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藤井聡太竜王(19)はA級に昇級できるか?「鬼のすみか」B級1組、3月9日に最終局鬼勝負

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月9日。東京・将棋会館、大阪・関西将棋会館において、第80期B級1組順位戦最終13回戦がおこなわれます。

 対戦カードは以下の通りです。(▲=先手、△=後手)

【東京】

△藤井 聡太竜王(9勝2敗)-▲佐々木勇気七段(7勝4敗)

▲稲葉  陽八段(8勝3敗)-△郷田 真隆九段(6勝5敗)

▲千田 翔太七段(8勝3敗)-△木村 一基九段(3勝8敗)

▲三浦 弘行九段(6勝5敗)-△松尾  歩八段(2勝9敗)

△屋敷 伸之九段(6勝5敗)-▲近藤 誠也七段(5勝6敗)

【大阪】

△久保 利明九段(3勝8敗)-▲阿久津主税八段(3勝8敗)

※横山 泰明七段(6勝6敗)=全局終了

 昇級争いの「自力」は藤井竜王、稲葉八段で勝てば昇級決定。「他力」「キャンセル待ち」の立場の千田七段は自身が勝ち、藤井、稲葉のいずれかが負けた場合に昇級となります。

 藤井竜王は自身が負け、競争相手の稲葉八段、千田七段がともに勝つというパターン以外は昇級です。場合分けの数としては7/8で昇級できるわけで、有利なのは間違いありません。しかし順位戦の歴史を振り返ればこうした場合、1/8の目が出ることもまたよくあります。

 また過去の例を見ると9勝3敗という好成績をあげた棋士は、ほとんど昇級を果たしてきました。データ上は他力の千田七段にとっても、望みは十分にあります。

 藤井竜王と佐々木七段の過去の対戦成績は、藤井竜王2勝、佐々木七段1勝です。

 藤井竜王の今年度成績は51勝12敗(勝率0.810)です。

 藤井竜王は5年連続勝率8割以上などの期待もかかっています。

 佐々木七段の今年度成績は20勝17敗(勝率0.541)です。順位戦では7連勝から4連敗。年度後半はやや不調で、黒星が重なってしまった印象です。今期は昇級の可能性がなくなってしまいましたが、来期に向け、そして今後の将棋界のゆくえを占う上でも、本局は大きな大きな一番となりそうです。先手番の佐々木七段がどのような作戦で臨むのかも注目ポイントでしょう。

 稲葉八段と郷田九段の過去の対戦成績は稲葉八段の2連勝です。

 千田七段と木村九段の対戦成績は千田1勝、木村2勝。木村九段は勝てば残留、負ければ陥落という、こちらも大変な状況です。昇級と残留、それぞれ目指すものが異なる二人が最終戦で戦うのも、順位戦らしいドラマです。

 久保九段と阿久津七段の対戦成績は久保11勝、阿久津7勝。敗れた方は陥落決定。勝った方は木村九段が敗れると残留となります。

「鬼のすみか」と呼ばれるB級1組。それぞれの最終戦は、文字通りの「鬼勝負」となりそうです。

 B級2組、A級は全日程が終わりました。

 フリークラス転出などがない限り、来期B級1組への新参加者5人は次の通りです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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