アップル、iPadやMacの販売で新機軸、製品ラインアップの拡充とソフトウエアの無料化
かねてあった噂の通り、米アップルは22日に米サンフランシスコでイベントを開き、アイパッド(iPad)の新モデルを発表した。現行の4世代目アイパッドの後継となる「アイパッドエア(Air)」と、小型アイパッドの2世代目「アイパッドミニRetinaディスプレイモデル」の2つだ。
前者のアイパッドエアはアイフォーン5sに搭載した最新の64ビットプロセッサー「A7」を採用し、処理性能を大幅に向上させたほか、本体を薄型・軽量化にした。
ディスプレイサイズは9.7インチとこれまでと同じだが、両端のベゼル部分を細くしており、本体がスリムになった。Wi-Fiモデルの重さは469グラムで、従来モデルのアイパッド2に比べて132グラム軽く、片手で持ちやすくなったと言われている。
アイパッドミニの新モデルは、これまでフルサイズのモデルだけに搭載されていた高精細「レティナ」ディスプレイを採用し、プロセッサーもフルサイズのエアと同じ「A7」だ。小型モデルながらそのほかの各スペックもエアとほぼ同じになっている。
初めて300ドル切るiPadが登場
そして興味深いのは、アップルがこの日の発表で従来にない戦略を打ち出した点。これには2つあるのだが、まず1つ目はアイパッドの製品ラインアップだ。
同社は新製品の2モデルに加え、初代アイパッドミニと、アイパッド2の販売を続ける。これにより消費者の選択肢は4モデルに広がることになる。
またこれに伴い旧モデルの価格を引き下げており、アイパッドシリーズの各廉価版である16ギガバイトモデルは、(1)初代アイパッドミニの299ドル、(2)アイパッド2の399ドル、(3)アイパッドミニRetinaディスプレイモデルの399ドル、(4)アイパッドエアの499ドルがそろった。
この中で最廉価の初代アイパッドミニは、アップルとして初めて300ドルを切る製品で、米アマゾン・ドットコムなどライバルの低価格端末に対抗できるのではないかと言われている。
ソフトウエアの無料化を本格化
もう1つの新機軸はソフトウエアの無料化だ。
アップルはこの日、既存利用者を対象に、パソコン「マック」用の基本ソフト(OS)「OS X Mavericks(マーベリックス)」の無料提供を始めた。マック用OSは配布方式をネット配信に切り替えたことで、これまで低価格で提供していたが、ついに無料化した。
またアップルはOSのリリースに合わせて、オフィスソフトウエアの「iWork」とライフスタイルソフトウエアの「iLife」を刷新したが、同日、マックを新規購入した利用者を対象にこれらを無料提供すると発表した。
これに先立つ9月に同社は、iWorkのiOS向けアプリ3つと、iLifeのiOS向けアプリ2つを、アイフォーンとアイパッドの新規購入者に無料で提供していたが、今回これをマックにまで広げた。
iWorkには、ワープロの「Pages」、表計算の「Numbers」、プレゼンテーションの「Keynote」があり、ウェブブラウザーで利用できるオフィスアプリのクラウドサービス「iWork for iCloud」とも連携する。
これにより、例えばアイパッドやマックのアプリで文書を作成・編集し、iWork for iCloudを介してウィンドウズユーザーと共有するといったことが可能になる。
一方のiLifeには、写真管理の「iPhoto」、動画編集の「iMovie」、音楽編集の「GarageBand」がある。アップルはこれまでiOS端末を新規購入した利用者に、GarageBandを除く2つを無料化していた。だが今回無料化の対象にGarageBandも加え、さらにマックの新規購入者にも無料にした。
米ウォールストリート・ジャーナルの記事が引用している米ガートナーの調査によると、一昨年に65%あったアイパッドの市場シェアは、昨年54%に低下し、今年は50%を下回る見通し。
米グーグルのアンドロイド端末がシェアを伸ばすなか、アップルは製品ラインアップの拡充やソフトウエアの無料化でライバル端末のシェア拡大を阻止しようとしていると同紙は伝えている。
(JBpress:2013年10月24日号に掲載)