【あなたが好きだった悪のヒーローは?】仮面ライダー、プリキュアを圧倒したダークヒーローの魅力とは?
みなさま、こんにちは!
文学博士の二重作昌満です。
特撮を活用した観光「特撮ツーリズム」の博士論文を執筆し、大学より「博士号(文学)」を授与された後、国内の学術学会や国際会議にて日々活動をさせて頂いております。
早いもので9月の中盤に入りました。皆さまいかがお過ごしでしょうか?
さて、今回のテーマは「ダークヒーロー」です。
「正義のヒーローとどう違うの?」と言いますと、ダークという言葉の通り「悪のヒーロー」です。例えば、私達が子どもの時にテレビや映画で観ていたアニメや特撮作品には、たくさんの悪者が登場しました。町を壊したり、人々を苦しめたりする悪者達ですが、最終的には世界の平和を守る正義のヒーロー達に倒されてしまうのが通例・・・。
そんな悪者達の中で、独自の悪の美学を持ち、正義のヒーローと同等あるいはそれを凌駕する力を有し、ヒーローと対等なライバル関係にあったのが「ダークヒーロー」です。
人の性格が十人十色のように、彼らが主張する悪の美学の形も様々。「正義のヒーローを倒すために私は生まれた」と主張する者や、卑怯な戦いを嫌い正々堂々とした戦いを望む者、さらには正義と悪といった立場の違いを超えて、正義のヒーローと和解する者さえいました。
上述してきた多種多様なダークヒーロー達は、これまで発信された数多くのアニメや特撮作品に登場し、その圧倒的な存在感でたちまち子ども達の心を掴み、主人公である正義のヒーローと同等、あるいはそれ以上の人気を誇るダークヒーロー達も現れるようになりました。
彼らの魅力を単に「格好良い」と言ってしまえばそれまでですが、決してそれだけではなく、残虐な悪者になりきれないところや、独自の悪の美学を持つために他の悪者達と対立してしまうところ、さらには自分の美学に純粋であるが故に、敵であるはずのヒーローとも時に共闘してしまう等、「悪者だけど何でもあり」なところも彼らの魅力なのです。
このように正義のヒーロー達とは異なり、ややビターな空気感を醸し出すダークヒーロー達ですが、今回は世界中に数多いるダークヒーロー達の中で、我が国が世界に誇る特撮ヒーロー番組『仮面ライダー』シリーズ、そして今年誕生20周年を迎えるアニメ作品『プリキュア』シリーズに登場した2人のダークヒーロー達をご紹介します。
※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたらと思います。
※本記事における原作者「東堂いづみ」の表記ですが、東映アニメーション様による共同ペンネームであります。しかし本記事では当ペンネームに敬意を表し「先生」という呼称で統一をしております。当記事を通じてはじめてアニメ・特撮ヒーロー番組に触れる方もいらっしゃいますので、ご配慮を頂けますと幸いです。
【仮面ライダーは悪の組織のトップ?】世紀王として悪の組織を導いた影の月、シャドームーンとは何者か?
さて、当記事のテーマである「ダークヒーロー」ですが、今や毎週日曜日の朝番組としてお馴染みの仮面ライダーシリーズでも、数多くの魅力あるダークヒーロー達が登場しました。その中でも特にシリーズ屈指の人気を誇るのが、世紀王・シャドームーンたるキャラクター。彼の話に入る前に、少し仮面ライダーシリーズについて簡単にご紹介をさせてください。
仮面ライダーは、漫画家・石ノ森章太郎先生の原作で生み出された特撮ヒーローのことです。1971年にシリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の放送が開始され、主人公が悪の秘密結社ショッカーによって改造手術を施されて、バッタの能力を持った大自然の使者・仮面ライダーとなり、毎週ショッカーが送り込む恐ろしい怪人と戦う物語が展開されました。
その結果、『仮面ライダー(1971)』は国内で社会現象的な大ヒットを巻き起こすことになりました。その後、次回作『仮面ライダーV3(1973)』や『仮面ライダーBLACK RX(1988)』等の昭和の仮面ライダーシリーズを経て、『仮面ライダークウガ(2000)』から『仮面ライダージオウ(2019)』までの平成仮面ライダーシリーズ等、世代を跨ぎながらテレビシリーズは継続され、現在は『仮面ライダーギーツ(2022)』が放送されています。
そんな長い仮面ライダーシリーズの歴史の中で、今回お話しするのは、テレビシリーズ第8作『仮面ライダーBLACK(1987)』と第9作『仮面ライダーBLACK RX(1988)』。
今回ご紹介するシャドームーンは、この2作品に連続出演したシリーズ屈指の名悪役。両作品の中でシャドームーンはどんな活躍を披露したのか、少し覗いてみたいと思います。
まずは『仮面ライダーBLACK(1987)』。本作は、人類の文明の破壊を企む恐怖の暗黒結社「ゴルゴム」から、ゴルゴムの科学力で「仮面ライダーBLACK」となった主人公・南光太郎が世界の平和のために、ゴルゴムが送り込む怪人達と戦う物語。
ここまではかつての仮面ライダーシリーズとよく似ているのですが、『仮面ライダーBLACK(1987)』の物語の大きな特徴は、次の王様を決めるための2人の仮面ライダーの覇権争いを描いていたことでした。つまり、世界を支配する暗黒の王様(次期創世王)を決めるべく、その候補である2人の仮面ライダーが争う物語を展開したのです。
世界を支配する創世王の候補は2人。1人は、本作の主人公である仮面ライダーBLACK(別名:世紀王ブラックサン)、そしてもう1人の候補こそシャドームーンでした。
ことの経緯は、2人の青年の誘拐事件からはじまります。誘拐されたのは、南光太郎と秋月信彦。5万年に1度の日食の日の同時刻に生まれた2人は、秋月家で暮らす家族同然の間柄でした(光太郎は養子)。ところがある日、19歳の誕生日を迎えた2人は暗黒結社ゴルゴムによって誘拐されてしまいます。2人は改造手術を施され、光太郎の体内には太陽の石・キングストーンが埋め込まれ、信彦の体内には月の石・キングストーンが埋め込まれました。しかし改造手術後に事故が発生し、光太郎は辛くも脱出。運良く本来の自分のまま脱出できた光太郎は、自らを仮面ライダーBLACKと名乗り、ゴルゴムとの戦いに身を投じていくことになりました。
しかし信彦はゴルゴムを脱出することができませんでした。事故の影響で眠りについていたものの、彼はゴルゴムの幹部達(三神官)の力で目を覚まし、世紀王・シャドームーンとして活動するようになります。しかし信彦の記憶と感情、その大半は失われており、家族同然であった光太郎に容赦なく襲いかかります。ゴルゴムの幹部達さえ従えるその力は強大。なんとBLACKを一度倒してしまいました。
BLACKとの直接対決を征したことで、ゴルゴムの君主である創世王より、BLACKの体内にあるキングストーンの取り出しを命じられますが・・・なんとシャドームーン、「だが、できない!」と命令を一蹴してしまいます。この時のシャドームーンですが、光太郎を傷つけることに躊躇し、動揺しているようにさえ感じられました。この判断は僅かに残っていた信彦の意識だったのかはわかりません。彼自身、信彦だった頃の恋人と妹の前に現れ、ゴルゴムによる日本制圧開始を宣言し、自分のもとに来ないかと誘う行動をとる等、人類の文明を破壊するシャドームーンになりきれない節もあったのです。
シャドームーンがBLACKを倒し、BLACKがその姿を消したことでゴルゴムの日本大進撃が始まります。あらゆる物を破壊し、人々を恐怖のどん底にたたき落とし、空路や海路を通じて国外退去を図る国民が続出したほか、人が人を襲い略奪を行なう状況の創出、さらにはゴルゴムに従属し子ども達の誘拐を図る「ゴルゴム親衛隊」を自称する若者達さえ現れました(仮面ライダーを倒した上、ここまで日本を追い詰めたゴルゴム・・・歴代仮面ライダーシリーズの悪の組織の中でも、とりわけ戦力的に優秀な組織だったとは思います。)。
しかし、仮面ライダーBLACKの復活により状況は一変します。なんとBLACKを助けたのはゴルゴムの怪人(クジラ怪人)であり、復活したBLACKはシャドームーンとの最終決戦に挑みます。シャドームーンはBLACKに撃破され、ゴルゴムを率いていた創世王もBLACKによって倒されます。崩壊するゴルゴム神殿(ゴルゴムのアジト)の中で横たわり、シャドームーンはその姿を消しました。果たして、BLACKとシャドームーンの宿命の戦いは、これで終わったのでしょうか・・・?
【生きていた影の王子!】シャドームーンの復活と大逆襲!そしてその結末は・・・?
ここまで上述してきた『仮面ライダーBLACK(1987)』は、仮面ライダーBLACKとシャドームーンとの2人の創世王候補の対決に重きが置かれ、全51話の物語を完結させました。しかし、好評を博した『仮面ライダーBLACK(1987)』は、その続編として『仮面ライダーBLACK RX(1988)』の制作が決定します。
その物語は、仮面ライダーBLACKが暗黒結社・ゴルゴムとの戦いを終えた後の世界を舞台に、新たなる悪の組織(怪魔界と呼ばれる異世界からやって来た悪の独裁国家)であるクライシス帝国と、宇宙の太陽エネルギーを浴びてパワーアップした仮面ライダーBLACK RXとの戦いを描いた物語。
本作も南光太郎が主人公ですが、2年連続で同じ主人公が続投しながら、異なる仮面ライダー(仮面ライダーBLACK、仮面ライダーBLACK RX)に変身することはシリーズ初の試みでした。さらに仮面ライダーBLACK RXは過去の仮面ライダーではなかった新たな「変身能力」が導入され、これまでの仮面ライダーは1つの姿で戦うのが原則だったのに対し(一部例外もあり)、RXは3つの姿を持ち、戦いの中で状況に応じ姿を使い分ける能力が描写されました。
キャスティングも豪華で、敵側であるクライシス帝国の幹部・マリバロンを高畑淳子さんが熱演し、南光太郎の仲間である霞のジョー役に人気声優・ナレーターである小山力也さん、さらには RXのピンチに、仮面ライダー1号をはじめとする10人の先輩仮面ライダーが駆けつける展開も描かれました。
これだけ列挙するだけでも十分内容は華やかなのですが、この『仮面ライダーBLACK RX(1988)』の世界に、シャドームーンは復活します。確かにシャドームーンはBLACKに破れ、ゴルゴム崩壊の中で瓦礫に埋もれながら姿を消していました。しかし、彼は全ての記憶を失った状態でRXの前に現れ、RXを倒すためにクライシス帝国と共闘します。
・・・ところがクライシス帝国はシャドームーンを捨て駒としか考えていませんでした。強大な力を持つシャドームーンによって自らの地位が危うくなることを恐れた幹部達は、「富士山大噴火計画」と呼ばれる作戦を立案します。富士山を大噴火させて、山中で戦っているシャドームーンとRX、両者ごと巻き込んで消してしまおうと考えたのです。
「富士山大噴火計画」を実行する怪人(マットボット)に計画を自白させ、さらに自らが陥れられたことを知ったシャドームーン。RXとの純然たる決着を望んでいた彼ですが、クライシス帝国の怪人に捕われ、鎖で岩に括り付けられながら噴火の炎に包まれる2人の子ども達の姿を見ます。仮面ライダーに助けを求める子ども達。子ども達を救出するため、RXはシャドームーンに最後の戦いを挑み、渾身の一撃を与えます。
「・・・見事だ。RX。俺の負けだ。」(シャドームーン)
「シャドームーン。一緒にここを脱出しよう。」(RX)
「聞け。クライシスはあの山を噴火させるつもりだ(中略)。行け、RX!あの子ども達のことは俺に任せろ。無事に送り届けるくらいの力なら、まだ残っている。」
「信彦!!」(RX)
RXはシャドームーンの仮面の下に、家族同然に育ってきた親友・信彦の笑顔を見ます。
「我が名はシャドームーン。いずれ再び蘇り、仮面ライダーBLACK RX・・・お前に勝負を挑む!誰にも、お前の首は渡さん!ぐずぐずするな!行け!RX!」(シャドームーン)
強烈な炎の中で「助けて、助けて」と縛られながら助けを求める子ども達。シャドームーンは燃える炎の中に歩を進めます。
「シャドームーン・・・頼んだぞ!子ども達を!」(RX)
RXはその後、噴火事件の張本人であった怪人(マットボット)を見つけ出して退治します。
怪人を倒したことで、事件は解決しました。
子ども達を牧場(家)に送り届け、シャドームーンは牧場の草地の上で、花に囲まれながら眠ります。「ねえ、どうしたの?」「死んじゃったの?」と眠るシャドームーンのもとに手を置く子ども達。そんな子ども達のもとに、光太郎は歩み寄ります。
「大丈夫だよ。少し疲れて眠っているだけだから。さあ、パパのところにお帰り。」(光太郎)
光太郎はシャドームーンを抱き上げます。親友だった信彦の顔を思い浮かべる光太郎。
「あれは幻だったのだろうか。いや違う。あれは、幻などではない。最後の最後に、シャドームーンは信彦に戻ったのだ。」(劇中ナレーション)
光太郎はシャドームーンを抱き上げながら、静かに歩を進めます。そして光太郎の腕の中に眠るシャドームーンの姿は、信彦に戻っていました。光太郎は悲しみを胸に、クライシス帝国との最終決戦に挑み、ついに首領格であったクライシス皇帝を討ち滅ぼします。戦いを終えた光太郎は、自身を鍛え上げるための旅へと出るのでした。
光太郎(仮面ライダーBLACK)と信彦(シャドームーン)、本来ゴルゴムなんていなければ、二人は唯一無二の親友として同じ時間を過ごしていたはずでした。しかし混沌たる悪意によって二人は引き裂かれ、殺し合う宿命を背負わされたのです。しかし最終的に信彦は人間としての心を取り戻し、燃えたぎる炎の中へ子ども達の救出に向かいます。シャドームーンは対局の存在であった仮面ライダーBLACKと異なり、「仮面ライダー」の名を冠してはいません。しかし助けを求める子ども達の声を聞き、己の命を散らして子ども達の命を救った。その満身創痍の彼の姿こそ、唯一無二の「仮面ライダー」以外他ならなかったのです。
【私はパフェみたいな人になりたい!】罪を乗り越え、食卓の最後を飾る!4人目のプリキュア、キュアフィナーレとは?
ここまで、仮面ライダーシリーズに登場したダークヒーローをご紹介しました。上述したBLACKとシャドームーンの関係は悲劇的なものでしたが、仮面ライダーシリーズと同じく、東映から生み出されたスーパーヒーローである『プリキュア(2004)』シリーズに登場したダークヒーロー達は、やや趣きが異なります。今回は、そんなプリキュアシリーズに登場したダークヒーロー達の中で、フルーツやパフェに特化したヒーローであるキュアフィナーレ(ジェントルー)をご紹介します。
お話に入る前に・・・少しだけプリキュアシリーズのことをご紹介させてください。
プリキュアシリーズは、東堂いづみ先生の原作で2004年に放送が開始された東映アニメーション制作の『ふたりはプリキュア』を起点とするアニメシリーズ。
『ふたりはプリキュア』は、ベローネ学院(中学校)のラクロス部のキャプテンでスポーツ万能な女の子、美墨なぎさ(キュアブラック)と、成績トップで科学部部長の優等生、「うんちく女王」の雪城ほのか(キュアホワイト)がタッグを組み、伝説の戦士・プリキュアとなってドツクゾーン(敵組織)と戦う物語。
「女の子だって暴れたい!」というキャッチコピーのもとで誕生した『ふたりはプリキュア』は大ヒットを記録し、『ふたりはプリキュア Max Heart (2005)』や『ふたりはプリキュア Splash Star(2006)』と派生作品が次々に放送され、以降も『Yes!プリキュア5 (2007)』、『ドキドキ!プリキュア(2013)』、『スター☆トゥインクルプリキュア(2019)』と世代を跨ぎながらシリーズ化されるようになりました。
また今年2023年にプリキュアはシリーズ誕生20周年を迎え、『ひろがるスカイ! プリキュア(2023) 』が現在放送中であると共に、9月15日よりシリーズ20周年記念映画である『プリキュアオールスターズF』も公開中である等、シリーズの勢いはまだまだ留まるところを知りません。
さて、そんな20年という長い歴史を紡いできたプリキュアにも、ダークヒーローと呼べる存在は度々登場していました。彼女達の中には、プリキュアと対峙する敵組織に幹部として身を置きながら、プリキュア達との対決を通じてその心に変化が生まれ、最後には自らもプリキュアとなって、かつて自分が所属していた敵組織と戦う者達もいました。その中でも、近年記憶に新しい大活躍を見せたのが、今回ご紹介するキュアフィナーレ(ジェントルー)。彼女の活躍を少しだけ覗いてみましょう。
キュアフィナーレが登場したのは、プリキュアシリーズ第19作『デリシャスパーティプリキュア(2022)』。世界中の料理を独り占めにしようと目論む怪盗ブンドル団から、4人のプリキュア達が美味しいお料理を守る物語。みんなでご飯を食べる喜びや温もり、分け合うおいしさを皆で共有する素晴らしさを描いた作品でした。
本作が放送された2022年、日本はまだ新型コロナの禍中。状況は少しずつ改善してきたものの、コロナに対する恐怖は未だ国内を包んでいました。新型コロナの感染爆発(パンデミック)により大きな影響を受けたのは、旅行業や宿泊業をはじめとするレジャー産業だけに留まらず、飲食業にも大変な打撃を与えたことは記憶に新しいことと思います。飲食店に集まってみんなで食べたり飲んだりすることに気が引けたり、同じお皿の料理を共有することを避けたり、極論をいえば「みんなで飲食をすること=悪」というレッテルさえ貼られてしまうような空気感が、私達の暮らす日本を包んでいたのです。
そんな「みんなで一緒にご飯を食べる」ことに対する社会の目が厳しい状況の中で、テレビに登場したのが『デリシャスパーティプリキュア(2022)』でした。本作に登場するプリキュア達はご飯をモチーフに、米食モチーフのキュアプレシャス、パン食モチーフのキュアスパイシー、麺食モチーフのキュアヤムヤム、デザートモチーフのキュアフィナーレで構成されています。そのデザインインパクトは絶大で、お米を筆頭とする第一次産業を取り扱っているプリキュアであることから、食文化の多様化に伴い、国産米の消費量の低下を危惧した農林水産省が本作に対して応援の意思を表明するほどでした(外部リンク)。
そんな『デリシャスパーティプリキュア(2022』に登場したキュアフィナーレですが、彼女はどんなキャラクターなのかというと・・・。
キュアフィナーレに変身するのは中学3年生の菓彩あまね。「みんなを笑顔にしたい」と願う生徒会長で、あまり感情を強く表には出さないタイプで文武両道。自宅はフルーツパーラー「KASAI」を営み、双子の兄がいます。お化けとジェットコースターが苦手。そんな彼女はデリシャスパーティプリキュアの4人目の戦士「キュアフィナーレ」として活躍しています。
実はこのキュアフィナーレこと菓彩あまね、当初は悪役としての登場でした。あまねはなんとプリキュア達と対峙するブンドル団の一員であり、「ジェントルー」を名乗っていました。本作の舞台である「おいしーなタウン」に何度も現れ、おいしいお料理に宿る妖精である「レシピッピ」を盗もうとするも(盗まれるとお料理の味が不味く変質)、その度にプリキュア達に阻まれていました。
また生徒会長であるという立場を利用し、プリキュア達が通う中学校で突然難問だらけの抜き打ちテストを実施し、落第点をとったプリキュア達を補習で足止めしている間にレシピッピを盗みにかかる等、戦略的な一面も持っていました。しかしながら、レシピッピを傷つけることを嫌っており、自分に非があればレシピッピを傷つけたことをプリキュア達に謝罪する優しさも持っていました。
しかし、このジェントルーの正体があまねであることがプリキュア達に発覚すると、物語は大きく動きました。あまねはブンドル団に心を操られ、ジェントルーに「された」存在だったのです。しかしそのコントロールは完全でない故に、度々本当の心であるやさしさを露わにしていたのです。
プリキュア達はジェントルーの事情を知り、あまねを助けるために団結します。さらに強く洗脳されたジェントルー相手にプリキュア達は奮闘し、呼びかけ続けたことであまねを洗脳から解放することに成功します。しかし洗脳から助けて終わりではなく、大変だったのはその後でした・・・。
あまねは自らが操られジェントルーとして暗躍し、レシピッピを盗んで迷惑をかけてきたのだという罪の意識に苛まれます。責任感の強い性格である故、自分を責めてしまったのです。彼女は長く学校を休んでいましたが、久々に登校しても彼女に元気はありませんでした。そんなあまねを心配し、プリキュア達は彼女の自宅であるフルーツパーラー「KASAI」を訪れます。あまねに何も罪はない旨を改めて伝えても、本来冷静な性格である彼女が声を荒らげることもありました。しかし、それもプリキュア達とあまねの間にこれまで構築されてきた信頼関係・友情の裏返し。あまねのまわりには、後に彼女にとってかけがえのないパートナーとなるレシピッピ(パフェピッピ)が微笑ましく飛んでいたのです。
そんなプリキュア達の訪問の最中、ブンドル団が現れます。現れたのはナルシストルー。彼こそあまねを操っていた張本人でした。手下である怪物「モットウバウゾー」を使役してあまねを捕らえ、ジェントルーだった罪の意識に苛まれる彼女の心を追い詰めます。しかしそんな彼女を罪の意識から救ったのは、プリキュア達のリーダー格であるキュアプレシャス(和美ゆい)でした。
「おばあちゃん言ってた。昨日食べたものが、今日の自分を作る。今日食べたものが、明日の自分を作る。過去は変えられない。でも、未来はこの瞬間からつくっていけるんだよ!あまねさん・・・明日は、どんな自分になりたい?」(キュアプレシャス)
「私は・・・私は、皆を笑顔にできる・・・パフェのような人になりたい!!」(あまね)
キュアプレシャスは怪物からあまねを救出、するとあまねの強い想いと声に呼応するかのように、青白いハート型の巨大な光があまねを包みます。
光の中で、あまねは幼かった過去の自分を思い出します。自宅のフルーツパーラーにて、パフェを笑顔で食べるお客さんの姿と幸せな空気感に喜びを感じ、「私、大きくなったらパフェになる。パフェみたいに皆を笑顔にするんだぁ。みてて。皆を笑顔にできる、パフェみたいな人に絶対なるから。うん、約束。」と嬉々として夢を語ります。そんな純粋な彼女を優しく見守り、幼いあまねと約束をしたのがパフェピッピだったのです。
「こんな私だが・・・力を貸してくれないか?」(あまね)
光の中で、あまねの手にはハート型のペンダントが形作られていきます。光の中から戻ってきたあまねは怪物を前に、その手に美しく輝く変身アイテム(ハートフルーツペンダント)を構えます。
「もう目をそらさない。自分の過去からも、自分の願いからも・・・そして、お前達の悪事からも!」(あまね)
それは、プリキュア4人目の戦士・キュアフィナーレ誕生の瞬間でした。あまねはデザートの力を持つキュアフィナーレに変身し、捕らえられていたレシピッピを見事救出するのでした。
その後キュアフィナーレは、4人目のプリキュアとしてブンドル団との戦いに身を投じていくことになり、時に自分の中にある負の感情に葛藤しながらも、仲間達との絆で幾多もの戦いを乗り越えていきます。ブンドル団が壊滅した最終回(第45話)のエンディングで描かれたのは、とびっきりの笑顔で、フルーツパーラーで子ども達と触れ合うあまねの姿でした。
当初はヒーローと対峙する敵として登場したキュアフィナーレ(ジェントルー)ですが、仲間達の呼びかけで本来の心を取り戻します。前述したシャドームーンと同様、悲劇性を抱えながら登場した彼女も、プリキュアになったことでたくさんの笑顔とありがとうを重ねていくことになったのです。
さて、今回ご紹介したキュアフィナーレですが、なんと現在全国劇場にて公開中のプリキュアシリーズ20周年記念映画『プリキュアオールスターズF』に登場します。シリーズ史上初めての総勢78人のプリキュアが集う本作にて、あまねは先輩のプリキュアである花寺のどか(キュアグレース)やローラ(キュアラメール)達と出会います(※この2人のプリキュアについては過去の記事でじっくり特集しておりますので、ご参照頂けますと幸いです)。
未見の方もいらっしゃると思いますのでネタバレは控えますが・・・本作、これまでプリキュア達と過ごしてきた、かけがえのない大切な思い出がいくつも蘇り、私も感情が高ぶって涙が止まらないシーンが多々ありました。プリキュア20周年をお祝いするオールスター映画ですので、是非皆さまも自分のお気に入りのプリキュアを探しに、劇場へ足を運んでみてくださいね♪
最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。
(参考文献)
・菅家洋也、『講談社シリーズMOOK 仮面ライダー昭和 Vol.10 仮面ライダーBLACK』、株式会社講談社
・菅家洋也、『講談社シリーズMOOK 仮面ライダー昭和 Vol.11 仮面ライダーBLACK RX』、株式会社講談社
・宇城卓秀、『僕たちの「仮面ライダー」怪人ランキング』、株式会社宝島社
・水谷隆介、『デリシャスパーティプリキュア Official Complete Book』、株式会社Gakken