ryuchellさん夫婦で賛否も…新しい家族の形と、婚姻・結婚の在り方
■ryuchellさんとpecoさんが離婚・同居を発表したその後…
ryuchellさんとpecoさんが「人生のパートナーとして暮らしていく」とインスタグラムで発表し、話題になりました。『新しい家族の形』として、離婚をした上で家族3人で同居を継続することには賛否の声が集まりました。その後、webメディアのインタビューに2人そろって答え、夫婦関係を解消した背景や、発表への経緯を明かしていらっしゃいます。
記事によると、ryuchellさんは2021年からジェンダーやセクシュアリティに起因した悩みや辛さを感じるようになり、pecoさんに対して「今年の初めに気持ちを伝えた」と語っています。半年ほど夫婦での話し合いを経て、迷った末に4歳のお子さんにも伝えたうえで発表もした、というお話でした。
8月下旬の発表当初、「お二人が離婚したのか、していないのか?」に注目が集まりました。そして、事務所の発表で離婚をしたことがわかると、離婚と同居に対しての違和感を唱える声が多数上がり、「愛は偽りだったのか? 子どもが欲しいから嘘をついていたのか?」という批判的な論調にまで発展していき、ryuchellさんにはほかに恋人がいるのではないかという憶測もあったようです。婚姻関係とパートナーシップを結び付けて考える方が多くいらっしゃることがわかります。
ですが、パートナーシップの在り方はそれぞれですし、結婚生活の中で夫婦の関係性が変わる事例は決して珍しくありません。また、ryuchellさんご夫婦の場合、婚姻関係から事実婚に切り替えた、と理解できます。事実婚は、籍は入れないものの結婚と同等の契約をするもので、ただの同居や同棲とは違ったパートナーシップです。そう言える根拠として、記事内でpecoさんは「100%は無理なので、お互いに歩み寄って…70%、80%くらいにはできるようにと話し合った」と語っていましたが、これが婚活や結婚生活に必須の、互いの人生に深くかかわる交渉の描写です。二人がパートナーシップを放棄していないことは、このやりとりから垣間見えるのではないでしょうか。
私は婚活を専門としていますが、ご成婚されたものの戸籍をいっしょにしない事実婚、夫婦別姓や別居婚を前提とした婚活事例もたくさん見てきました。今回は、婚姻関係外の夫婦の在り方、パートナーシップについて事例を挙げつつ、考えていきましょう。
■日本は独特? 戸籍制度と関連が深い「入籍」
そもそも結婚の定義とは何でしょうか? プロポーズ、結婚式など様々な節目がありますが、日本では慣習により結婚を入籍とも言います。
これは、明治時代から日本が「戸籍制度」を採用しているためで、夫婦とその間に生まれた子供が同じ「氏」に入るという考え方に基づいているのはご存じかと思います。実は日本のような戸籍制度を導入している国は意外にも少なく、アジアの数か国しかありません。欧米諸国は、身分は個人ごとの登録簿で管理されていることが多いようです。家族関係を証明するには、目的ごとの書類発行が必要であるというデメリットもあるそうです。
日本の戸籍制度は出生からの家族や親族の身分関係を戸籍簿に時系列で記録できるというメリットがある一方、個人や結婚の現場で感じるデメリットもあります。
そのひとつが、夫婦別姓や事実婚に対して制度的な壁がありなかなか進まないことです。日本の戸籍制度と深く結びついているため、民法を変えなければ導入できないということがあるようです。全国7000人を対象にした調査でも賛成が70%超という結果(2020年 早稲田大学調べ)があるにもかかわらず、いまだ議論段階というのが日本の現状なのです。
■婚活の末、事実婚や夫婦別姓を選択する人も
私の結婚相談所では、成婚退会(結婚が決まっての退会)後1週間程度ですぐに入籍をされる方もいますし、1割程度は事実婚、または、改姓の問題で「入籍」を一時的に保留にすることを選ばれている印象です。規則上、成婚退会後に詳細の確認は出来ませんが、婚活中に子供の苗字や財産、改姓のデメリットを考え、「入籍」をせずにパートナーになることを決めている方も一定数いらっしゃいます。特に再婚の方、医師や研究者、経営者などキャリアのある女性が多いです。
例えば、「論文に名前を残すため、結婚で男性姓に変えたくない、男性の苗字を変えてもらうか事実婚を希望したい」という婚活女性を数名担当したことがあります。最初からその条件で婚活をする方もいますし、婚活が進むにつれて「名前が変わったらこんなデメリットがある」ということがわかってくるケースもあります。
ある女性は、真剣交際に入ってから相手の男性に「苗字を変えたくない、仕事上のデメリットや負担が大きい」と交渉したところ、男性のほうが「自分が苗字を変えるから「入籍」しましょう」ということになりました。当人同士がよくても親世代が世間体を気にするケースもありますが、こちらの男性は次男で、年齢も30代前半とお若く、親も60歳前後。海外の大学を卒業されたインターナショナルな感性の持ち主でしたからスムーズに話が進みました。
婚活してからデメリットや負担に気づく人も多いということは、結婚してからこんなに大変な苦労があるなんて……と感じる人がいてもおかしくありません。
■子供を振り回したくない、と「事実婚再婚」をした女性も
ほかにも、離婚歴があり、子供の苗字が変わることを懸念して、2回目の結婚は事実婚を条件にした女性もいました。
その女性は、医師だった元夫との間に、長女・次女・長男の3人の子供を出産していましたが、夫の不倫で離婚し、まだ小さかった下2人の子供を引き取りました。長女は当時中学生で、すでに成績優秀で医師を目指していたので、夫側についていきました。女性は就学中の子供を苗字のことで振り回したくないということで、自分も子供も離婚後も夫の苗字で暮らしました。その後、長女が夫の元を離れ自分が親権を持ち育てることになり、やはり苗字を変えなくてよかったと思ったそうです。良い出会いがあり、パートナーにふさわしい男性があらわれましたが、やはり子供のために苗字を変えたくない、ということで、そのまま20年来の事実婚を選択されています。現在は子供も成人したので、20年の節目で「入籍」を……という話も出ましたが、「逆に今更、「入籍」しなくても絆は同じ」という結論に至ったそうです。
■戸籍にとらわれない「新たな家族のかたち」もあっていい
このように現在の日本では、結婚=「入籍」、「入籍」=同じ苗字がセットになっていることで不都合が出ていることを現場で実感しています。さらに、「「入籍」しないこと」や「離婚」という選択に対し、裏切りや絶縁のような冷たいニュアンスを感じてしまう人も、年長者を中心に一定数いらっしゃいます。でも、古い時代の民法上のルールで生きるのは不釣り合いだと感じれば、新たな家族のかたちを選択されることは決して悪いことではありません。労働力としてだけでなくキャリア形成を考える女性が増加していけば、夫婦別姓を含めた婚姻の在り方に声を挙げる方が増え、事実婚も一般化していく可能性もあるでしょう。