野茂投手の実力に他ならないのですが、一部では雨も一因でないかと言われています。それというのも、雨でボールが濡れて重くなると、ボールの飛距離が減るからです。
もし雨となるならばピッチャーに味方をすることもありそうで、ダルビッシュ投手には追い風となるかもしれません。
<参考文献>
Effects of Meteorolgical Conditions on Fly Ball Distances in North American Major League Baseball Games (PDF)