天気予報にコロンブスの卵はあるか
天気予報の順番は今も昔も変わらない。初めに気象衛星ひまわりの雲画像、次に明日の予想天気図,そして明日の天気だ。これを逆にしたらどうなるのか?江國流天気予報はだれにでも出来るが、実際は難しい。
ちんぷんかんぷんの気象予報
俳人でエッセイストの江國滋さんは著書「日本語八ツ当り」のなかで、
と述べたあと、「知りたいのは、あしたの天気、それだけである」とひとことでばっさり。これには二の句が継げません。
江國さんがちんぷんかんぷんとおっしゃる気象情報が仕事の大半を占めるものとして、足元をグラグラと揺さぶられた感じがします。
この本が出版されたのは今から30年程前、それからテレビの天気予報は変わっていません。今でも気象衛星ひまわりの雲画像を見せて、次に明日の予想天気図、そして明日の天気です。これが基本のスタイル、今まで疑問に思ったことがない。
なぜ最初に明日の天気を取り上げない?
テレビの天気予報は短いもので1分程度、長いもので5分くらいあります。天気予報で取り上げる情報は単に天気の予想だけでなく、暑さや寒さ、花粉情報から熱中症まで多岐にわたり、最近では大雨や台風などの防災情報も多い。伝える内容がますます増えている印象です。
だからでしょうか、最初に雲の様子や予想天気図を使って解説をした方が理解を助けると思うのです。
天気予報にコロンブスの卵
一方で、江國さんは「そういう情報を切り捨てろといっているのではない」といいます。明日の天気の後で、心ゆくまで解説すればいいといわれても、定着したスタイルは変えられない。天気図に人一倍愛着を感じるものとしては予想天気図が後回しにされる天気予報は想像できません。
ちょっと気がかりなのは明日の天気を見たらすぐにチャンネルを変えられてしまうこと。最後まで天気予報を見てもらうためには天気を伝える技術を磨かないといけません。江國流天気予報はだれにでも出来そうなことだけれども、実際は難しい。
【参考資料】
江國滋,1989:コロンブスの卵、二個,日本語八ツ当り,新潮社,75-79.