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【なぜハワイで日本のアニメ・特撮は愛され続けるのか?】日本のヒーローや怪獣が切り開く新たな未来とは?

二重作昌満博士(文学)/PhD(literature)

みなさま、こんにちは!

文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。

新年あけましておめでとうございます。

本年もどうぞ宜しくお願い致します。

さて、今回のテーマは「ハワイ」です。

ハワイはご存知、太平洋のハワイ諸島に位置する、アメリカ50番目の州。

1964年の海外旅行自由化以降、たくさんの日本人観光客が訪れる大人気観光地の印象が強いハワイですが、我が国とハワイの深い関係は、明治時代まで遡ります。

日本人の移民がハワイにやってきて以来、現在までたくさんの日系人の方々がハワイで暮らしているほか、食や服飾の文化、神社仏閣等、数多くの日本の文化が浸透しています。

ハワイ州オアフ島内ホノルル、ダウンタウンルート近くにあるハワイ出雲大社では、年始になると毎年沢山の参拝客が来訪する。
ハワイ州オアフ島内ホノルル、ダウンタウンルート近くにあるハワイ出雲大社では、年始になると毎年沢山の参拝客が来訪する。

オアフ島内ワイキキクヒオ通りにある「丸亀製麺」では、フライドチキンやソフトドリンク等、日本とは異なるトッピングやメニューを楽しむことが出来る。トロリーバス停も近いので、食後の移動も便利。
オアフ島内ワイキキクヒオ通りにある「丸亀製麺」では、フライドチキンやソフトドリンク等、日本とは異なるトッピングやメニューを楽しむことが出来る。トロリーバス停も近いので、食後の移動も便利。

このハワイに浸透している日本の文化ですが、食や宗教といった古典的な文化のみに留まらず、アニメやマンガ、それに特撮作品等、いわゆる日本の「サブカルチャー」も深く現地に浸透し、ハローキティやピカチュウのほか、近年では「鬼滅の刃」に登場するキャラクター達も、地元のコンビニ(ABCストア等)で存在感を発揮するようになりました。

ハワイ州内にあるコンビニエンスストア「ABC STORES」では、生活雑貨や食料品をはじめ、日本のキャラクターグッズも充実。ハローキティをはじめサンリオグッズも多数販売されており、お土産にもお勧め。
ハワイ州内にあるコンビニエンスストア「ABC STORES」では、生活雑貨や食料品をはじめ、日本のキャラクターグッズも充実。ハローキティをはじめサンリオグッズも多数販売されており、お土産にもお勧め。

ハワイのコンビニ「ABCストア」では、ポケモンやドラえもんといった日本の人気アニメ・マンガのキャラクターグッズが多数販売されている。コロナ以降は「鬼滅の刃」の商品も発売され、現地で気軽に購入が可能。
ハワイのコンビニ「ABCストア」では、ポケモンやドラえもんといった日本の人気アニメ・マンガのキャラクターグッズが多数販売されている。コロナ以降は「鬼滅の刃」の商品も発売され、現地で気軽に購入が可能。

私事ですが、幼少期から日本とハワイの二カ国で生活をしてきたため、ポケモンやハローキティがハワイで浸透する様子を体験してきたほか、年月を重ねる毎に、突然キカイダーがブームになったり、パワーレンジャー(日本のスーパー戦隊シリーズの海外版)の玩具が現地のディズニーストアに並んだりと、子どもながらに「なんだ、なんだ!」とワクワクしたと共に、大人になると「今度はどのゲームが日本から入って来たんだ?」と、現地のトイザラスでの玩具情報に驚いたものです。※ちなみに、その年(2015年当時)に日本からやってきたのは『妖怪ウォッチ(英題:YO-KAI WATCH )』でした。

2024年にハローキティが生誕50周年を迎えたことをお祝いし、ハワイの「ABCストア」でも50周年を記念した限定のぬいぐるみを発売。現地でいかにハローキティが浸透し、愛されているかよくわかる。
2024年にハローキティが生誕50周年を迎えたことをお祝いし、ハワイの「ABCストア」でも50周年を記念した限定のぬいぐるみを発売。現地でいかにハローキティが浸透し、愛されているかよくわかる。

ハワイ州内の玩具売り場では、現在も海外版スーパー戦隊シリーズ「Power Rangers」のフィギュアやロボット玩具が多数販売。バンダイやハズブロ、両玩具メーカーのフィギュアが陳列されている店舗もある
ハワイ州内の玩具売り場では、現在も海外版スーパー戦隊シリーズ「Power Rangers」のフィギュアやロボット玩具が多数販売。バンダイやハズブロ、両玩具メーカーのフィギュアが陳列されている店舗もある

このように、日本からたくさんのアニメやマンガ、特撮作品等が、テレビ放送やグッズを通じてハワイの至るところで浸透してきた中、私が特に思い入れが深いのが、ゴジラやパワーレンジャーといった特撮作品ー。そこで本記事では、ハワイにやって来た日本の特撮作品の歴史と現在の様子について、少しだけ焦点を当てていきたいと思います。

※本記事は「私、特撮にくわしくない」、「ハワイに行ったことがない」という皆様にも気軽に読んで頂けますよう、可能な限りシンプルにお話をして参ります。お好きなものを片手に、ゆっくり本記事をお楽しみ頂けますと幸いです。

【日本特撮ヒーロー!ハワイに集結!】キカイダーがハワイで巻き起こした70年代特撮ヒーローブームとは?

さてここからは、日本の特撮作品、特に仮面ライダーやキカイダーといった特撮ヒーロー番組がいかにハワイで浸透してきたかを概要的にお話をしていきたいと思いますが・・・ここで気になるのが、「そもそも、どういった経緯でハワイに特撮ヒーローが入ってきたの?」とお感じの方も多いかと思います。そこで、簡単にその背景をお話しすると、大きな要因は「ハワイでの日本語専門チャンネルの開設」でした。

ハワイ日系人の歴史や文化を学ぶことが出来る「ハワイ日本文化センター(Japanese Cultural Center of Hawaii)」。日本産の特撮ヒーロー番組『人造人間キカイダー』の催事も開催
ハワイ日系人の歴史や文化を学ぶことが出来る「ハワイ日本文化センター(Japanese Cultural Center of Hawaii)」。日本産の特撮ヒーロー番組『人造人間キカイダー』の催事も開催

日系人の多いハワイでは1960年代より、州内各局にて日本のテレビ番組の長時間放送を希望する声が現地の日系人達から高まったことに伴い、1967年に海外で初の日本語テレビ局である「KIKU-TV」の放送が開始されました。

当テレビ局での放送開始にあたり、KIKU-TVは日本からのテレビ番組の調達を開始するようになります。その際に買い付けられたのが、1972年に日本で放送された株式会社東映(以降、東映)制作の特撮ヒーロー番組『人造人間キカイダー』でした。

『人造人間キカイダー(1972)』の主人公・キカイダー(写真右)は善と悪の狭間に立つ悩めるヒーローとして描かれた。好評を得た本作は、次回作『キカイダー01(1973)』(写真左)も制作された。
『人造人間キカイダー(1972)』の主人公・キカイダー(写真右)は善と悪の狭間に立つ悩めるヒーローとして描かれた。好評を得た本作は、次回作『キカイダー01(1973)』(写真左)も制作された。

『人造人間キカイダー』とは、仮面ライダーやスーパー戦隊シリーズの原作者である漫画家・石ノ森章太郎先生が生み出したスーパーヒーロー。1972年7月から1973年5月まで、NET(現在のテレビ朝日)にて、30分番組として放送された特撮ヒーロー番組でした。

『人造人間キカイダー』は1972年7月8日から1973年5月5日まで全43話が放映された。日本での放映終了後、本作は1973年にハワイで放送が開始された(写真はハワイで発売されたDVD-BOX)。
『人造人間キカイダー』は1972年7月8日から1973年5月5日まで全43話が放映された。日本での放映終了後、本作は1973年にハワイで放送が開始された(写真はハワイで発売されたDVD-BOX)。

世界征服を企む悪の組織「ダーク」が送り込む悪のロボットと、人間を守るキカイダーが戦う内容で展開され、キカイダーは人々を守るロボットでありながら、善悪を判別する装置(良心回路)を取り付けられたことにより、「何が良いことで何が悪いことか」の狭間に立つ悩めるヒーローでもありました。

世界征服を目的とする「ダーク」が送り込むのは、「ダーク破壊部隊」と名乗る悪のロボット達。ブルーバッファローやイエロージャガー等、「色+モチーフ」の名称が特徴であるが、女ベニクラゲという異名の者もいた。
世界征服を目的とする「ダーク」が送り込むのは、「ダーク破壊部隊」と名乗る悪のロボット達。ブルーバッファローやイエロージャガー等、「色+モチーフ」の名称が特徴であるが、女ベニクラゲという異名の者もいた。

本作が選出された背景として、総支配人のジョアン二宮氏によれば『人造人間キカイダー』の物語が内包していたヒーローの弱さや親しみが導入され、人間味のあるところが日系をはじめとするアジア系の多いハワイの視聴者にヒットするという確信があったのだとか。

『人造人間キカイダー(1972)』及び次回作の『キカイダー01(1973)』には、キカイダー以外にも数多くのロボットが登場した。中でもライバルキャラクターのハカイダー(右)は絶大な支持を獲得している。
『人造人間キカイダー(1972)』及び次回作の『キカイダー01(1973)』には、キカイダー以外にも数多くのロボットが登場した。中でもライバルキャラクターのハカイダー(右)は絶大な支持を獲得している。

そんな『キカイダー』がハワイへ輸入されたのは、日本での放送が終了した1973年のこと。当時、海外ドラマは吹き替えが主流であった中で、なんと日本で放送された本編に英語字幕をつける形で、日本語テレビ局のKIKU-TVで放送が開始されました。その結果、ジョアン二宮氏の「読み」のとおり、本作は大ブームを巻き起こしました。

ハワイ州最高峰の自然史と文化史の博物館であるビショップ・ミュージアム内にて開催された催事では、キカイダー主題歌のレコードパネルも展示された(2014年筆者撮影)。
ハワイ州最高峰の自然史と文化史の博物館であるビショップ・ミュージアム内にて開催された催事では、キカイダー主題歌のレコードパネルも展示された(2014年筆者撮影)。

KIKU-TV史上最高視聴率である24%を記録したほか、当時のショッピングセンターで開催されたサイン会には1万人が押しかけ、やむなく中止になった等、ハワイに爆発的に拡大していったこのキカイダーブームは、なんと特撮ヒーロー番組を観る年齢層ではない若者にも浸透していきます。ディスコにも「人造人間キカイダー」の主題歌「ゴーゴー・キカイダー」がかかって皆が踊り出す現象も発生したのだとか。

このキカイダーのヒットに伴い、日本の各映像制作会社はそれに続かんと、自社の変身ヒーロー番組を次々にハワイへ輸出するようになりました。キカイダーを制作した東映は、『仮面ライダーV3』や『秘密戦隊ゴレンジャー』、『イナズマン』等をハワイで放映し、円谷プロは『ウルトラセブン』、東宝は『愛の戦士レインボーマン』等、数多くの日本の特撮ヒーロー番組がハワイで放送されるようになりました。

しかしこれら強力なライバル達に負けず劣らず、圧倒的かつ州民的な支持を獲得し続けたのは、やはりキカイダーでした。

『キカイダー』以外にも、多数の日本の特撮ヒーロー番組が現地でも放送された。特に東映の特撮ヒーロー番組の人気は高く、下図の仮面ライダーV3やイナズマン等のTシャツやDVD-BOXも発売されてきた。
『キカイダー』以外にも、多数の日本の特撮ヒーロー番組が現地でも放送された。特に東映の特撮ヒーロー番組の人気は高く、下図の仮面ライダーV3やイナズマン等のTシャツやDVD-BOXも発売されてきた。

ハワイで大人気番組となった『人造人間キカイダー』ですが、放送終了後も現在まで再放送が何度も行なわれてきました。特に2001年11月にKIKU-TVで再放送された際はブームが再燃し、幼少期にキカイダーを観ていた30~40代の世代が親となり、子ども達と一緒にキカイダーを楽しむ動向は「ジェネレーション・キカイダー」と呼ばれ、現地で社会現象化しました。このハワイでの『人造人間キカイダー』の放送開始に伴い発生した爆発的なブームは大衆だけに留まらず、ハワイの政治の世界にも大きな影響を与えました。

ハワイ州・ホノルル市内、ダウンタウンエリアにあるハワイ州庁舎。州庁舎の建物はハワイ州の自然・文化的な特徴が取り入れられており、椰子の木、太平洋、火山、ハイビスカス等がイメージされた(2014年撮影)。
ハワイ州・ホノルル市内、ダウンタウンエリアにあるハワイ州庁舎。州庁舎の建物はハワイ州の自然・文化的な特徴が取り入れられており、椰子の木、太平洋、火山、ハイビスカス等がイメージされた(2014年撮影)。

まず、『人造人間キカイダー』及びその続編『キカイダー01』にて主人公を演じた俳優の伴大介氏(キカイダー:ジロー役)と池田駿介氏(キカイダー01:イチロー役)がハワイにて名誉市民に認定されました。「なぜヒーロー俳優が外国で名誉市民に?」、その最大の理由とされているのが、「キカイダー」を観て育った子ども達が道徳的に成長したことに対する評価であるとされています。つまり、外国の政治が日本の特撮ヒーロー番組を教育的見地から評価するという、極めて珍しい事例でした。

ハワイ州庁舎2階の知事の執務室。当室は使用されていなければ、自由に見学が可能であるほか、写真撮影も可能である(筆者撮影)。建物の外観や内装も含め、細かくじっくり楽しめるのがハワイ州庁舎の魅力。
ハワイ州庁舎2階の知事の執務室。当室は使用されていなければ、自由に見学が可能であるほか、写真撮影も可能である(筆者撮影)。建物の外観や内装も含め、細かくじっくり楽しめるのがハワイ州庁舎の魅力。

また2001年のキカイダーブームの再燃に伴い、なんとハワイでは2つのキカイダーの記念日が制定されることになり、ハワイ州カエタノ知事により2002年より4月12日を「ジェネレーション・キカイダー・デイ」、マウイ市長により2007年から5月19日を「キカイダー・ブラザーズ・デイ」として制定される等、21世紀という新時代を迎えて以降も、ハワイでのキカイダーの存在感は健在だったのです。

ハワイではシリーズ第1作『人造人間キカイダー』のほか、次回作『キカイダー01』、さらに2014年公開の最新映画『キカイダーREBOOT』までのDVDが発売され、世代を超えて愛され続けてきた。
ハワイではシリーズ第1作『人造人間キカイダー』のほか、次回作『キカイダー01』、さらに2014年公開の最新映画『キカイダーREBOOT』までのDVDが発売され、世代を超えて愛され続けてきた。

その後、再びキカイダーブームは沈静化しますが、ハワイの人達はキカイダーを決して忘れてはいませんでした。アラモアナショッピングセンターの「Shirokiya」(現在は閉店)では、ソフビ人形やDVD等、継続的にキカイダー関連グッズの発売は継続されてきたほか、キカイダーに続き『仮面ライダーV3』や『イナズマン』といった同じく東映の特撮ヒーロー番組のDVD-BOXが発売され、現地で流通するようになる等、過去にハワイで放送された日本の特撮ヒーロー番組が徐々に再注目の機会を得ていく中、新たなキカイダーがハワイの人々の前に帰ってきました。

『キカイダーREBOOT』は2014年5月24日に公開されたキカイダー新作映画。本作も日本での公開終了後、ハワイへと輸出され大好評を博した。同年12月には本作のDVDも発売されるも、即完売する事態に。
『キカイダーREBOOT』は2014年5月24日に公開されたキカイダー新作映画。本作も日本での公開終了後、ハワイへと輸出され大好評を博した。同年12月には本作のDVDも発売されるも、即完売する事態に。

それが、2014年10月にハワイで公開されたキカイダー新作映画『キカイダー REBOOT』でした。本作は同年5月に日本で公開された後、ハワイでも同年10月に公開したところ予想を上回る大ヒットで上映の延長が決定。

ハワイでの『キカイダー REBOOT』公開及びDVDの発売に併せ、アラモアナセンター内「Shirokiya」(現在は閉店)では、本作のTシャツも各サイズが多数入荷。
ハワイでの『キカイダー REBOOT』公開及びDVDの発売に併せ、アラモアナセンター内「Shirokiya」(現在は閉店)では、本作のTシャツも各サイズが多数入荷。

昨今の出来事ですので、当時のことは私もよく覚えているのですが、同年12月に本作のDVDが発売されればあっという間に売り切れてしまい翌月まで入荷待ちという、日本では考えられないような光景に遭遇し、現地でのキカイダー人気の強さと熱気、未来へ秘めた可能性を感じ取ったものでしたー。

キカイダー新作映画「キカイダーREBOOT」のDVD完売告知。写真は2014年12月下旬に撮影したもので、次回の入荷はなんと翌年の1月!日本と異なる在庫待ち状況に脱帽しながら、その後なんとか入手。
キカイダー新作映画「キカイダーREBOOT」のDVD完売告知。写真は2014年12月下旬に撮影したもので、次回の入荷はなんと翌年の1月!日本と異なる在庫待ち状況に脱帽しながら、その後なんとか入手。

その後、新型コロナウイルスのパンデミックを経て、2023年1月にハワイ州における最後のキカイダーイベント『KIKAIDA FOREVER』(外部リンク)が開催されました。当イベントがハワイにおけるキカイダーイベントの一区切りと謳われてはいますが、新たな世代の前にキカイダーが復活する日も、そう遠くはないのかもしれませんー。

【ハワイにおける日本の特撮作品の今】ゴジラマイナスワンに仮面ライダー!日本のキャラクターが大集結するハワイの知られざる魅力とは?

「ここまで、ハワイでキカイダーが流行ってきたのはわかった。ところで他の特撮ヒーローや、今のハワイの特撮モノの現状はどうなの?」

スーパー戦隊シリーズ第16作『恐竜戦隊ジュウレンジャー(1992)』は、1993年に『パワーレンジャー』と題して米国へと輸出された。2024年時点でフィギュアもデパート「Macy's」内で購入が可能。
スーパー戦隊シリーズ第16作『恐竜戦隊ジュウレンジャー(1992)』は、1993年に『パワーレンジャー』と題して米国へと輸出された。2024年時点でフィギュアもデパート「Macy's」内で購入が可能。

・・・とお感じの方も多いかと思います。現在までハワイでは、東映制作の特撮ヒーロー番組「スーパー戦隊シリーズ」の海外版『パワーレンジャー(Power Rangers)』シリーズが約30年に渡り発信されてきたほか、日本が世界に誇る東宝の特撮怪獣映画である『ゴジラ』シリーズも現地の映画館で新作が公開され続けたりと、両シリーズともキカイダーに負けず劣らずの存在感を発揮し続けてきました。

ハワイ州オアフ島内にあるクアロア・ランチでは米国版ゴジラ映画『GODZILLA(1998)』が撮影され、劇中のゴジラの足跡が名所として残されているが、牧場内の動物達の事故に配慮し大半は埋められている。
ハワイ州オアフ島内にあるクアロア・ランチでは米国版ゴジラ映画『GODZILLA(1998)』が撮影され、劇中のゴジラの足跡が名所として残されているが、牧場内の動物達の事故に配慮し大半は埋められている。

特に2024年のハワイでは、ゴジラシリーズの躍進が目覚ましい1年だったと感じます。

2023年に日本で公開された国産ゴジラ映画『ゴジラ ー1.0』が、2024年にハワイの映画館でも封切られ、私も2月に観にいきました(ちなみにその日は、当劇場での上映最終日)。なんと現地では本作の通常版(カラー版)と白黒版(マイナスカラー版)の両作が公開されており、私はそれも知らずチケットを購入して着席し、いざ映画が始まったら白黒版だった!という予想外の事態に遭遇。

2024年初頭はハワイにて映画『ゴジラ ー1.0』が上映。現地では通常上映のほか『マイナスカラー版』(白黒版)も上映。ハワイ上映終了から約1ヶ月後、本作は日本映画初のアカデミー賞(視覚効果賞)を受賞。
2024年初頭はハワイにて映画『ゴジラ ー1.0』が上映。現地では通常上映のほか『マイナスカラー版』(白黒版)も上映。ハワイ上映終了から約1ヶ月後、本作は日本映画初のアカデミー賞(視覚効果賞)を受賞。

嬉しいサプライズではあるのですが、カラーと白黒、両バージョンしっかりと公開されていた上、日本(特に都心)と比べ大らかな州民性であるハワイでも、チケットは30分以上前に確保しないと良い席で観られない、いざ上映が開始されれば、現地の人達は静寂の中で食い入るようにじっくり観ている状況になる等、どこかただならぬ空気感だったのをよく覚えています。

筆者はダウンタウン内にある映画館『WARD 16 THEATRES』にて『ゴジラ -1.0』を観賞。半券によると本作はPG-13のレイティングだった。約15ドル程で映画1作品が座席指定で楽しめる。
筆者はダウンタウン内にある映画館『WARD 16 THEATRES』にて『ゴジラ -1.0』を観賞。半券によると本作はPG-13のレイティングだった。約15ドル程で映画1作品が座席指定で楽しめる。

また映画の余韻に浸りながら、「ウォルマート(Walmart)」や「ターゲット(Target)」等、映画館周辺のスーパーマーケットで販売されているゴジラのグッズ捜しをするものの大苦戦。現地でのおもちゃ売り場ではディズニーキャラクターやジュラシックパークの関連玩具がたくさん販売されている傍ら、ゴジラ関連商品が綺麗さっぱり売り切れており、他のおもちゃ屋さんを捜し回ることになる等、これまでに体験したことのなかった状況でした(その約1ヶ月後、映画『ゴジラ-1.0』はアカデミー賞(視覚効果賞)を受賞)。

米国版ゴジラ映画『GODZILLA×KONG THE NEW EMPIRE(2024)』関連商品もハワイで多数発売。同年9月時点のWalmartでは、ゴジラ関連商品の在庫状況も回復。多数の商品が発売。
米国版ゴジラ映画『GODZILLA×KONG THE NEW EMPIRE(2024)』関連商品もハワイで多数発売。同年9月時点のWalmartでは、ゴジラ関連商品の在庫状況も回復。多数の商品が発売。

ここまではゴジラの話題ですが、ウルトラマンや仮面ライダーシリーズをはじめとする日本の特撮ヒーローも、コロナ前と比較して現地で少しずつ浸透してきています。米国内での作品の配信や、DVDやBlu-ray等の映像ソフトの発売に加え、日本と同様にマンガ文化も盛んであることから、現地のアメコミ(アメリカン・コミックス)展開も精力的に行なわれている印象です。アイアンマンやスーパーマン等のアメリカのスーパーヒーロー達と並び、書店のコミックコーナーで「ULTRAMAN(ウルトラマン)」や「KAMEN RIDER(仮面ライダー)」の名前も確認できるようになりました。

ハワイ州内大型商業施設「アラモアナセンター」内の大型書店「BARNES&NOBLE BOOKSELLERS」。20万冊以上の書籍の在庫があり、探している本があれば検索してくれるので、筆者もよく利用。
ハワイ州内大型商業施設「アラモアナセンター」内の大型書店「BARNES&NOBLE BOOKSELLERS」。20万冊以上の書籍の在庫があり、探している本があれば検索してくれるので、筆者もよく利用。

米国では、歴代ウルトラマンシリーズのBlu-rayの発売が着々と進行中。筆者が訪れたレコード店「BARNES&NOBLE BOOKSELLERS」によれば、一部の作品は入荷待ちになる状況だった。
米国では、歴代ウルトラマンシリーズのBlu-rayの発売が着々と進行中。筆者が訪れたレコード店「BARNES&NOBLE BOOKSELLERS」によれば、一部の作品は入荷待ちになる状況だった。

東映制作の特撮ヒーロー番組『仮面ライダーゼロワン(2019)』は、米国内でコミックスによる展開も行なわれている。コミックスはオリジナルストーリー展開のため、テレビシリーズ未見の初心者にもお勧め。
東映制作の特撮ヒーロー番組『仮面ライダーゼロワン(2019)』は、米国内でコミックスによる展開も行なわれている。コミックスはオリジナルストーリー展開のため、テレビシリーズ未見の初心者にもお勧め。

ここまで(私の現地での体験も交えながら)、日本の特撮作品がいかにハワイで浸透しているかを簡単にお話してきましたが、これはまだほんの一部。ハワイでの日本の特撮作品の進出は現在も続いており、今後現地でどんな展開が起こるのか、期待に胸が高鳴ります。

ハワイでも「英雄勇像」や「S.H.フィギュアーツ」等、株式会社バンダイスピリッツの特撮フィギュアも購入できるが、2024年には現地のドン・キ・ホーテで同社の旗艦店がオープン。今後の展開に期待がかかる。
ハワイでも「英雄勇像」や「S.H.フィギュアーツ」等、株式会社バンダイスピリッツの特撮フィギュアも購入できるが、2024年には現地のドン・キ・ホーテで同社の旗艦店がオープン。今後の展開に期待がかかる。

皆さまも、もしハワイを訪れる機会がございましたら、ガイドブックに載っている有名なビーチや商業施設、レストランだけでなく、是非おもちゃ屋さんや本屋さんにも立ち寄ってみて下さい。

もしかしたら、皆さまが子どもの頃に大好きだったスーパーヒーローや怪獣達と、意外な形で再会できるかもしれません。

最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。

(参考文献)
・アロハ検定協会、アロハ検定オフィシャルブック、株式会社ダイヤモンド・ビッグ社
・大場吾郎、「テレビ番組海外展開60年史 文化交流とコンテンツビジネスの狭間で」、人文書院
・山下大樹・嶌田美智子(ノトーリアス)、「特撮ヒーローの常識 70年代篇」、双葉社
・勝野 宏史、研究最前線 ハワイの『キカイダー』ブーム : ファンダム研究の視点から、人間科学研究
・ジェフリー, A・S・モニーツ、多様な社会における多文化教育アプローチとしての多様な視点の尊重と涵養、教育学部論集 19

(本記事でご紹介したハワイ州オアフ島内 観光地アクセス)
・Ala Moana Center
住所:1450 Ala Moana Boulevard, Honolulu, HI 96814
公式サイト:https://www.alamoanacenter.com/ja/(外部リンク)
※「BARNES&NOBLE
BOOKSELLERS」は1Eエリアにあります。

・ドン・キホーテ(DonQuijote)カヘカ店

住所:801 Kaheka St., Honolulu, HI 96814

・Hawaii State Capital
住所:415 S. Beretania St., Honolulu
Web:https://governor.hawaii.gov/(外部リンク)

・ハワイ出雲大社

住所:215 N Kukui St, Honolulu, HI 96817

Web:Izumo Taisha Hawaii(外部リンク)

・MARUKAME UDON

住所:2310 Kuhio Avenue, Suite 124 Honolulu, HI 96815
・Japanese Cultural Center of Hawaiʻi
住所:2454 South Beretania Street Honolulu, HI 96826
Web:https://www.jcch.com/(外部リンク)
・Kualoa Ranch Hawaii
・住所:49-560 Kamehameha Hwy. Kaneohe, HI 96744
・Web:https://www.kualoa.jp/(外部リンク)
Bishop Museum
住所:1525 Bernice St, Honolulu, HI 96817
Web:https://www.bishopmuseum.org/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E/(外部リンク)
WARD 16 THEATRES
住所:1044 Auahi St, Honolulu, HI 96814
TEL:+1 808-594-7044

博士(文学)/PhD(literature)

博士(文学)。日本の「特撮(特殊撮影)」作品を誘致資源とした観光「特撮ツーリズム」を提唱し、これまで包括的な研究を実施。国内の各学術学会や、海外を拠点とした国際会議へも精力的に参加。200を超える国内外の特撮・アニメ催事に参加してきた経験を生かし、国内学術会議や国際会議にて日本の特撮・アニメ作品を通じた観光研究を多数発表、数多くの賞を受賞する。国際会議の事務局メンバーのほか、講演、執筆、観光ツアーの企画等、多岐に渡り活動中。東海大学総合社会科学研究所・特任助教。

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